た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

新装開店

2016年04月09日 | essay

 新しい仕事場での活動が始動した。やることはこれまでと大して違いがないのだが、場所も内装も空気も変わると、気分も一新する。いい気になって、薬缶にコーヒーカップ、ソファーに雑誌など細部をやたら揃え、自分にとっての居心地を追及している。いかんいかん、仕事もきちんとしなければ。

 街の中心部に近くなったので、自転車で買い物ついでに、あるいは買い物がなくても時間つぶしに、ふらふらと街を巡回する。今まで十何年この地に暮らしてきても気づかなかった店がある。改めて風情に気付く小路がある。車で行き来している分には見えなかった風景が、ふらふら自転車だとよく見える。桜が近い。人が近い。

 十年以上前に立ち寄った小さな揚げ物屋を再び見つけ、空腹でもないのに思わず一串買い求める。新聞紙に包まれた串を手にサドルにまたがり、次はどの小路に曲がってみようかと思案する。通りの影が長い。いかん、いかん、仕事もきちんとしなければ。

コメント
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