ジューンベリーに忘れ物

シンボルツリーはジューンベリー
どこかに沢山の忘れ物をしてきた気がして

「よかった。」を共感できる気が・・

2019-05-04 18:18:43 | 思い
 またまた、体調を崩した。

 2週間も前になる。
春の清々しい朝だった。

 久しぶりに10キロのジョギングに汗を流していた。
途中で、喉に異物が刺さったような痛みを感じた。
 「こんなこと、よくあること。」
強気で走り続けた。

 ところが、翌朝から喉の痛みが増した。
『のどぬーる』で様子をみた。
 しかし、日に日に痛みが強くなる。
咳も続いた。鼻水も出る。

 仕方なく、よくお世話になる内科医院へ行く。
1時間半待たされ、3分の診断。
 以前と同じ薬を6日分処方してくれた。

 まじめにそれを飲みきった。
症状はすっかり緩和した。

 喜び勇んで、
春の爽やかな風を感じながら、再び10キロを走る。
 10日ぶりの伊達は、
草花が芽吹き、緑が増しつつあった。
 新芽に、つい笑顔になった。

 ところが、翌朝、ベットからおきることができなかった。
再び喉が痛い。時折咳が続く。熱もやや高い。
 症状は、薬の力で和らいでいただけと気づいた。
コンコンと眠り続けた。

 すでに連休が始まっていた。
かかりつけの医院も長期の休みに入っている。
 
 ただただ丸々4日間も横になり、眠り続けた。
まだ回復の入り口付近だ。
 それでも、ベットからは何とか抜け出せた。

 毎日、眠りながら沢山の夢を見た。
懐かしい人も登場してきた。
 目ざめて、思い出と現実が交差した。

 その夢で、多くの時間を費やしていたのは、
洞爺湖のマラソンコースからの景色だった。
 再現を試みる。

 湖畔に並ぶ満開の八重桜を横目に走り始める。
昭和新山と湖岸の間、
そこのりんご園に白い花たちが咲いていた。
 7キロを過ぎた辺り、湖畔の道がやや狭くなる。
時々、その道と湖岸が接近する。
 ガラス細工のような湖面がキラキラと波打つ。
「綺麗」と呟きながらマイペースで進む。
 
 やがて右手の傾斜面の新緑から、
小鳥の鳴き声が届く。
 緩い上りと下り道がくり返す。
5キロ毎にある給水所。
 そこで、高校生などから「がんばってください」
と、明るい励ましを受ける。
 素直にそれが嬉しい。

 ハーフを過ぎてまもなく、最大難所が待っている。
湖畔の道から山へと向かう。
 両側の田んぼが終わると、上り坂が2キロも続く。
反対車線を降りてくるランナーとすれ違う。
 みんな、真っ直ぐ前を向いて走る。
「ようし、俺も難所を越えるぞー。」

 遠くで咲き誇る木蓮を、
折り返し後に再び見る。

 また湖に沿った道に出る。
30キロのエイドまで、平らなコースを行く。
 時々、ひばりのさえずりが大空から降ってくる。
 
 エイドのテーブルにあるしそジュースと、
ゆで卵に手が伸びる。
 温泉街の真向かいに位置する景勝地だ。
湖に浮かぶ『中島』の緑に向かい、
2度3度と深呼吸する。

 再び走り出す。
疲れのピークが、軟弱な心を責める。
 左脇の道まで迫る湖岸に、
打ち寄せるガラス細工の小波を見る。
 その波音が、「頑張れ、頑張れ」と聞こえる。
勝手に励みにする。 

 見上げた向こう岸に、ゴールの温泉街がある。
その遠さに、急に足が重くなる。
 また、道路脇の小波が目に入る。
「頑張れ、ワタル!」。
 
 「そうか。こうして1歩1歩進んでいれば、
必ずゴールは来る。」 
 信じて視線を上げる。
すると、新緑が木陰を作ってくれていた。
 「なんて優しい緑色なの・・。」

 ゴール間近の湖畔に、
まだ雪におおわれている羊蹄山の勇姿があった。
 そこから湖面を流れて春風がくる。
心まですっぽりと癒やしてくれた。
 
 昨日まで、4日間も寝込み、
その間、断続的に見た夢がこれだ。

 だから、分かった。
『71才になっても、そして、こうして体調を崩しておきられなくても、
もう1度、洞爺湖を走りたい』のだ。

 今年の洞爺湖マラソンは19日だ。
この体調では、当然無理に決まっている。
 でも、諦めるのは当日の朝でいい。

 さて、そんなことを思いながら、
昨夜、途中からだったが9時のニュースを見た。

 山田洋次監督がインタビューに応じていた。
令和の時代になったからか、
幸せの意味について語っていた。

 そして、第39作『寅次郎物語』で、
寅さんが甥・満男の問いに応じるシーンが流れた。
 強く心に残っている場面で、このブロクでも取り上げた。
その1文を添付する。
 

『 満男 「伯父さん、人間てさ、人間は何のために生きてんのかな?」
寅 「難しいこと聞くな・・・何というかな、
   あぁ、生まれてきてよかったなって、
   思うことが何べんかあるんじゃない、
   そのために、生きてんじゃねぇか。」

 寅さんが、「生まれてきてよかったな」と思えるのは、
恋の成就だろうか。
 それよりもずっとずっと、背中を見せて去ることが多かったはず。
それでも何べんかある「よかったな。」のために、生きていく。

 くり返すせつなさをやり過ごし、
わずかな安らぎに、生きることの真理があると、私も思う。 』

 
 大上段に構えることを私も好まない。
でも、周りの自然にふれ合いながら、洞爺湖マラソンをゴールできたら、
また1つ、寅さんの「生まれてきてよかった」に、
共感できる気がするのだが・・。





    青 空 と 木 蓮 と 

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