またまた、体調を崩した。
2週間も前になる。
春の清々しい朝だった。
久しぶりに10キロのジョギングに汗を流していた。
途中で、喉に異物が刺さったような痛みを感じた。
「こんなこと、よくあること。」
強気で走り続けた。
ところが、翌朝から喉の痛みが増した。
『のどぬーる』で様子をみた。
しかし、日に日に痛みが強くなる。
咳も続いた。鼻水も出る。
仕方なく、よくお世話になる内科医院へ行く。
1時間半待たされ、3分の診断。
以前と同じ薬を6日分処方してくれた。
まじめにそれを飲みきった。
症状はすっかり緩和した。
喜び勇んで、
春の爽やかな風を感じながら、再び10キロを走る。
10日ぶりの伊達は、
草花が芽吹き、緑が増しつつあった。
新芽に、つい笑顔になった。
ところが、翌朝、ベットからおきることができなかった。
再び喉が痛い。時折咳が続く。熱もやや高い。
症状は、薬の力で和らいでいただけと気づいた。
コンコンと眠り続けた。
すでに連休が始まっていた。
かかりつけの医院も長期の休みに入っている。
ただただ丸々4日間も横になり、眠り続けた。
まだ回復の入り口付近だ。
それでも、ベットからは何とか抜け出せた。
毎日、眠りながら沢山の夢を見た。
懐かしい人も登場してきた。
目ざめて、思い出と現実が交差した。
その夢で、多くの時間を費やしていたのは、
洞爺湖のマラソンコースからの景色だった。
再現を試みる。
湖畔に並ぶ満開の八重桜を横目に走り始める。
昭和新山と湖岸の間、
そこのりんご園に白い花たちが咲いていた。
7キロを過ぎた辺り、湖畔の道がやや狭くなる。
時々、その道と湖岸が接近する。
ガラス細工のような湖面がキラキラと波打つ。
「綺麗」と呟きながらマイペースで進む。
やがて右手の傾斜面の新緑から、
小鳥の鳴き声が届く。
緩い上りと下り道がくり返す。
5キロ毎にある給水所。
そこで、高校生などから「がんばってください」
と、明るい励ましを受ける。
素直にそれが嬉しい。
ハーフを過ぎてまもなく、最大難所が待っている。
湖畔の道から山へと向かう。
両側の田んぼが終わると、上り坂が2キロも続く。
反対車線を降りてくるランナーとすれ違う。
みんな、真っ直ぐ前を向いて走る。
「ようし、俺も難所を越えるぞー。」
遠くで咲き誇る木蓮を、
折り返し後に再び見る。
また湖に沿った道に出る。
30キロのエイドまで、平らなコースを行く。
時々、ひばりのさえずりが大空から降ってくる。
エイドのテーブルにあるしそジュースと、
ゆで卵に手が伸びる。
温泉街の真向かいに位置する景勝地だ。
湖に浮かぶ『中島』の緑に向かい、
2度3度と深呼吸する。
再び走り出す。
疲れのピークが、軟弱な心を責める。
左脇の道まで迫る湖岸に、
打ち寄せるガラス細工の小波を見る。
その波音が、「頑張れ、頑張れ」と聞こえる。
勝手に励みにする。
見上げた向こう岸に、ゴールの温泉街がある。
その遠さに、急に足が重くなる。
また、道路脇の小波が目に入る。
「頑張れ、ワタル!」。
「そうか。こうして1歩1歩進んでいれば、
必ずゴールは来る。」
信じて視線を上げる。
すると、新緑が木陰を作ってくれていた。
「なんて優しい緑色なの・・。」
ゴール間近の湖畔に、
まだ雪におおわれている羊蹄山の勇姿があった。
そこから湖面を流れて春風がくる。
心まですっぽりと癒やしてくれた。
昨日まで、4日間も寝込み、
その間、断続的に見た夢がこれだ。
だから、分かった。
『71才になっても、そして、こうして体調を崩しておきられなくても、
もう1度、洞爺湖を走りたい』のだ。
今年の洞爺湖マラソンは19日だ。
この体調では、当然無理に決まっている。
でも、諦めるのは当日の朝でいい。
さて、そんなことを思いながら、
昨夜、途中からだったが9時のニュースを見た。
山田洋次監督がインタビューに応じていた。
令和の時代になったからか、
幸せの意味について語っていた。
そして、第39作『寅次郎物語』で、
寅さんが甥・満男の問いに応じるシーンが流れた。
強く心に残っている場面で、このブロクでも取り上げた。
その1文を添付する。
『 満男 「伯父さん、人間てさ、人間は何のために生きてんのかな?」
寅 「難しいこと聞くな・・・何というかな、
あぁ、生まれてきてよかったなって、
思うことが何べんかあるんじゃない、
そのために、生きてんじゃねぇか。」
寅さんが、「生まれてきてよかったな」と思えるのは、
恋の成就だろうか。
それよりもずっとずっと、背中を見せて去ることが多かったはず。
それでも何べんかある「よかったな。」のために、生きていく。
くり返すせつなさをやり過ごし、
わずかな安らぎに、生きることの真理があると、私も思う。 』
大上段に構えることを私も好まない。
でも、周りの自然にふれ合いながら、洞爺湖マラソンをゴールできたら、
また1つ、寅さんの「生まれてきてよかった」に、
共感できる気がするのだが・・。

青 空 と 木 蓮 と
2週間も前になる。
春の清々しい朝だった。
