先日、テレビのニュースで岡山県美作市上山の棚田において大勢の若者によるタップダンスが行なわれたと報じていた。その映像を見ながら、最初はとても場違いな印象を持った。

しかし、映像を眺めているうちに、ふと「待てよ!これはひょっとして三番叟の反閇と同じことじゃないの?」と思い始めた。
能や日本舞踊の演目である三番叟は五穀豊穣を寿ぐ踊り。三番叟の中で反閇と呼ばれる足を持ち上げ踏み下ろす所作は、「おおさえ おおさえ よろこびありや よろこびありや」という台詞とともに土を踏みしめ、悪霊を封じ込める動作だといわれる。
一方のタップダンス。アフリカ系ともヨーロッパ系とも言われるが、大昔からあった足を踏み鳴らすことによってリズムをとる動作が、20世紀のアメリカでジャズ音楽などと融合し、ダンスパフォーマンスとして完成したものだという。今日の洗練された動きからは想像できないが、太古の時代の足の踏み鳴らしには、日本の反閇と同じような精神性は無かったのだろうか。僕は研究したこともないのでわからないが、とても興味深いものがある。
大正・昭和時代の代表的な民俗学者・折口信夫の「日本芸能史六講」の中に、「踊り」や「舞い」の起源について、次のような一節がある。
それで天宇受賣命(アメノウズメノミコト)が木槽(ウケ)を突き踏みとゞろかして踊つたりしたといふことは、大地に籠つてゐる魂を呼び醒したといふことになりますが―――そしてそれが當然に第一の段階を作つたといふことになるが―――これはまた惡い魂を抑へつけたことにもなるのです。
つまり踏みとゞろかすといふことは、惡い魂を踏み抑へつけて再び出て來られないやうにする、といふことにもなります。それでその抑へつける方は何か、といふと、これは反閇であります。これは力足を以て惡いものをば踏み抑へつけるといふ形をする、同時に、惡い霊魂が頭をあげることが出来ないやうに、地下に踏みつけておく形です。このことは日本人のもつてゐる踊といふ藝の中に傳承されてゐますが、このをどりといふ吾々の語は、語自身をみると何の意味もなかつたといふことが訣ります。
つまり下から上にぴん/\と跳び上ることをば繰り返すやうな動作のことを言うた語です。
▼反閇の所作が含まれる「羽衣三番叟」

しかし、映像を眺めているうちに、ふと「待てよ!これはひょっとして三番叟の反閇と同じことじゃないの?」と思い始めた。
能や日本舞踊の演目である三番叟は五穀豊穣を寿ぐ踊り。三番叟の中で反閇と呼ばれる足を持ち上げ踏み下ろす所作は、「おおさえ おおさえ よろこびありや よろこびありや」という台詞とともに土を踏みしめ、悪霊を封じ込める動作だといわれる。
一方のタップダンス。アフリカ系ともヨーロッパ系とも言われるが、大昔からあった足を踏み鳴らすことによってリズムをとる動作が、20世紀のアメリカでジャズ音楽などと融合し、ダンスパフォーマンスとして完成したものだという。今日の洗練された動きからは想像できないが、太古の時代の足の踏み鳴らしには、日本の反閇と同じような精神性は無かったのだろうか。僕は研究したこともないのでわからないが、とても興味深いものがある。
大正・昭和時代の代表的な民俗学者・折口信夫の「日本芸能史六講」の中に、「踊り」や「舞い」の起源について、次のような一節がある。

つまり踏みとゞろかすといふことは、惡い魂を踏み抑へつけて再び出て來られないやうにする、といふことにもなります。それでその抑へつける方は何か、といふと、これは反閇であります。これは力足を以て惡いものをば踏み抑へつけるといふ形をする、同時に、惡い霊魂が頭をあげることが出来ないやうに、地下に踏みつけておく形です。このことは日本人のもつてゐる踊といふ藝の中に傳承されてゐますが、このをどりといふ吾々の語は、語自身をみると何の意味もなかつたといふことが訣ります。
つまり下から上にぴん/\と跳び上ることをば繰り返すやうな動作のことを言うた語です。
▼反閇の所作が含まれる「羽衣三番叟」