さきち・のひとり旅

旅行記、旅のフォト、つれづれなるままのらくがきなどを掲載します。 古今東西どこへでも、さきち・の気ままなぶらり旅。

パルテノン神殿とエルギン・マーブル

2016年09月28日 | ギリシャ



パルテノン神殿が造られたとき、あの三角屋根のところにびっしりと彫刻が飾られて
いました。それが切り取られて、いまはロンドンの大英博物館に展示されています。

  

それがコレ、見るも無残。まあこれを頭の中で合体させれば、一応想像上は完成形が
出来上がるのです。

このパルテノン神殿にあった彫刻、英国では「エルギン・マーブル」と呼ばれています。
スコットランドの貴族、エルギン伯爵が切り取って持ってきちゃったからです。

当時エルギン伯爵はオスマン帝国に駐在していた大使で、当時の皇帝に、支配下に
あったアテネの遺跡からもらっていっていい、と許可を得たのです。英国から見れば、
別に盗んだわけでもないのですが、今のギリシャから見れば「盗まれた」となるわけ
です。だって「許可したやつは、当時乗り込んできていたトルコのやつ」なんですから。

いまもギリシャは英国に「返してくれ」と言っていますが、英国はもちろん返しません。
返してやれよって思いますよね?

*そこで私が思い浮かべるのは、中国の莫高窟から発見された大量の経典・文献
です。20世紀初頭、英国の探検家がその貴重なお宝文献の話を聞きつけ、文字の
読めない中国人からはした金で買い取り、ごっそり大英博物館に持ち帰りました。
(またか!正当な取引だったと言うんだろ!)

そうなるとフランス人、ロシア人、米国人などが押し寄せ、ビラニアが襲いかかる
ように強奪してゆきました。そのなかに日本人もいました…w(゚益゚)w

あちら中国の博物館には、持って行っちゃった連中の名前と、その文献のありかなどが
パネルに書かれて展示されています。私は返したほうがいいでしょうと思います。
同じでしょ。ドサクサでさ。。。


まあキナ臭い話はさておき、この大英博物館に展示してあるエルギン・マーブルを
見て、ロマン派の詩人、ジョン・キーツは強いインスピレーションを受けて、「エルギン・
マーブルを見て」というソネットを残しました。

On Seeing the Elgin Marbles By John Keats

My spirit is too weak—mortality
   Weighs heavily on me like unwilling sleep,
 And each imagined pinnacle and steep
Of godlike hardship tells me I must die
Like a sick eagle looking at the sky.
   Yet ’tis a gentle luxury to weep
   That I have not the cloudy winds to keep
Fresh for the opening of the morning’s eye.
Such dim-conceived glories of the brain
   Bring round the heart an undescribable feud;
So do these wonders a most dizzy pain,
   That mingles Grecian grandeur with the rude
Wasting of old time—with a billowy main—
   A sun—a shadow of a magnitude.

私の精神はあまりにも弱すぎるのだ ー 死すべき運命が
 眠りたくない睡魔のように私に重くのしかかる
 そして想像に浮かんでくる神のような苦しみの
高峰と高波が私に伝える。私は死ななければならないと。
空を見上げている病んだ鷲のように。
 しかし嘆くのは甘い贅沢というものだ
 朝の目覚めを爽やかにしてくれる
曇った空を吹く風が私にはないということを。
そのようなぼんやりと感じられる頭の中の栄光は
 心に言いようのない確執をもたらすのである。
こういった驚嘆の念は、ひどくくらくらする苦しみを与え、
 ギリシャの崇高さを、長い時間のもたらす荒々しい荒廃と、
波の渦巻く大海原 ー 太陽 ー 壮大なものの影とを
 混ぜ合わせてしまうのだ。

2500年余りも昔に造られたスケールのでっかい彫刻を見て、キーツは自分があっという
間に死んじゃうみじめな存在だなあ、と思い知らされます。でも「俺って贅沢言ってる
なあ」と思い返します。苦しみと交わってはいるけれど、この壮大なる崇高さを味わえた
だけでも素晴らしい体験だったわけですから。



この木の形。日本ではなかなかお目にかかれませんよねェ。



よく見ると、マツボックリに灰でもかかったよう。



手前には円形劇場の跡。その向こうの建物は、先ほど見てきたアクロポリス博物館
です。さっきあそこからこっちを見ていたわけ。



40度になるような日には、熱射病で倒れる人がバタバタ出るので、いきなり
入場を制限することがあるそうです。日差しがすごいからなあ。



向こうには「リカヴィトスの丘」。後日登ります^^





エルギン・マーブルにまつわるおまけの後日談。

もともと古代ギリシャの彫刻は、古代エジプトなどの影響を受けているので白い
大理石の色だったのではなく、極彩色に、すなわち派手な色に塗られていたそう
です。それをエルギンが持ってきたわけなのですが、1930年に、「ギリシャ彫刻は
純白なんじゃねーの」というアホなやつが指示を出し、「ウケ」を狙ってぜ~んぶ
ゴシゴシやってしまったという大事件があったのです。この取り返しのつかない
愚行には、さすがに大騒ぎになってしまったのでしたw