ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】音楽の遊園地

2007年05月15日 21時11分24秒 | 読書記録2007
音楽の遊園地, 芥川也寸志, 旺文社文庫 140-3, 1982年
・作曲家、芥川也寸志のエッセイ集。岩城宏之、中村紘子、茂木大輔等々、文章を書くことでも有名な音楽家の著作と比べても遜色無く、楽しい内容だと思います。その生い立ちを考えると当然か!? しかし、その音楽作品はまだ聴いたことがなかったりするのですが……無意識には耳に入ってるかな?? 軽い語り口の軽い話題に混じって、著者のヘビーな音楽観が時おり顔を覗かせます。年代的にみて、音楽家によるエッセイのはしりでしょうか。
・「今までの長い歴史のなかで、動物たちがいかに音楽の発展につくしてきたかは、はかりしれぬくらい大きなものがあります。」p.8
・「ねこの皮をなめしますと、オッパイのあとが八個のこります。これを三味線の胴に張る場合は、ふつう一匹を二枚に使いますので、四個の乳孔のあとが黒点となって、胴皮の表面にのこります。ねこ皮の三味線をよく"四つ"ということがあるのは、このためです。」p.9
・「オーケストラのなかで常席を占め、オーケストラ全体の引き立て役であるティンパニーには、この子牛の皮が張られておりますが、いちばん上等なのは、生まれる直前の腹子の背中の部分の皮だそうです。」p.10
・「ですから、ヴァイオリンという楽器は羊のオナカを馬のオシリでこすって、音を出していることになります。」p.12
・「ことにアントニオ・ストラディヴァリは、史上最高のヴァイオリン作りの名匠とされ、現存する楽器数はヴァイオリン約540、ヴィオラ12、チェロ約50で、それらの多くは更にそれを使用していた名演奏家の名前を冠して呼ばれています。」p.17 なんとな~く、Vnは100本くらいかと思ってましたが、500以上もあるんですねぇ~
・「その演奏家のいうのには、男のヴァイオリン弾きがうまくなろうと思ったら、まずすてきな恋人を持つに限る、というのです。楽器を恋人のように抱け。そして愛撫しろ。恋人を愛撫するごとく、楽器を弾け。それが上達の最短距離である。」p.20 これだぁぁ!!
・「はじめにリズムありき――これは指揮者の開祖といわれるハンス・フォン・ビューローの吐いた名文句です。」p.23
・「ある特定の楽器と、それを演奏する人間たちとの間には、ある奇妙な共通性があります。  どこのオーケストラにいっても、ホルン吹きはみんな理屈っぽい性質の持主であり、その反対にトロンボーン吹きはいずれも楽天家であり、十中八九、飲ん兵衛ときまっております。トランペット奏者には長命の相があり、いままでトランペット吹きが若死したという話はきいたことがありません。  有名なフルート吹きは、不思議と白髪型であり、禿げている人はほとんどおりません。ところが、有名なオーボエ吹きは、不思議にみんな禿げております。」p.28
・「オーケストラには、昔からタブーとされている曲目があります。(中略)その一つは、ラヴェルの作った「ダフニスとクロエ」の第二組曲です。有名な曲で、しかもよく演奏されるくせに、この曲をやると、必ず楽団員の中に事故が起こるといううわさは、戦前のヨーロッパではかなり広く信じられておりました。(中略)ロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」も、誰でも知っているポピュラーな曲であるにもかかわらず、これを演奏すると必ず内部にもめごとが起こる、というジンクスもかなり広く信じられています。」p.31 こ、これは……知らなかった。。。
・「作曲家にとって、最も恥辱的な言葉は、自分の作った作品が何かに似ている、といわれることです。」p.42
・「次は音程があまりひどすぎます。ドレミファソラシドが正確にうたえないようでは、とても歌手とはいえません。ところが事実は、そういう連中が堂々とテレビに出て、さも得意気に振舞ったりしています。もっといけないのは、本当は歌がそんなに好きではないということが、ありありと見てとれることです。(中略)たとえどんな種類の歌であろうと、歌というものは断じて心の所産であるはずです。」p.67
・「演奏は、いつも音楽誕生の現場であります。」p.88
