長雨がやっと先が見えてきたようだ。週末には前線がぐっと南下して雨は小休止、そのご一気に北上して、梅雨明けになる、という予報が出ている。梅雨前線というのは、大陸の冷たい高気圧と南の太平洋高気圧の間にできる。この前線に向かって湿った空気が流れ込んで、雨になる。梅雨の間は、冷たい空気と暖かい空気のせめぎ合いで、今年は両者ががっぷりと組みあって停滞した。これが、長雨や大雨になった背景である。ここへ来て、この二つの気団に、変化が現れはじめた。太平洋高気圧が次第に勢力を強めはじめて、週明けの頃には、前線がおおきく北へ持ちあがれる。
こうなると、一気に夏の盛りになる。四万六千日というものがある。寺の縁日のひとつで、この日に参詣すると、四万六千日分の功徳があるとされる。7月10日ごろにあたるが、寺ではほうづき市などが催される。そればかりではない。金魚屋、風鈴屋、灯篭屋、虫屋などの屋台がならんで、参詣帰りの客で賑わいを見せた。夏の風物詩である。コロナ禍の最中にある今年の縁日はどんな様子でったであろうか。
夏の海に行かなくなってから久しい。海パンを穿いて、裸足で熱い砂の上を歩いて、氷水を買いに行った記憶だけが残っている。
「沖には今日も夥しい夏雲がある。雲が雲の上に累積している。これほど重い光りに満ちた荘厳な質量が、空中に浮かんでいるのが異様に思われる。その上部の青い空には、箒で掃いたあとのような軽やかな雲が闊達に延び、水平線上にわだかまっているこの鬱屈した雲を瞰下ろしている」(三島由紀夫『真夏の死』
こんな、夏空が、あと少しで見られるようになる。