ワンダースター★航星記

写真を撮るとは、決して止まらない時間を止めること。旅や日常生活のインプレッシブな出来事を綴ったフォトエッセイ集です。

紫陽花とカタツムリ

2019-06-17 | 花めぐり~6月

 紫陽花とカタツムリ
              
               


  雨上がりの午後、咲き誇る紫陽花の狭間にカタツムリを見つけた。

 子どもに戻って、ちょっと、イタズラしたくなって、角をツンツンとつついてみた。

 カタツムリは角に見える目をいったん、引っ込んでみせたが、また、ニョロと出して、迷惑そうにこちらを覗った。

 「もう!何するの!」

 「いやいや、これは失敬。久し振りに君たちを見かけたんで挨拶したかったんだよ。」  

 「全く、いらぬお節介ね。天敵がいないようだから、のんびり、散歩に出かけたのに。」

 「天敵?」  

 「鳥とマイマイカブリとフランス人よ。最近は韓国人。」

 「鳥とマイマイカブリとフランス人は何となくわかるけど、何で韓国人?」

 「私たちを絞って、化粧品を作る輩が出始めたのよ。エスカルゴだって、身の毛がよだつのに。(毛はないけど。)人間は油断も隙もない。」

 「それはお気の毒。でも、僕はちょっと、話したかっただけだから。」

 「ふん!私たちは寄生虫がいて、恐いんだぞう!」

                          
              
              

 「わ、わかったよ。ところで、君たちはナメクジと似ているけど、殻取ったら、ナメクジになるの?」

 「やっぱり、失礼な奴だな。あんな連中と一緒にしないでくれるかな。」

 「あんな連中!?どちらも陸生の巻貝だって、習ったけど。」  

 「そうだよ。でも、進化の過程が全然、違うんだよ。連中はカタツムリから進化したなんて、昔は言われたものだったけど、本当は違うんだよ。」  

 「へぇ!そうなんだ。聞いてみるもんだな。もうひとつ、さっきから、気になってたんだけど、君は男?女?」

 「あるときは男。あるときは女。」

 「意味わかんねえな。」  

 「要はね。私たちはあまり、移動しないんだよ。だから、千載一遇の出逢いを大切にして、男になったり、女になったりして、子孫を残すんだよ。」  

 「ふ~ん。恋のチャンスは一度きりってことか。便利なような。切り替えが難しいような。」  

 「それにしても、何だか、君たちと久し振りにしゃべったような気がするんだけど。」  

 「それはね、あんたが一瞬だけでも、子どもの頃の心を取り戻したからだよ。」

 「子どもの頃の心?」

 カタツムリは、それっきり、自分の殻の中に閉じこもって、もう、出てこようとはしなかった。


               
               
               
               
               
               
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