・「したがって、競いあい、戦いを挑むことを好まないタイプの人は、まるで演奏家としての資格はありません。」p.89
・「交響曲のような絶対音楽は、いっさいの標題、音楽以外の映像や観念から解放された音楽ですが、ブラームスやモーツァルトを意識的に映画音楽として用いることがあるのは、両面との間に生じる違和感、つまり逆効果をねらったものにほかなりません。」p.105
・「世界じゅうの国家のなかで、音楽的に最もすぐれていると思われるのは、フランス国家 "ラ・マルセイエーズ" です。」p.114
・「私は、今の日本国歌 "君が代" が、日本の全国民の信任を得ているとはどうしても思えませんが、だからといって、ただちに廃棄すべし、とも思いません。」p.117
・「ところで、もう一方の馬のしっぽはどうかといえば、これまた近ごろは需要に追いつけず、その強さと相まって、次第に化学繊維が用いられ始めました。こちらはまだテスト中ともいえる段階ですが、やがては音楽界に貢献した馬も、羊同様の運命をたどることになるでしょう。」p.133 化学繊維の弓の毛には未だお目にかかったことがありません。すぐに消えてしまったのでしょうか。『低価格! 丈夫で交換不要! 松ヤニ不要! 抜群の発音!』なんてあったらいいな。
・「科学の究極の目標は、生命の誕生にあるといわれています。つまり、生命のあるものと、ないものとの接点に向かって、探究が続けられてきたわけです。  音楽でも、これと全く同じことがいえそうです。まさしく音楽であるものと、断じて音楽ではないものとの境目に、音楽の本質がかくされているといえるでしょう。」p.140
・「ジャン・コクトーは「雄鶏とアルルカン」の中で、「芸術とは科学を肉化したものである」といいました。これは芸術の本質をいい得て、けだし名言と申すべきでしょう。」p.142
・「ですから、天下に名だたる大カラヤンといえども、うっかり振り間違えることがよくあります。アップで指揮者をとらえるテレビ・カメラのおかげで、幾度となく私はその瞬間を目撃しましたが、しかし、そのあとのごまかし方の上手なことといったらありません。ありゃあ、やはり天下一品です。」p.143
・「つまり、どんな作品にも、かならず、ある秘密がかくされています。  その秘密がなかなかばれないとき、人は、これを傑作といい、その秘密を、たくみにかくし通せる能力を持った者を、人は、大作曲家と呼ぶのです。」p.153
・「魅力ある音楽は、魅力のある人間からしか生れない。これはまず、絶対の理屈といえましょう。」p.155
・「ソフォクレス "女は見るべきものにして、聞くべきものにあらず"」p.161
・「モーリァック "多くの女性は、教養があるというよりも、教養によって汚されている場合の方が多い" 「娘の教育」」p.163
・「静寂の世界を絶対の美として認めないかぎり、音楽は作ることさえ出来ないのです。」p.171
・「元来、人間の耳というものは、眼や口とはちがって、相当器用な人でもパタパタと開いたり閉じたりすることはできません。嫌いなものは一切口にせず、見たくないときは眼をそらす、などということはできないのです。」p.180
・「"はいこれはサービスでございます" といって、欲しくもない品物をつけてくれる商店はいまや普通になってしまいましたが、ほんとうのサービスは、値段をまけてくれるなり、同種のものの中からいちばん良質のものを誠意をもって選び出してくれることであって、欲しくもないものをくれることではないはずです。」p.187
・「ですから文化とは何か、これをひとことで答えろといわれたら、私は「人間が生きよく、人間らしくすばらしく生きていくこと」だと答えます。」p.192
・「週刊朝日<芥川也寸志の音楽手帳> 読売新聞<東風西風> Amica<音楽つれづれぐさ>などに連載したものや、新聞・雑誌への寄稿のなかから、軽い内容のものばかりを選び出して、やや無秩序に、どこからでも気軽に読んで頂けるように配列したのが、この「音楽の遊園地」です。  1973年にれんが書房より刊行されていたものが、今回装を改め、より多くの方々に読んで頂ける文庫版となって、私は大変しあわせです。」p.196
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春 ~最近の細々としたこと

