福島県小野町の高柴山と言えば、山ツツジの名所だ。明日この山の山開きが予定され、町民が待っていたツツジの開花である。ところが、今年の4月~5月にかけての高温は、このツツジの開花にも大きな影響を及ぼした。この山のピークは884mで、山頂に山ツツジに大きな群落がある。そこを目指したのだが、すでに花は盛りを過ぎ、かろうじて赤い花が残っていたが、間もなく散る時期にきていて、本来の美しさの峠を過ぎていた。
明日の山開きの前日ということもあって、この山への登山者は多い。ほとんどが地元の人たちだ。我々が山形から来たということを知ると、どの人も親切に駐車場の場所や周囲の山の情報を教えてくれる。後から来た人はしきりにツツジの花の咲き具合を尋ねる。sさんが、自分の顔を指差して、こんな具合というと、「わあ、若いね」というおばさんの声があがる。小太りの青年はひとしきり周りの山やこれからいく移ヶ岳について、「いい山ですよ。美しい山でです。ぜひぜひ」と言って姿を消した。
頂上から下山して、駐車場の近づくと、あの青年が再び登ってくる。「また登るの」と聞くと、「ええ、3、4回。こんど月山に登るので」と、この山でトレーニングをしている様子であった。途中にある太鼓石、物見石など征夷大将軍、坂上田村麻呂の伝説も楽しい。
移ヶ岳は標高994m。頂上は岩峰となっていて、かっての石切場の跡もある。この間の頂上から「ヤッホー」との声が聞こえてくる。こちらからも「ヤッホー」と答える。頂上にはすでに数人の先客いるようだ。ロープを張って安全を確保した狭い道を慎重に登ると、岩の頂上に出た。「木霊をありがとうございました。」と声をかけてくれる。10坪ほどの狭い頂上で、お互いのカメラのシャッターを押し合う。福島の山にきて、この地の人たちがフレンドリーであることに気づく。それはあの大震災の衝撃が人々に絆の大切が刻み込んだ故かもしれない。
頂上からは360℃の展望が得られる。鎌倉岳や阿武隈の山々、安達太良や吾妻連峰など青空のなかに望むことができた。今回の山行では、2座の小さい山を登ってが、強い陽射しと心地よい初夏の風に恵まれた。登山口から頂上まで1時間、道もさほど荒れていなくて快適な山歩きであった。
ツツジの時期は外したが、キンポウゲの可憐な花が慰めてくれた。それと、したたるような新緑。この時期の山は、こどものころの懐かしい記憶を呼び起こしてくれる。駐車場に下ると、白ツツジの大きな木が3本、美しい花を咲かせていた。1時、東屋で昼食。