めっきり日が長くなった。日が沈んでも、まだ花壇のバラが十分に見える。散歩道でこんな花に出会うと、心楽しい。堀口大学の詩が脳裏に浮かぶ。
夕暮れの時はよいとき
かぎりなくよさしいひと時。
それは季節にかかはらぬ、
冬ならば暖炉のかたはら、
夏ならば大樹の木かげ
地平線の向こうに陽が沈んでも明るいのは、頭上の空に陽があたって拡散するせいらしい。自分の子どものころは、その薄暮の時間を惜しんで遊んだ。夕飯の支度に忙しい家のなかでは、なかなか戻ってこない子どもたちを呼ぶ声が聞こえていた。庶民の生活には、この時間を夜とは言えず、薄暮、英語ではトワイライトである。ただ、現代生活では、この時間帯に交通事故が起きる、という無粋な統計もあるらしい。