2007年05月14日 22時57分14秒 | 日記2005-10
 今年の桜はどうも咲きかたがまばらというかショボい感じ。いつももっとパァ~ッと一斉に咲いていたような気がするのですか。そんな春の細々した出来事メモをつらづらとつれづれなるままに。

・昨日、札幌市民オケ練習にて完成した演奏会プログラムが配布された。怖くてまだ中を見れません。そんな曲解説など誰~も気にしてないだろうけど。それにしてもドッペル冒頭のチェロソロは凄まじかった。。。コトバにならず。
・メロンオケに大恩師であるO先生が参加するとのこと。今回は行くの止そうかと思ってましたが、これは行かねば… すでにホテルは満杯で、以降の申し込みの宿泊は学校を改造した合宿所(?)しか無いらしいです。もう定員が近いのかなぁ…
・本日、研究室の新歓。鍋[写真]。後のオケ練習のため禁酒の拷問。まだお互い慣れてなくて固い雰囲気。鍋とか焼肉って、どうしても限界まで食べてしまう。腹八分目にできる大人になれるのはいつの日か。
・行方不明のチューナーは楽譜の間に挟まっているところを発見される。お騒がせしました。
・今度は室蘭オケよりプログラム曲目解説依頼が。曲はエニグマ変奏曲よりニムロッド。一曲のみで字数も少ないのでまだ気は楽。

オケばっかり。。。

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【演】札幌西区オーケストラ 第21回定期演奏会

2007年05月13日 17時01分05秒 | 演奏記録
札幌西区オーケストラ 第21回定期演奏会
シベリウス没後50年記念
2007.5.12(土)18:30開演, 札幌コンサートホール Kitra大ホール, 入場無料
指揮 末廣誠, パート 1st Violin

シベリウス 交響曲第6番 ニ短調 作品104
シベリウス 交響曲第2番 ニ長調 作品43
アンコール シベリウス 交響詩『フィンランディア』

・前回のマーラー5番がついこの間のように感じられますが、あれからもう1年近くも経ったのですね。早い。今回は諸般の事情により指揮に末廣誠先生を迎えてのシベリウスづくしの演奏会でした。
・シベ6:知りません、そんな曲。末廣先生も「振るのは初めて」というほどのマイナー曲です。一般にはシベリウスの場合、1番とか2番という早い番号の曲が有名ですが、6番も弾いてみてよい曲だと思いました。曲に含まれる『シベリウス度数』が高く、純粋な感じで、これと較べると2番の方は既存の音楽形式にいかにも毒されていて、『シベリウス度数』が低い印象を受けます。一番の難所は冒頭。パート毎では単純な音譜をオケ全体でみると複雑に組み合わせた美しくもいやらしく恐ろしいフレーズ。末廣先生も「私も、怖いです!」と思わず本音がポロリ。序曲でも挟んでいればまだしも、演奏会の冒頭でもあることからプレッシャーは更に大きい。本番は、これまでで一番の出来じゃないかというほど綺麗だったと思います。が、その直後のテンポの変わり目で一瞬訳がわからなくなり、4小節の休みを数え損ね、生きた心地がしませんでした。次の入りはコンマス様を見て無事復帰。一番危なかったのはここぐらいで、後は楽譜を必死で追ううちに演奏終了。全楽章 attacca だったのとマイナーな曲なので、曲が閉じた時は「あれ? 終わったの??」と、様子見から徐々にひろがり、じんわりくる拍手でした。休符は注意してカウント! 飛び出し注意! の個所が多く、リハでもあちこち足出してましたが、本番ではどうにか集中力は途切れず最後まで保てました。
・シベ2:こちらは私自身弾くのは3~4回目でもあり、6番よりは落ち着いて弾けました。4楽章まではアッ!という間。問題だった接続部分もきれいにスッキリと聴こえてました。4楽章の冒頭にたどり着くと、頭に浮かぶのは打ち上げのビール。。。(出てないけど) このメロディーがまだ頭から抜けません。 結局、3楽章の宿題部分は間に合わず。珍しくかなり練習しましたが、能力が至りませんでした。懺悔。
・今回は両曲とも、手を変え品を変え現れる様々なバリエーションの『刻み』との戦いに終始した印象です。練習に出ていた限りでは、末廣先生の指導もあり、特に弦楽器からこれまでに無いすごい音がでる期待がありましたが、本番では予想の8割くらいの音量に感じました。決して悪くはなかったとは思うのですが、緊張があったのか、広いホールだからそう感じても仕方がないのか、ステージ上だからそう感じたのか、、、よくわかりません。
・今回もお隣はY師匠。今年に入ってから函館、室蘭ジュニアに続いて3回目。複数団体でこれだけ隣になるのは珍しい。
・開演前の舞台裏にて、弦楽器美女三人組より求められ記念撮影。
(*´∀`*)フフフ
鼻の下が伸びて写っているに違いない。
・客数1198名[公式発表]:正面1、2階席はほぼ埋まった。
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そういえば母の日。。。だったっけ。。。

