暑い。孤独だ。
五十になって、自分で選んだ自営業の道に孤独を感じるとは、今日が暑過ぎるせいだろう。
もっと同僚とふざけ合いたかった。
上司に叱られたり褒められたかった。
部下に恰好つけたかった。
いろいろな煩わしさを振り払ったがため、
発泡スチロールのようにすかすかな日々になってしまった。
やむを得ない。これも自分で選んだ道だ。
孤独と暑さのあまり事務所を飛び出し、近くの商店に飛び込む。
店という店が軒並みコンビニとモールに食いつぶされた中で、
辛うじて昔ながらの個人商店として続けている稀有な店だ。
百円のトマトをひっつかみ、金を払い、
事務所に帰ってかぶりつく。
ジュースのように分かり易い甘味はないが、旨い。かすかに大地の香りがする。
百円のトマトが、自分にはお似合いだ。
窓から七月の青い空を睨み、
少しだけ闘争心を取り戻す。