花の季節である。一歩外へ出ると、昨日目にしなかった花が咲いている。北海道では5月の中旬から6月かけてに咲く、リラとスズランが咲きはじめた。この花を見ると、やはり遠い故郷の記憶が甦る。リラはヨーロッパ原産の植物だが、寒さに強いことから北海道でよく鑑賞用に植えられる。フランス語でリラ、英語ではライラック、日本ではムラサキハシドイ、序に中国では紫丁花。フランス人がこの花を一番好んだらしい。ベルサイユ宮殿の生垣は有名である。
実は散歩に出かけて藤の花が咲いているのを期待したのだが、こちらはまだ咲きかけで、リラの花がきれいにとれた。山形は好天が続いて、花にはいいが、野菜の苗植えには、少し雨が欲しい。
足もとに目をやると、スズランが可憐な花をつけていた。昔、山形へきたとき、寮の庭で一番早くこの花を見つけたのだが、北海道のものとは違うように思った。友人に、北海道には梅雨がないから植物の生育も違うのではないか、と話した記憶がある。
朱鞠内といえば豪雪地として全国に名を馳せているが、昭和20年代に自生するスズランを楽しむスズラン祭りが行われていた。スズラン狩りと称して、葉ごと摘んで花瓶に挿した。人造湖もあり、キャンプ場があり、夏休みの学校行事でキャンプファイアーを楽しんだ記憶がある。優美なリラの花に対して、スズランは奥ゆかしいが、その鈴の形をした花に、郷愁を誘われる。
霧吹きて鈴蘭を摘む人が来る 水原秋桜子