2007年05月12日 22時40分07秒 | 日記2005-10
 本日、西区オケのKitara本番(詳細後日)。特にクラシックに興味があるわけではないが、札幌での演奏会はだいたい聴きにくる母が、今日も聴きに来た。
 終演後舞台をバラす間、舞台裏の休憩所で待たせた後、車に乗せて一緒に実家へ。
 「帰っても食うもの無い!」
と言うので、スーパーへ寄る。一緒に買い物するなんてしばらくぶり。買い物かごを持ってやろうとすると、「ドンくさいからいらん!」と持たせず。ちゃっちゃと買い物をする母の後に手持ち無沙汰で従う。と、レジの向かいに花屋が。

『母の日 カーネーション 300円』

レジに一本差し出すと、時間のかかるシャレたラッピングをはじめそうな勢いなので、「簡単でいいです」とそのまま受け取り、その場でカーネーション贈呈。
「あら、ありがと」
そっけない返事にて贈呈終了。
 息子のリクエストにより、メインディッシュは『冷シャブ』でした。既製品をあまり使わない母は、タレを見よう見まねで自作。それを「美味い」とは決して言わず、冷静に味のダメ出しをする息子。一皿ぶんでいいところをボール一杯ぶん作ってくれちゃって、これどうするんだよ。。。(解答:翌日炒めて食べる)

『母の日に、自分が弾くオーケストラ演奏会に母を招き、演奏をプレゼント』

なんて書くとすっごいオシャレな感じ。現実はこれとは全くかけ離れてますが。そんな今年の母の日でした。


『母の日は13日ですよ』なんてツッコミは無しの方向で。
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ドッペル曲解説 脱稿

2007年05月11日 23時42分40秒 | 日記2005-10
 演奏会プログラムに載せる曲解説をどうにか書き上げて、今日メールで提出しました。
 つくづく自分には文章書くのは向いていないと、ものすごーく自己嫌悪。はじめてなんだから、うまくいかないのは当たり前……とは言ってもこの先、何度も書きたいとは全く思いません。朝4時に突然目が覚めて、脳みそフル回転で文章をグルグル考え出す、そんなしんどい思いは、たまにのことにしておきたい。

 曲について調べていると、いろいろ勉強になるものですね。
 ドッペル・コンチェルトの成り立ちは、ブラームスのバロック音楽(コンチェルト・グロッソ)への先祖帰り的な意味と、かつて親しかったが、離婚問題でその奥さんに味方したもんで気まずい仲になっていた、ヴァイオリニストのヨアヒムとの仲直り的な意味の、主に二つの動機によって作曲されたそうで、二つ目のはなんとも人間臭い動機です。そして、いざ作曲してみると、ブラームスはピアノは弾けたが弦の事はいまいちわかっておらず、ヴァイオリンとチェロのソリストからは「こんなの難しくて弾けるか!」と文句タラタラで、かなりの部分が書き換えられたようです。『ブラームス作曲』ではなくほとんど『ソリスト競作』と言ってもいいような雰囲気。
 その他、ブラームス自身がこの曲について "a strange flight of fancy,"[3] と記述したとのことですが、この英語のニュアンスがつかめなかったので、ネタには使えませんでした。論文とは全く異質の文章。英語力ダメダメ。
 あとは、VnとVcの二重奏曲って他にどのくらいあるか、みなさんご存知でしょうか?? けっこう他にもあるものなんですね。ほとんど知らない作曲家だけど。。。
http://en.wikipedia.org/wiki/Double_Concerto_for_Violin_and_Cello
 こんな楽譜サイトがあるとは。初めて知った。
http://www.imslp.org/wiki/Main_Page
まだ詳しくは見ていませんが、ドッペルのフルスコア[2]があるくらいなので、どの程度の品揃えかは推して知るべし。

 以上、原稿に入らなかった情報でした。(オイ
 当初は原稿を公開の予定でしたが、あまりに恥ずかしいので止めときます。

<参考文献>
1.フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 (ブラームス)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%81%A8%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AD%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E4%BA%8C%E9%87%8D%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%B9)
2.IMSLP Concerto for Violin and Cello in A minor, Op.102 (Brahms, Johannes)
http://www.imslp.org/wiki/Concerto_for_Violin_and_Cello_in_A_minor%2C_Op.102_%28Brahms%2C_Johannes%29
3.Milwaukee Symphony Orchestra
http://www.milwaukeesymphony.org/purchasetickets/calendar/piece.asp?id=60043406
4.Classical Music Pages Johannes Brahms - Double Concerto
http://w3.rz-berlin.mpg.de/cmp/brahms_double_con.html
5.CD(ムター盤)曲目解説 Deutsche Grammophon 439 007-2
6.CD(シェリング盤)曲目解説 PHILIPS 446 194-2
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【本】考える脳 考えるコンピューター

