ずっと前から借りているゲロゲロ少年YのDVD、「ヤコブへの手紙」という相当マイナーなフィンランド映画を、やっと見た。北欧の風土特有と言おうか、この映画の風景もどこか重苦しい。カウリスマキしかり、ラース.フォン.トリアー(最近ナチス発言で物議をかもす)しかり、何と言っても極めつけはベルイマン、これはもう北欧共通のことと言っていいいだろう。
そんなフィンランドの片田舎のおんぼろ一軒家に一人で住む盲目の牧師ヤコブに、恩赦で終身刑を免れた中年の女が手伝いとしてやって来る。長年の暮らしで心を閉ざした他人を寄せ付けないその女に牧師が求めたのは、牧師宛に来る手紙(祈りを求めて)を読むことであった。気が進まないままやってきた孤独な女は、無償の愛に生きるしかし絶望的な孤独を抱えている牧師と暮らしていくうちに徐々に硬く閉ざした心を開いていくが、ある日、ぷっつりと手紙が来なくなる。女は牧師のことを考え、ある方法をとる。そんな中、余命長くないと悟った牧師は、恩赦となったいきさつを女に告げる。そこには女の唯一の肉親である姉の働きがあったのだ。そして呆気なく牧師は逝く。葬儀を済ませ女はその家を発つ。手には牧師宛の姉から来た手紙が。ここで映画は終了。
心がすさんだ人間が、ある人間によって再生するハートウォーミングな物語というのは、昔からある定型とも言える。ともすればお涙頂戴映画のあざといものになるのだが、この映画はそんな部分は抑制し、重苦しい風景に全てを語らしている。確かに泣ける映画ではあるが、不機嫌そうな中年女の表情を見てると、まあいいかと思わせる。佳作という表現がぴったりくるような映画であった。少なくとも「バベットの晩餐会」よりは良い映画だ。登場人物は殆どこの二人(もう一人郵便配達夫も重要な役どころ)、舞台となる場所も殆どおんぼろ小屋、そして知らない俳優と日本でヒットする要素はどこにもないが、フィンランド国内ではかなり話題になった映画という。監督の名前くらいは記憶しておかないと。クラウス.ハロという。