秋明菊が咲くと秋が来た思う。まだ万朶とは
いかないが、非対称の花がかわいいし、淡紫
色のはなが好きだ。近所で庭に植えているお
宅があるので、もう咲くころかと、気にしな
がら散歩している。台風は大きな爪痕を残し
て去っていったが、そのあとを追うように秋
の冷たい前線が張り出して来た。そして周り
には秋の花が咲き、実が稔る。秋明菊はその
名からキク科を思わせるが、キンポウゲ科の
花で中国から渡来し、京都の貴船あたりで多
く栽培されたので、別名貴船菊の名がある。
おもざしの思ひ出だせず貴船菊 飯名 陽子
秋の実は食欲を増進させる。先日梨をいただ
たばかりだが、庭先のイチジクはおいしそう
な色を見せている。
それにしても、収穫するばかりであった名産
の刈谷梨が、台風の襲来で多く落下したのは
惜しんでもあまりある。梨がなぜこうも甘い
のか。梨を作っている農家の努力があってこ
そのことだ。雪の中で行う枝の剪定に始まっ
て、おいしい梨をつくる努力は我々の想像の
及ぶところではない。実を甘くするためにど
んな肥料をどのくらい、いつ頃に施すのか、
その努力の範囲は、農作業という領域を超え
てしまっている。