2007年05月10日 20時43分33秒 | 読書記録2007
考える脳 考えるコンピューター, ジェフ・ホーキンス サンドラ・ブレイクスリー (訳)伊藤文英, ランダムハウス講談社, 2005年
(ON INTELLIGENCE How a New Understanding of the Brain Will Lead to the Creation of Truly Intelligent Machines, Jeff Hawkins with Sandra Blakeslee, 2004)

・「動いているのは天ではなく地面のほうだ!」とはじめに誰かが叫びだしたときの状況はこんな感じだったのでしょうか。一見、突拍子もないアイディアに見えるが、これまでの経験に基づきいろいろ検証してみると合理的。しかし、一般の人々の生活にとってはその正否がどっちだろうとたいした影響もなく、「へぇ~、そりゃおもしろい考えだね~」とたいした関心も持たれずおしまい。その発見の恩恵を皆が受けるようになるのは、まだそのずっと後の話。本書は脳の機能についての新しい考え方を提案していますが、その主張を聞いていて、そんなことを考えました。常々、「頭の中味」に興味を持つ身としてはそれほどの衝撃を受け、どうしてもっと大騒ぎにならないのか不思議な気もしましたが、やはり多くの人にとっては「へぇ~。」という程度のことなんでしょうね。
・著者はハンドヘルドコンピュータ『Palm』の生みの親として有名な方らしいです(私は知りませんでしたが)。文章からは、そのように時代を切り開く人物らしい『自信』がムンムン感じられます。これまで科学がほとんど手をつけられなかった、『知能』、『意識』、『記憶』、『思考』、『創造性』などといった言葉についてズバズバと明快な定義を与えていきます。「もしかしてホントに人工知能ができちゃうんじゃないの!?」 そんな興奮と希望を抱かせる。ちょっとでも『頭の中味』に興味を持つ人には是非オススメ。
・今年のベスト本候補。
・「わたしは脳にほれている。その働きを解明したい。哲学の観点からではなく、ただの一般論でもなく、実用的で詳細な工学の立場から知能の本質をさぐり、脳の働きをあきらかにしたい。そして、その働きを人工の装置の上で実現したい。つまり、人間のように考える機能を持った、真の知能を備えた機械をつくりたいのだ。」p.9
・「わたしの考えでは、この問題を解明する最良の方法は、生物学から得られる脳の詳細を制約と手本にしながら、知能をなんらかの計算とみなすことだ。学問としては、生物学とコンピューター科学のどこか中間に位置している。」p.11
・「「記憶による予測の枠組み」」p.13
・「未来を予測する能力こそが知能の本質だ。脳がどのように予測をたてるのかは、この本の主題であり、徹底的に議論する。」p.15
・「わたしは技術者としての直観で、脳はいったん働きが解明されれば人工的に実現することができ、そのときには半導体が使われるはずだと気づいた。」p.19
・「人工知能の研究は人間の能力をプログラムできないばかりか、知能の本質も解明できないだろうと直観した。コンピューターと脳は、完全に異なる原理でつくられている。前者はプログラムされ、後者は自分で学習する。」p.21
・「わたしの考えでは、ニューラルネットワークのもっとも根本的な問題は、人工知能と同じところにある。どちらも、振る舞いに焦点をあてているのが致命的なのだ。(中略)頭の「中」の働きを無視し、外にあらわれる行動に重点を置くことは、知能の解明と、それを備えた機械の実現において、大きな障害となっている。」p.40
・「自己連想記憶では、逆方向の流れと、時間とともに変化する入力の重要性が暗示されていた。だが、人工知能、ニューラルネットワーク、認知科学の研究者の大多数は、時間も逆方向の情報も無視してきた。」p.42
・「残念なことに、全員が全員、脳の働きを解明できると信じているわけではない。少数の神経科学者を含め、驚くほど多くの人々が、どういうわけか、脳や知能を人知のおよばない領域にあるものとみなしている。」p.47
・「人間であることと知能を備えていることは、根本的に違う。(中略)人間は知能を備えた機械よりも、はるかに複雑な存在だ。」p.54
・「人間のほうが(動物よりも)賢いのは、身体の大きさと比較しても新皮質がより広いからであり、層が厚いわけでも、何か特殊な「知能細胞」が存在するわけでもない。」p.55
・「この300億個の細胞が、あなた自身だ。記憶も知識も技能も人生経験も、ほとんどすべてがここにつまっている。」p.56
・「ウィスコンシン大学の生物工学教授ポール・バキリタは、パタンであればすべて脳によって処理されることに気づき、視覚の情報を人間に舌に表示する方法を開発した。」p.73
・「新皮質全体は一つの記憶システムであって、けっしてコンピューターなどではないのだ。」p.80
・「新皮質は「普遍の表現」と呼ばれるかたちで記憶を形成し、現実世界のばらつきを自動的に吸収する。」p.81
・「あるいは、騒々しい場所で会話をしているとき、言葉がすべては聞こえないことがよくある。だが、問題はない。脳は聞こえなかった部分を、聞きたかったように補う。」p.87
・「脳は自己連想によって現在の入力を補い、自己連想によってつぎに何が起きるかを予測する。このような記憶のつながりが「思考」の本質だ。」p.88
