大仁田は要領の悪い家政婦である。首にしてやろうと思ったことが三度あった。最初そう思ったのは五、六分でやるように言いつけた本棚の整理に三十分かかったときであり、二度目はそれから一週間後に十二分で終わるはずだと前置きして命じた書斎の掃除機かけに一時間かかり、しかもノズルの部品を置き忘れて出て行ったときであり、三度目は私の大事にしていた舶来物のガラスの置物を落として割って、あまつさえその破片を自分で踏んで足の裏からの血で廊下を汚したときである。三度目のときに、お前はこの家を掃除しに来ているのか汚しに来ているのかこのヌケブスが、と怒鳴ってやったら、出目金のように目を泣き腫らしながら「ヌケブスってどういうことですか」と言い返してきた。間抜けているブスだからヌケブスなんだと丁寧に説明してやったら、部屋を出て行って美咲のところに訴えに行きやがった。
(ほんと小出しに続く)
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