ご飯中にトイレに行くのはここのところ頻繁で。
精神的なものか、それとも便秘など消化器症状かよくわからないけど、食事中に2~3回席を立つのは当たり前の光景になっていた。
そうちゃんはトイレに行くと、ちゃんと拭いて流して、手も洗って帰ってくる。
目だけで追っとけば問題ない。
それにその時、
雨が降ってたし、
夜だったし、
大声出してなかったし、
落ち着いてご飯食べてたし、
薬も飲んだとこだったし。
要するに油断していた。
それに、あまりにも前兆がなさすぎた。
ヤバい!と思った時には、トイレではなく玄関の二重ロックが開けられ、そうちゃんは靴も履かずに雨の道路に飛び出していった。
必死で叫んで止めたけど彼のダッシュは止まらない。
さっきまで45分くらいかけて晩ごはんをゆるゆる食べてたのに。
その瞬発力はどこから来るのか。
とても走って追い付く速度ではない。
慌てて玄関に一歩引き返し、携帯と車のカギをつかむ。
そこで私、スッ転んで脛と膝を強打した。
こういう時って、痛くない。
見失ったそうちゃんはどこへ向かったか。
まず思い付くのはこの前ご迷惑かけた家。
シャッター直してもらったばっかりなのにまた蹴って同じことしたら大変だ。
慌ててそこの家のママさんに「そうちゃん来るかも!気を付けて!」と連絡。
自分でも向かい、そこには行ってないことを確認してから、しばらく車で周囲を捜索。
窓を開けておく。救急車やパトカーのサイレン、もしくは人のざわめきが聞こえるかもしれないから。
5分ほどですぐに諦めて、110番した。
今までみたいにどこかから警察に通報が入るかもしれないので。
相変わらず日本の警察は親切。とても優しく質問してくれる。
名前、年齢、服装、住所などいろいろ聞かれる。
「靴下の色」だけわからなかった。
それよりも、靴を履いてないんです、を強調して言った。
警察の方は、「晩ごはんの途中にいきなり玄関から走っていなくなった」という事象がいまいちイメージつきにくかったのか、
「念のためお聞きしますけど、誰かにさらわれていった、ということはないですよね?」と言われた。
これは初めての質問だ。
170センチ近い俊足の中学生で、大声で喋り続けている重度知的自閉ちゃんを家からこっそり連れて行ける悪い人がいるなら見てみたい。
なんてことが頭をスパッとよぎりながら、警察との電話が長いことに焦る。
ようやく切って携帯を見たら、あちこちからメールやら着信やらが入ってる。
「そうちゃん、スーパーにいるよ!」
ご近所Aさんが、「ママ友Bさんから聞いた」とメールをくれてた。
そのBさんも同じ町内。
スーパーでそうちゃんを見つけ、私の連絡先を知ってそうなAさんに電話してくれたらしい。
メールを確認してる間に、夫から着信。
「そうちゃん、スーパーにいるって。ヘルパーのCさんが電話くれた。」
確かにCさんからも着信ある。
いつも行動援護でお世話になってるCさん、ホントにたまたま買い物に来て、聞き覚えのあるそうちゃんの声に反応したらしい。
私がスーパーについた時は、ヘルパーCさんに手を繋がれたそうちゃんがニコニコ待っていて、警察官2名と店長さんがいた。
店長さんによると…
この子が一人で入ってきて売り物のキウイをかじったので、「お母さんは?」と聞いたけど、返事ができないのでおかしいなと思いました。
そのうち2個目のキウイを食べ始めて、お母さんはいなさそうだし、足元見ると靴を履いてなかったので、110番しました。
そこへママ友Bさんが居合わせて「この子知ってます」となり、それからヘルパーCさんがたまたま来て、私や夫に連絡取ったり店長さんに話してくれたりしたようです。
なんとありがたいことでしょうか。
私が警察官の聞き取りに応じている間、「トイレ!」と言ったそうちゃんを、ヘルパーCさんが「僕連れて行きますよ」と行ってきてくれた。
平謝りに謝る私に店長さんは、「キウイの代金だけ支払っていただければ大丈夫ですから」と親切に言ってくれた。
最初にメールをくれたご近所Aさんは、その後のやり取りで「これからも何かあったら手助けするから、電話番号教えて」と。(メアドしか知らなかったので)
スーパーで警察に話す間、みんなが親切すぎて涙が出そうになって。
ではこうならないように私はもっと何かできなかったのか、自問自答。
帰宅後、頓服飲ませてお風呂に入れてからキウイのお金を払いに行った。
店長さんに、「ごめんなさい」としんみり言えたそうちゃん。
なんだか悲しいね。しょうがないけど。いや、しょうがなくないか。
行方不明から、発見までおそらく10分以内。
警察から私が引き取るまで全部入れても、30分以内の、スピード発見でした。
これもご近所の見守りのおかげ。子供会や町内会活動もしといてよかったと思う。
しかし、早く発見されたからといって、よかったよかったとはならない。
小学部の頃なら、追い付いて路上で組伏せ、引きずって帰宅することもできたんたけど、大きくなってしまったのでそうもいかない。
ダンディ教授が言ってたように、「問題は突発的なこと」であって、普段は素直で真面目で友好的ないい子なんだけどな。
はあ。
エネルギー出しきったのか薬のせいか、ぐっすり眠ってるそうちゃん。
寝顔もかわいい分、余計にため息が出るのは母だからか。
「ダッシュしてスーパーでキウイかじった」といえば、3年前にもそんなことがあったな。
→「大脱走に涙する」
あの時走って追いかけてくれた看護師さんと警備員さん、びっくりしただろうな。
さあ明日から連休、そしてお盆休みだ。
生きる、生かしとく、それだけ頑張ろ。
そのために今日は早く寝る。
まだ私は大丈夫。