・「つまり、人間の脳は蓄積した記憶を使って、見たり、聞いたり、触れたりするものすべてを、絶えず予測しているのだ。(中略)予測はあらゆる場合に行われているので、もはや人間の「認識」、すなわち、現実世界がどのように見えるかは、感覚だけから生み出されるものとはいえない。人間の意識は、感覚と、脳の記憶から引き出された予測が組みあわさったものなのだ。」p.100
・「新皮質が行動を支配し、高度な役割を果たしていることは、人間だけの特徴だ。だから、ほかの動物と違い、複雑な言語や道具を操れる。」p.117
・「脳を解明する研究は、ずっとボトムアップの方針にしがみついてきた。いま必要なのは、トップダウンの方針だ。」p.121
・「新皮質を流れるパターンは三種類ある。つまり、階層をのぼって集まってくるパターン、階層をくだって広がっていくパターン、視床をまわって同じ階層に遅れて再入力されるパターンだ。」p.162
・「この本の中で新皮質とその働きについて述べてきたことには、きわめて基本的な前提が一つある。それは、現実世界に構造があるからこそ、予測か可能になることだ。森羅万象にはパターンがある。」p.194
・「創造性とは、簡単にいえば、類推によって予測をたてる能力にすぎない。新皮質のあらゆる場所で起こっていて、人間が目覚めているあいだには、頻繁におこなわれていることなのだ。」p.200
・「創造性とは、それまでの人生で得られたあらゆる経験と知識を混ぜあわせ、同じパターンを見つけることだ。「これはひょっとして、あれと同じかな?」という具合に。」p.204
・「人々はあまりにも簡単にあきらめてしまう。答えは発見されることを待っていると確信し、長期間にわたってしつこく考えつづける必要がある。  つぎに、自由に発想をふくらませる。脳に時間と余裕を与えなければ、答えを見つけることはできない。問題を解くということは、現実世界から手本になる解法を見つけることだ。あるいは、新皮質に蓄えられた記憶から、類似する問題の解答を引き出してもいい。」p.206
・「意識を生身の脳に振りかける魔法のソースとみなす考えは根強い。脳は細胞のかたまりだが、そこに意識という特製ソースを注いで、ようやく人間のできあがりというわけだ。」p.211
・「わたしの考えでは、意識とは、新皮質の存在によってもたらされる作用にすぎない。(中略)意識の概念は、大きく二つに分類できる。一つは「自覚」と同義であり、日常ではこの意味に使われている。こちらは割合と理解しやすい。もう一つは「クオリア」と呼ばれる概念で、感覚と結びつけられる感情がどういうわけか感覚器官への入力から独立しているというものだ。こちらは難しい。」p.212
・「宣言的記憶とは、思い出して他人に話すことができる記憶、つまり、言葉での表現が可能な記憶のことだ。」p.212
・「想像とは、計画をいい換えたものにすぎない。」p.218
・「このように、人間の意識の大部分は感覚から得られるのではなく、脳に記憶されたモデルからつくられる。」p.219
・「これまでの説明で、「心」が脳の活動の呼び名であることを理解してもらえたと思う。心は別個の存在として脳の細胞を支配するものでも、それと共存するものでもない。」p.221
・「知能を備えた機械は、わたしの考えでは、人類が開発してきた技術の中で、もっとも危険が少なく、もっとも利益が多い部類に属するものだろう。」p.231
・「知能を備えた機械をつくるためには、新皮質のアルゴリズムを突き止め、それだけを機械で実行すればいい。だが、生きている脳のおびただしい数の機能的な特徴を読みとり、機会の上に複写するというのは、これとはまったくべつの問題だ。」p.233
・「しかし、こうした類推は誤っている。知能、すなわち新皮質のアルゴリズムと、旧脳の感情的な衝動、つまり恐怖、妄想、欲望などとが混同されている。知能を備えた機械は、このような感情を持っていない。」p.234
・「数学や科学の問題が、進歩した機械によって100万倍の速さで解かれると考えてみよう。10秒間におこなわれる問題の考察は、人間なら一か月かかる作業に相当する。電光のような速さで考えることができ、疲れることも飽きることもない頭脳は、想像もつかない働きをすることが確実だ。」p.242
・「わたしの考えでは、知識を備えた機械の革命的な応用は、いままでにない種類の感覚の世界にある。」p.246
・「知能を備えた機械はさまざまな応用において、劇的なまでに人間自身の能力を超える。100万倍の速さで学習と思考をおこない、膨大な量の情報を詳細に記憶して、信じられないほど抽象的なパターンを予測する。感覚は人間よりも鋭く、地球全体から刺激を受けることも、きわめて小さな現象を検知することもできる。」p.249 ここまでくると、ワクワクを通り越して恐怖を感じる。将来は、「ワープロ普及で漢字が書けない」どころの騒ぎではなくなりそうです。
・「知能を備えた機械が実現する時期を予想するのは気が進まないが、じゅうぶんな数の研究者がこの問題にいまから専念すれば、実用に耐える試作品を開発して新皮質のシミュレーションをすることは、わずか数年で可能になるだろう。10年とかからずに、科学技術のもっとも注目を集める分野の一つになることが期待される。」p.251
・「階層的な記憶システムの上に新しい産業が築かれ、インテル社やマイクロソフト社にあたる会社が産声をあげるのは、これから10年以内だろう。」p.254
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美味しいクリームシチュー情報 ~食工房アスコット

