常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

2018年09月29日 | 日記

憂ひあらば此酒に酔へ菊の主 漱石

漱石には菊を詠んだ句がいくつかある。この

花が好きだったというより、愛読した陶淵明

の詩に菊と酒のテーマが漱石の心を捉えたの

であろう。菊の花びらをとり、忘憂のものに

浮かべて飲む。忘憂のものとは、酒である。

そして浮世の憂さを忘れ去る、それが陶淵明

の飲酒であった。句意は、まさに菊を浮かべ

て酒を飲み、憂さなど忘れてしまえ、という

ことだ。

菊白菊酒中の天地貧ならず 漱石 

壺中天とい漢語がある。どこかの造り酒屋で

自家の酒にこの名をつけているのを見たこと

がある。中国の古人が、仙人に大きな壺の中

を案内してもらった。壺の中は天も地も無限

に広がっていて、どんどん入って行くと、仙

人たちが集まって、のんびりと酒を飲んだり、

お茶を飲んだりしてくつろいでいる。そこは

まさに別天地、ユートピアであった。

漱石はこの句で、壺中の天地を酒中の天地に

置き換えて詠んでいる。そこは黄色は白の菊

が咲いて、酒もある。貧しい世界ではない、

おおいに酒を飲みたまえと勧めている。

 


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