大雨が来た。橋の下で、彼はいよいよ空腹に苦しんだ。
彼は一冊の小さな単行本を手にしていた。風前の灯火である命を暖めるものはもはやそれしかないかのように、両手でその本を胸に押し当てた。彼はもう三日間もろくなものを食べていない。屋根の下で寝なくなって三日目。雨の飛沫は容赦なく、体臭のきつい彼の服にも、度の強い眼鏡にも、やせこけた頬にも、胸元に抱きしめられた薄汚れた単行本にも飛び散った。彼は水洟を垂らした。それを震える手の甲で拭った。
彼は死にたがっていた。どうせ死ぬのだから。生きていく希望はこの雨のように叩き落された! しかし彼が手っ取り早く寿命を縮める手段は、雨宿りしているこの橋の下にはなかった。目の前の河川は嘔吐物のように灰色に濁って増水していたが、そこに飛び込み泥水を飲み込んで死ぬことは、元来繊細な彼にはとても耐えられなかった。
きれいな生き方というのはそうざらにないが、きれいな死に方はそれを選ぶことができる。
何かの動く気配を感じ、彼は頭を巡らせた。セメントの柱を這っている虫。艶やかな背中。雨に濡れたゴキブリである。彼はひどく身震いした。
どうせ自殺なんてできない。結局何とか生きようとするに決まっている。死にっこないのだ。そんなきれいな勇気は自分にはない───自分は、醜いほどに弱い。
どこで落ちたものか、黄ばんだ発泡スチロールが濁流に翻弄され押し流されてきた。彼は度の強い眼鏡越しに、それを自分であるかのように凝視した。
彼は一冊の小さな単行本を手にしていた。風前の灯火である命を暖めるものはもはやそれしかないかのように、両手でその本を胸に押し当てた。彼はもう三日間もろくなものを食べていない。屋根の下で寝なくなって三日目。雨の飛沫は容赦なく、体臭のきつい彼の服にも、度の強い眼鏡にも、やせこけた頬にも、胸元に抱きしめられた薄汚れた単行本にも飛び散った。彼は水洟を垂らした。それを震える手の甲で拭った。
彼は死にたがっていた。どうせ死ぬのだから。生きていく希望はこの雨のように叩き落された! しかし彼が手っ取り早く寿命を縮める手段は、雨宿りしているこの橋の下にはなかった。目の前の河川は嘔吐物のように灰色に濁って増水していたが、そこに飛び込み泥水を飲み込んで死ぬことは、元来繊細な彼にはとても耐えられなかった。
きれいな生き方というのはそうざらにないが、きれいな死に方はそれを選ぶことができる。
何かの動く気配を感じ、彼は頭を巡らせた。セメントの柱を這っている虫。艶やかな背中。雨に濡れたゴキブリである。彼はひどく身震いした。
どうせ自殺なんてできない。結局何とか生きようとするに決まっている。死にっこないのだ。そんなきれいな勇気は自分にはない───自分は、醜いほどに弱い。
どこで落ちたものか、黄ばんだ発泡スチロールが濁流に翻弄され押し流されてきた。彼は度の強い眼鏡越しに、それを自分であるかのように凝視した。