『シェヘラザード』
シェヘラザード、千夜一夜の語り部は、架空の物語を次々に捻出熱弁するイメージの語り部である。真珠で模られた彼女には眼と口しかないが、眼差しは何かを直視しておりある一点に集中している。物語には粉飾があるが、その一点は(真実)に向けられたものである。
傍らに鈴、中央にコップの水があるが、カーテン(遮蔽)に隠れた鈴は、伝説・流言・主張を暗示しており、床面から微妙に浮いて見えるのは非現実(重力の否定)の証かもしれない。
それに対してコップの水は両脇のカーテンの間にあり、空と海山の空間に位置しているのは、コップの水平は現実の真理を暗示しているものと思う。
右下の方には傾斜し亀裂の入った阿房宮から鳥が飛び立っている景がある。鳥の巣として朽ち果てた阿房宮の哀れな末期。究極の栄華もやがては疲弊し滅亡を余儀なくされる末路…強欲の果てである。
この構図、シェヘラザードが語り継いだ生命の大切さではないか。
粉飾の夢物語を左に、栄華の横暴を右下に置き、コップの水の水平(真理)を中央に置くというバランスは、一つの世界観(主張)を現わしたものと思う。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
陳はもう丸薬を一つぶつまんで、口のそばへ持つて行きながら、水薬とコツプを出して
☆朕(わたくし)は願う。約(とりきめ)が逸(隠れている)講(話)であり、弐(二つ)の考えを推しはかり、訳(ある言語をほかの言語に言い換える)を推しはかる。
あの子の疑いは、あの子自身とわたしにだけかかわる問題です。しかし、あなたにたいしては、ほんとうの使者ーええ、あの子の考えのなかにあるほんとうのししゃのように見てもらえたら、これにまさる名誉はないと考えているのです。
☆これらの疑いは彼とわたしにだけあり、それに対し本当の小舟が現れるーほんとうの小舟が現れるように見えたら、その中にこそ信用(真実)を探し出すことができるのです。