『私のためのあなた?』
ローズ・セラヴィ用に印刷されたスーツケースのラベル(『DUCHAMP』注より)
(私のあなた)ではなく《私のためのあなた?》である。
(私のあなた)は(私の胸の中に秘めたあなた)であるが、《私のためのあなた?》は、あなたは私にとって必要かつ重要な切り離すことの困難な存在である。同等というより束縛に近く、同一と換言してもいいかもしれない。疑問符がついている、そんなことがあり得るかと。
人名とは思えないセンテンスである、文字を理解する限りにおいては。そして RROSE SILAVY との印字もあるにはあるが、ローズ・セラヴィという女の名に該当する人さえ本来不在である。
この架空、この虚実不明のラベル。確信をもって印刷されたラベルはスーツケース(旅行用)に付けるためのものである。
『私のためのあなた?』が、スーツケース(旅行用)につけられ(異)世界を旅する。
(私のためのあなた)の存在証明は難しい、なぜなら(私)と(あなた)の両者が並び立つことは不可能だから。その不可解な人の持つスーツケースにつけるラベルもまた不可解である。
現実ではあるが、非現実的なもう一つの空間をリアルに立ち上げている。要するに《在るけど無く、無いけど在る》のである。
(写真は『DUCHAMP』TASCHENより)
ぼくはカリメラ鍋に赤砂糖を一つまみ入れて、それからザラメを一つまみ入れる。
☆過(あやまち)の釈(意味を解き明かし)赦(罪や過ちを許す)が套(隠れている)。
逸(隠れている)寿(命)、逸(隠れている)新しさ。
また、あるお役人が車から出てきて、この事件をとりあげてやろうとおもっても、あわれな、疲れきった老人の父が口のなかでぼそぼそと申し立てることを聞いただけで、事件の全貌を想像できるものでしょうか。
☆しかしながら普通の終わり(死)は、自分自身でのぼりつめ、事件(死の事柄)を把握したいと思っても、小舟や父(宿命)の哀れな疲れ切ったものが呟くことで、事件(死の事柄)の光景を描くことができるでしょうか。