2007年05月09日 21時32分30秒 | 日記2005-10
 たまたま見かけたのでご紹介。たまに行く近所の洋食屋がテレビで紹介されていたとは。全く知りませんでした。

いきなり!黄金伝説。【美味しいクリームシチュー情報】(2007.4.5 OA)
http://www.tv-asahi.co.jp/densetsu/contents/kekka/300.html#cream
芸人黄金伝説。くりぃむしちゅー編
http://www.tv-asahi.co.jp/densetsu/contents/kekka/20070405/cream.html

 へええ~美味しそう…… まだこの店のクリームシチューは食べたことがありません。もともと好きな料理ですが、外で食べる機会はあまりないですね。しかし500杯はカンベン。

食工房アスコット
http://www.ascotweb.com/

 手ごろな値段なので気楽に入れるお店です。特にクリームシチューが名物というわけではなかった気がするのですが。一体なぜテレビなんかに??
 『デカ盛りの部屋』のページがすごいですね。。。『スーパージャンボハンバーグ』。。。こんなメニューあったとは。決して食べたくはないが、ちょっと一目見てみたい気はする。

 ていうか、これ、挑戦者はほとんど工大生だろ!
m9(・∀・)ビシッ!!
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目撃 ~弱肉強食

2007年05月08日 23時35分37秒 | 日記2005-10
 昨夜の話になりますが、外を歩いているとき、キーキーと小動物の鳴き声らしきものがしたかと思うと、道端の茂みがガサガサと揺れました。次の瞬間、ぐったりしたネズミをくわえたネコが。

 聞いたのはネズミの悲鳴でした。ネコって本当にネズミ捕るんだ……初めて見た。ネコがネズミを捕るところ。
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 チューナー紛失。日曜の西オケ練習後、楽器ケースにしまったところまでは記憶あり。月曜の室蘭オケで気がついた。車の中にも見あたらないし…どこいった~??
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 曲解説の参考にしようと家のCDを漁る。家にあったのはムター盤とシェリング盤[写真]の二枚だけ。いずれも輸入盤。まずは翻訳から。締切金曜。

 駒ずれすぎ。

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【論】Li,2004,A comparative study of feature select~

2007年05月08日 20時22分35秒 | 論文記録
Tao Li, Chengliang Zhang and Mitsunori Ogihara
A comparative study of feature selection and multiclass classification methods for tissue classification based on gene expression
Bioinformatics 2004 20(15):2429-2437
[PDF][Web Site]

