一人仄香 (ひとりほのか)
雪どけの水の音 微かに響く
岸辺に佇んで この胸は
遙かな人を想う
あなた呼ぶ声が聞こえても
お便りは無いのですか
津軽に春が零れたら
わたしは一人咲いて
野の花の 恋つぼみ
仄かに香り開く
暮れなずむ街角に 跳ね人が集う
来ぬ人待ち侘びて この髪は
切なく夢を結ぶ
ねぶたに明かり灯っても
幸せは照らしますか
津軽に夏が過ぎ去れば
わたしは一人泣いて
鈴つけた浴衣帯
仄かに香り移す
お岩木の山の色 心を染める
窓辺に頬寄せて この指は
愛しい幻影(かげ)を探る
群れとぶ鳥が渡っても
お帰りはいつの日にか
津軽に秋が彩れば
わたしは一人燃えて
紅の 白い肌
仄かに香り纏う
《 間奏 》
故郷の空を
あなた忘れてしまったの
遠く離れても
わたしは待っています
陸奥にそよぐ風 梢を揺らす
水面に散り落ちる 花吹雪
仄かに香り運ぶ
作詞 : HIRO 作曲 : コバタイサオ
(c) 2010, Skyfull Stars
※ 岩木山の裾野を雪解け水が流れ、タンポポが岸辺に咲く平川の写真は、花や自然そして生き物たちを鮮やかに写し撮る、こちらのブログ「あさがや日誌」から拝借しています。
※ ねぶた祭りは実際には未だ見たことはありませんが、故郷徳島の夏の3日間踊り続ける阿波踊りと同じように、土地の伝統と民衆の大きなエネルギーを感じます。
※ 以前に発表しました『季語』の中の、《 間奏 ― 地笛 ― 》の旋律をベースに姉妹曲として作りました。『季語』は故郷を離れた女性が過去の恋愛へ想いを馳せる歌ですが、『一人仄香』の方は逆に故郷で恋人を待っている女性の想いを歌っています。
※ 源義経の前で静御前が舞う姿に擬えたという「一人静」(別名:吉野御前)という白く慎ましい野草花があって、その名やイメージに触発された『一人静』や『ひとりしずか』(YouTube)という歌も作られていますが、タイトルの『一人仄香』(ひとりほのか)はそれに倣った造語で、実際にはそういう名前の野の花はありません。