イワン・デニーソヴィチの一日, ソルジェニーツィン (訳)木村浩, 新潮文庫 ソ-2-1(1590), 1963年
(Один день Ивана Денисовича, Александр Исаевич Солженицын, 1962)
・ソ連時代の強制収容所(ラーゲル)での、シューホフ(イワン・デニーソヴィチ)の朝起きてから夜眠りにつくまでの、ある一日の克明な記録。零下30℃近い酷寒(マローズ)の下、ろくな食事も与えられず、ほとんど休みなく働かされるという悲惨な状況にもかかわらず、なぜか明るさを感じる。人の幸せとは何なのか、わからなくなる。
・「仕事というものは、一本の棒ぎれのようなもので、いつも両端がある。人さまのためにするときにゃ――その内容が大切だが、馬鹿どものためにするときにゃ――見てくれで十分だ。」p.17
・「ラーゲルの囚人たちが自分のために生きているのは、ただ朝飯の十分、昼飯の五分、晩飯の五分だけなのだから。」p.20
・「シューホフは、明るい電灯の光を浴びながら、こんなきれいな部屋のなかに、こんなしずかなところに、なんにもしないで、まるまる五分間も座っていられるなんて、まるで夢でも見ている心地だった。」p.26
・「いや、シューホフももういく度か気づいたことだが、ラーゲル暮らしでは全く日数のたつのが早い。ところが、刑期そのものはいっこうに減らないときている。」p.75
・「「ペスト菌! 悪党! ごろつき! さかり犬! 破廉恥漢! 土左衛門!」 シューホフもやっぱり怒鳴った。」p.140
・「ラーゲルの門をくぐるとき、囚人たちはさながら凱旋兵士のように、意気軒昂として、雄々しく、大手を振っていくのだ。まさに、一騎当千の勢いだ!」p.155
・「ふつう、晩飯の野菜汁(バランダー)は朝のときよりもだいぶ薄いのが相場だ。朝は囚人たちを働かせるために食わせるわけだが、晩はそのままでも眠ってしまう。」p.172
・「ただ、きょうはすばらしい一日だったと浮きうきした気分になったシューホフは、そのまま眠ってしまうのも惜しいような気がした。」p.197
・「シューホフは黙って天井を見つめていた。もう自分でも、自由の身を望んでいるのかどうか、分からなかった。はじめのころは激しく望んでいた。毎晩のように、刑期は何日すぎて、何日残っているかと、数えたものだ、が、やがてそれも飽きてしまった。」p.201
・以下、訳者解説より「作家たる者は社会から不当な扱いを受けることを覚悟しなければなりません。これは作家という職業のもつ危険なのです。作家の運命が楽なものになる時代は永久にこないでしょう(ソルジェニーツィン)」p.218
・「すなわち、この「ラーゲルの一日」という圧縮された時間のなかに、ソビエトという国家の長い歴史が、そこに住む人びとの深刻な苦悩をなまなましく具体的に浮彫りしながら、繰りひろげられているからである。」p.223
?へいちゃら【平ちゃら】 (「平」は平気、「ちゃら」は冗談、でたらめなどの意)少しも気にかけないさま。何とも思わないさま。また、たやすいさま。へっちゃら。「これぐらいの雨はへいちゃらだ」
(Один день Ивана Денисовича, Александр Исаевич Солженицын, 1962)
・ソ連時代の強制収容所(ラーゲル)での、シューホフ(イワン・デニーソヴィチ)の朝起きてから夜眠りにつくまでの、ある一日の克明な記録。零下30℃近い酷寒(マローズ)の下、ろくな食事も与えられず、ほとんど休みなく働かされるという悲惨な状況にもかかわらず、なぜか明るさを感じる。人の幸せとは何なのか、わからなくなる。
・「仕事というものは、一本の棒ぎれのようなもので、いつも両端がある。人さまのためにするときにゃ――その内容が大切だが、馬鹿どものためにするときにゃ――見てくれで十分だ。」p.17
・「ラーゲルの囚人たちが自分のために生きているのは、ただ朝飯の十分、昼飯の五分、晩飯の五分だけなのだから。」p.20
・「シューホフは、明るい電灯の光を浴びながら、こんなきれいな部屋のなかに、こんなしずかなところに、なんにもしないで、まるまる五分間も座っていられるなんて、まるで夢でも見ている心地だった。」p.26
・「いや、シューホフももういく度か気づいたことだが、ラーゲル暮らしでは全く日数のたつのが早い。ところが、刑期そのものはいっこうに減らないときている。」p.75
・「「ペスト菌! 悪党! ごろつき! さかり犬! 破廉恥漢! 土左衛門!」 シューホフもやっぱり怒鳴った。」p.140
・「ラーゲルの門をくぐるとき、囚人たちはさながら凱旋兵士のように、意気軒昂として、雄々しく、大手を振っていくのだ。まさに、一騎当千の勢いだ!」p.155
・「ふつう、晩飯の野菜汁(バランダー)は朝のときよりもだいぶ薄いのが相場だ。朝は囚人たちを働かせるために食わせるわけだが、晩はそのままでも眠ってしまう。」p.172
・「ただ、きょうはすばらしい一日だったと浮きうきした気分になったシューホフは、そのまま眠ってしまうのも惜しいような気がした。」p.197
・「シューホフは黙って天井を見つめていた。もう自分でも、自由の身を望んでいるのかどうか、分からなかった。はじめのころは激しく望んでいた。毎晩のように、刑期は何日すぎて、何日残っているかと、数えたものだ、が、やがてそれも飽きてしまった。」p.201
・以下、訳者解説より「作家たる者は社会から不当な扱いを受けることを覚悟しなければなりません。これは作家という職業のもつ危険なのです。作家の運命が楽なものになる時代は永久にこないでしょう(ソルジェニーツィン)」p.218
・「すなわち、この「ラーゲルの一日」という圧縮された時間のなかに、ソビエトという国家の長い歴史が、そこに住む人びとの深刻な苦悩をなまなましく具体的に浮彫りしながら、繰りひろげられているからである。」p.223
?へいちゃら【平ちゃら】 (「平」は平気、「ちゃら」は冗談、でたらめなどの意)少しも気にかけないさま。何とも思わないさま。また、たやすいさま。へっちゃら。「これぐらいの雨はへいちゃらだ」