・既存の遺伝子抽出法・識別法・マイクロアレイデータを総当り的に組み合わせて性能比較。
・マイクロアレイデータ
1.ALL-AML-3 [Golub]
2.ALL-AML-4 [Golub]
3.ALL [Yeoh]
4.GCM [Ramaswamy]
5.SRBCT [Khan]
6.MLL-leukemia [Armstrong]
7.Lymphoma [Alizadeh]
8.NCI60 [Ross]
9.HBC [Hedenfalk]
・遺伝子抽出法(ランキング法)(ソフト Rankgene)
1.Information gain
2.Twoing rule
3.Sum minority
4.Max minority
5.Gini index
6.Sum of variances
7.One-dimensional SVM
8.t-statistics
・識別法
1.SVM (one-versus-the-rest method)
2.SVM (pairwise comparison method)
3.SVM (ECOC method - Random coding)
4.SVM (ECOC method - Exhaustive coding)
5.Naive Bayes
6.K-nearest neighbor (KNN)
7.Decision Tree
・評価法:各ランキング結果の上位150個の遺伝子を使って識別。4-fold cross validation で識別率を算出。

・概要「This paper compares various feature selection methods as well as various state-of-the-art classification methods on various multiclass gene expression datasets.
・「While increasing the number of samples is a plausible solution to the problem of accuracy degradation, it is important to develop algorithms that are able to analyze effectively multi-class expression data for these special datasets.
・結果「It is difficult to select the best feature selection method. There does not seem to exist a clear winner.
・結果「The accuracy of classification is highly dependent on the choice of the classification method. The choice is more important than the choice of feature selection method.
・結果「These two datasets have smaller sample sizes than the other datasets, so one may conclude that multiclass classification based on gene expression can be effectively solved when sample size is large.
・結果「The study suggests that multiclass classification problems are more difficult binary one in general.
・「Is it possible to design a feature selection method that takes into consideration correlations between features?

・読みやすい英語。
・筆者HPのPublicationを見ると、『Music Artist Style Identification by Semisupervised Learning from both Lyrics and Conent.』なんて興味深い題名の論文が。。。
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【練】プログラム曲解説執筆依頼

2007年05月07日 22時31分10秒 | 練習記録
 皆様こんばんは。2~3日休んだところで焼け石に水! ぴかりんです。
~~~~~~~~~~
♪札幌市民オケ練習 2007.5.6(日)14:10-20:00@札幌西区民センター
曲 ドッペル → リエンチ → (中退)ハイドン

ドッペルの曲解説をお願いします』 

先日こんな主旨のメールが来てしまいました。このブログをはじめた頃から密かに怖れていた事態です。実は、これだけあちこちで弾いていて曲目解説というものをまだ一度も書いたことがありません。ブログにはいろいろ書き散らしてますが、一般に配布される印刷物となると訳が違います。お断りしようかとも思いましたが、こちらのオケにはちょこちょこ弾きに行くだけで出席率も悪く、運営の役にはなんにもたたず迷惑をかけるばかりで良い所無しなので、少しでもお役に立てたらと話を受けました。
 しかし、他に適役がいくらでもいるでしょうに、何故に、このタイミングで、この曲目の解説を私に??? 未知の読者が札幌市民オケに居るとしか思えません。。。(今更ながらかなり恥ずかしい)
 もう今は曲解説のことで頭がいっぱいいっぱい。どーしよぉぉぉ~~ 最悪、ウo○oぺ…(ゲフッ

(*´∀`*)ノ ぴかりん執筆の曲解説が読めるのはこの演奏会だけ!!

 ……あぁあ、どぉおーしよぉぉぉ~~
 『攻め』でいくか『守り』でいくか……

♪本番 札幌市民オケ アトリエコンサート 2007.5.20(日)14:00開演@芸術の森アートホール
~~~~~~~~~~
♪札幌西区オケ練習 2007.5.6(日)18:30-20:45@札幌西区民センター
曲 シベ6 → シベ2

 珍しく二団体の練習が同一会場でありました[写真]。市民オケには申し訳ありませんでしたが、こちらの練習は途中で抜け、西オケの練習へ。
 前回の練習参加から少し間が空いての参加。通し練習中心。前回とは雰囲気がガラッと変わっていてびっくりしてしまいました。曲が「こなれる」とよく言いますが、まさしくそんな感じ。曲が体に染み込んだかのような、たとえ、どのパートがずれたり落ちたりしたとしても、びくともしない安定感・一体感。(私は参加できなかった)合宿の成果でしょうか。これだけ短期間でオケ全体の雰囲気がぐっと変わるというのは、過去あまり記憶にありません。
 残る問題はシベ2、3→4楽章の連絡部分。個人的には両曲3楽章に、早くて指が追いついてない個所あり。潰す。

 残り、5日。

♪本番 札幌西区オケ 定期演奏会 2007.5.12(土)18:30開演@Kitara
コメント (2)
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