お寺の庭にいくと珍しい花が咲いている。写真の花は華鬘草で、仏具の華鬘に花の形が似ているのでこう呼ばれている。中国から渡来したケシ科の花であるが、寺の庭に植えてものが広がったように思われる。華鬘とは花輪のことで、もともとは生花を編んで輪をつくり、仏像の手や首に懸けて供養するものであった。後に中国や日本で、金属や木で花を象って作ったものを、仏堂に飾るようになった。中尊寺には国宝として有名な金銅華鬘がある。写真で見ると、団扇のような形をしており、言われてみれば、華鬘草の花の形に似ているようだ。釣り竿の鯛がかかったような形でもあり、タイツリ草という別名もある。
けまん咲く道消えがちに殉教地 桂樟 蹊子
この花はお寺の近くにある妻の実家の庭に育っていたものだが、裏の空き地に移植したが、元気に育って毎年、連休のころ可憐な花をみせてくれる。何故か、現世を逃れ、飄々と乞食の旅を続けた山頭火が偲ばれる。折からの風に、華鬘草の花が吹き乱れる。「浮草のように・・・。水は流れる、雲は動いて止まない。風が吹けば木の葉が散る、魚ゆいて魚のごとく、鳥とんで鳥に似たり、それでは二本の足よ、歩けるだけ歩け、行けるところまで行け。」こんなことを胸に、山頭火は旅を続けた。足元には華鬘草の花が風に吹かれていたかも知れぬ。