『旅人』
波静かな水平線が見える中空に一塊の球体然としたものが浮遊している。
緑葉・椅子・女体のトルソ・ラッパ・樽・鏡・ミシン・ライオン・(これらの背後のものは不明、まだまだ沢山のものが有るという予感)
水地球にいて、地上ではなく空に浮遊しているわたくし(マグリット)、心はどこか現世と来世の境目、あるいはとてつもなく時代を遡る過去そして未来を行き来する。
不可逆という物理法則・自然の理を超越し、無空の彼方を旅する旅人である。
緑(自然)・椅子(現世での職務)・女体/トルソ(憧憬や性欲)・吹奏楽器(主張)・樽(酒や嗜好品)・鏡(自身や世界を反映するもの)・ミシン(制作)・ライオン(強い闘争心)などを身にまとい漂流している。
世間との接触を絶った浮世離れした生活、それがわたくし自身である。
【わたしが見えるか?見えるはずのないわたくしである】
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
さうしてみると、いままで峠や林のなかで、荷物をおろしてなにかひどく考え込んでゐたやうな支那人は、みんなこんなことを誰かに云はれたのだなと考へました。
☆「峠(一番大変な時)の倫(人が行うべき道)は何か」という仏の講(話)である。
己(わたくし)の詞(言葉)を納める図りごとを、推しはかる運(めぐりあわせ)の講(話)である。
(こんな救いなら、他人にあたえてもらうまでもなく、自分たちでもっと早くに考えだすことができたのですけれど。)わたしは、その従僕がそのちき(おまえたちだって、手紙をこんなふうに扱っているんだろう)と言ったっておかしくなかっただろう、とおもいましたわ。
☆わたしはその従僕(死人)が、あなたたちだって証明をそんな風に扱っているだろうと、言うことができるのだと思いました。