久しぶりに10キロのジョギングに汗を流していた。
途中で、喉に異物が刺さったような痛みを感じた。
「こんなこと、よくあること。」
強気で走り続けた。
ところが、翌朝から喉の痛みが増した。
『のどぬーる』で様子をみた。
しかし、日に日に痛みが強くなる。
咳も続いた。鼻水も出る。
仕方なく、よくお世話になる内科医院へ行く。
1時間半待たされ、3分の診断。
以前と同じ薬を6日分処方してくれた。
まじめにそれを飲みきった。
症状はすっかり緩和した。
喜び勇んで、
春の爽やかな風を感じながら、再び10キロを走る。
10日ぶりの伊達は、
草花が芽吹き、緑が増しつつあった。
新芽に、つい笑顔になった。
ところが、翌朝、ベットからおきることができなかった。
再び喉が痛い。時折咳が続く。熱もやや高い。
症状は、薬の力で和らいでいただけと気づいた。
コンコンと眠り続けた。
すでに連休が始まっていた。
かかりつけの医院も長期の休みに入っている。
ただただ丸々4日間も横になり、眠り続けた。
まだ回復の入り口付近だ。
それでも、ベットからは何とか抜け出せた。
毎日、眠りながら沢山の夢を見た。
懐かしい人も登場してきた。
目ざめて、思い出と現実が交差した。
その夢で、多くの時間を費やしていたのは、
洞爺湖のマラソンコースからの景色だった。
再現を試みる。
湖畔に並ぶ満開の八重桜を横目に走り始める。
昭和新山と湖岸の間、
そこのりんご園に白い花たちが咲いていた。
7キロを過ぎた辺り、湖畔の道がやや狭くなる。
時々、その道と湖岸が接近する。
ガラス細工のような湖面がキラキラと波打つ。
「綺麗」と呟きながらマイペースで進む。
やがて右手の傾斜面の新緑から、
小鳥の鳴き声が届く。
緩い上りと下り道がくり返す。
5キロ毎にある給水所。
そこで、高校生などから「がんばってください」
と、明るい励ましを受ける。
素直にそれが嬉しい。
ハーフを過ぎてまもなく、最大難所が待っている。
湖畔の道から山へと向かう。
両側の田んぼが終わると、上り坂が2キロも続く。
反対車線を降りてくるランナーとすれ違う。
みんな、真っ直ぐ前を向いて走る。
「ようし、俺も難所を越えるぞー。」
遠くで咲き誇る木蓮を、
折り返し後に再び見る。
また湖に沿った道に出る。
30キロのエイドまで、平らなコースを行く。
時々、ひばりのさえずりが大空から降ってくる。
エイドのテーブルにあるしそジュースと、
ゆで卵に手が伸びる。
温泉街の真向かいに位置する景勝地だ。
湖に浮かぶ『中島』の緑に向かい、
2度3度と深呼吸する。
再び走り出す。
疲れのピークが、軟弱な心を責める。
左脇の道まで迫る湖岸に、
打ち寄せるガラス細工の小波を見る。
その波音が、「頑張れ、頑張れ」と聞こえる。
勝手に励みにする。
見上げた向こう岸に、ゴールの温泉街がある。
その遠さに、急に足が重くなる。
また、道路脇の小波が目に入る。
「頑張れ、ワタル!」。
「そうか。こうして1歩1歩進んでいれば、
必ずゴールは来る。」
信じて視線を上げる。
すると、新緑が木陰を作ってくれていた。
「なんて優しい緑色なの・・。」
ゴール間近の湖畔に、
まだ雪におおわれている羊蹄山の勇姿があった。
そこから湖面を流れて春風がくる。
心まですっぽりと癒やしてくれた。
昨日まで、4日間も寝込み、
その間、断続的に見た夢がこれだ。
だから、分かった。
『71才になっても、そして、こうして体調を崩しておきられなくても、
もう1度、洞爺湖を走りたい』のだ。
今年の洞爺湖マラソンは19日だ。
この体調では、当然無理に決まっている。
でも、諦めるのは当日の朝でいい。
さて、そんなことを思いながら、
昨夜、途中からだったが9時のニュースを見た。
山田洋次監督がインタビューに応じていた。
令和の時代になったからか、
幸せの意味について語っていた。
そして、第39作『寅次郎物語』で、
寅さんが甥・満男の問いに応じるシーンが流れた。
強く心に残っている場面で、このブロクでも取り上げた。
その1文を添付する。
『 満男 「伯父さん、人間てさ、人間は何のために生きてんのかな?」
寅 「難しいこと聞くな・・・何というかな、
あぁ、生まれてきてよかったなって、
思うことが何べんかあるんじゃない、
そのために、生きてんじゃねぇか。」
寅さんが、「生まれてきてよかったな」と思えるのは、
恋の成就だろうか。
それよりもずっとずっと、背中を見せて去ることが多かったはず。
それでも何べんかある「よかったな。」のために、生きていく。
くり返すせつなさをやり過ごし、
わずかな安らぎに、生きることの真理があると、私も思う。 』
大上段に構えることを私も好まない。
でも、周りの自然にふれ合いながら、洞爺湖マラソンをゴールできたら、
また1つ、寅さんの「生まれてきてよかった」に、
共感できる気がするのだが・・。

青 空 と 木 蓮 と
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