どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

(超短編シリーズ)88 『行旅死亡人』

2013-05-10 00:20:04 | 短編小説
    官報を見ていると、私はときどき粗い印刷用紙の中に吸い込まれていくのを感じるときがある。  頬杖をついた掌がうっすらと汗ばむ五月の半ば、誰も居ない事務所で小さな活字の群れに向き合っている。  私は自分に与えられた仕事を逸脱して、知らず知らず紙面の一角に注意を奪われているのだった。  政令や告示といったものがある。  叙位、叙勲といった華やかな字句もゴシック活字で . . . 本文を読む
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