徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

蝙蝠と小鍛冶

2024-07-29 21:18:17 | 古典芸能
 連日の猛暑でしばらく散歩もしていなかったので今日は日が暮れてからわが家の近くを歩いてみた。新坂を下り、中坂を上っていると薄闇の中に鳥のような物体が音も立てずに飛んできた。頭上2㍍くらいを通過する瞬間に「蝙蝠(こうもり)」だとわかった。飛び去る姿を目で追いながら、ふと漱石の句を思い出した。



 「蝙蝠(かわほり)に近し小鍛冶が槌の音」

 これは謡曲をお題とした漱石の句の一つで、謡曲「小鍛冶」も習っていたのだろう。「蝙蝠」は「かわほり」とも読み、夏の季語で、こうもりが飛んでくるような夏の夕暮れに、鍛冶屋の槌音が響き渡っているという夏の風情を詠んだものだろう。
 昨年の正月、Eテレで喜多流の「能 小鍛冶」が放送された。録画して2回見たのでまだ印象深い。

 今日は謡曲「小鍛冶」をもとに作られた長唄「小鍛冶」を聴いてみた。曲中何度か大鼓と小鼓が息を合わせながら打つところがまさに「能 小鍛冶」の小鍛冶と稲荷明神が互いに槌を打つ場面を思い出させて面白かった。今日、一般的な用語となっている「相槌(あいづち)」と言う言葉の始まりらしい。ちなみに相槌の音がそろわない様子から「とんちんかん」という言葉が生まれたらしい。



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3 コメント

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Unknown (小父さん)
2024-07-30 07:10:35
ありゃ~っ、つらつらと書き連ねていたのに一瞬にして消え去ってしまいました(泣)。
また、訪問させてもらいます。
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リベンジです (小父さん)
2024-07-30 13:38:02
>新坂を下り、中坂を上っていると薄闇の中に鳥のような物体が音も立てずに飛んできた。

FUSAさんの記事を読ませていただいているとまるで小説を読んでいるみたいな気になります。

こうもりって、長いこと出くわさないです。
確か福岡に住んでいるときは何度も見た気がしますが・・・。

>・・・ふと漱石の句を思い出した。
「蝙蝠(かわほり)に近し小鍛冶が槌の音」

いつもながら、格調が高いことです。

「相槌(あいづち)」に「とんちんかん」ですか。
何気なく使っている日本語のルーツがこんなところにあろうとは、面白いですね。

長唄 小鍛冶の解説を知りたくてググったところ下が出てきました。
      ↓
https://www.katsuju.biz/post/kokaji

FUSAさんの邦楽への造詣への深さをまた感心しております。

動画と音も抜群ですね。
なんと3.8万 回視聴とは、こんなことがもし私の動画に起こったら自分がプロになった気分になると思いますね。

三味線に 鼓、太鼓、笛そして長唄、いやはや堪能させていただきました。

たくさんのご趣味で私の手の届きそうなことなんて今後も出てこないと思います。

(10:35には失礼なことを投稿させていただき謝ります。)

どうも有難うございました。
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Re:小父さん様 (FUSA)
2024-07-30 15:33:04
> つらつらと書き連ねていたのに一瞬にして消え去って・・・

!(^^)! そうでしたか!
私もたまにありますよ。それもブログ記事の本文を書いていて、どこをどう操作したものか、一瞬にして… 特に長文の場合は悲劇ですね(;_;)

子供の頃、こうもりが夜に家の中に飛び込んで来ていたことを思い出します。今はそんなこともありませんが、やつらも住みにくくなったんでしょうね(笑)

謡曲「小鍛冶」は能の台詞でありバックミュージックで、もっぱら神のご加護のありがたさを讃えるのに対し、長唄「小鍛冶」は歌舞伎の音楽である浄瑠璃で、神力を得て鍛冶という仕事の尊さを高らかに歌い上げている感じですかね。

いつもお読みいただき感謝しております。
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