『アルンハイムの地所』
二十六日くらいの月が南中、満天の星月夜…この月が南中する時刻は昼であり、そのころに星は見えない、つまりは架空に設定された時空ということである。
幻想の月明りに白く輝く三つの卵は、翼を広げた鷲の頭部を持つ山稜に関連して視覚に納まる。鷲の卵という想像は、誕生・成鳥・(死)の連鎖に変わる。
鷲は鷲の形態に酷似した山稜(岩石/無機質)であり、生命(有機質)を持つものではない。にもかかわらず、ここに生命の連鎖を見てしまうイメージの確信。
まったく異なる時空のものの合体構成は、奇想の空間を提示する。
『アルンハイムの地所』とは物理的条件を根本から覆し、(何かある)という《イメージの確信》を拓く時空への開眼、アルンハイム(任意の命名)という精神(妄想)の領域への場所の提示ではないか。
山稜(自然/無機)・石積み(ブロック/人口)・卵(有機)・空間を転倒させたのか大地が転倒しているのか判別不能な天空(夜空)…物理的条件(観念)をことごとく外した展開は、解放された自由なイメージの世界であり、そういう魔界である。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
「支那人さん、もういゝよ。そんなに泣かなくてもいゝよ。おれは町にはひつたら、あまり声を出さないやうにしよう。安心しな。」
☆詞(言葉)を納める図りごとを究める。
調べて章(文章)を推しはかる案(プラン/考え)は、新しい。
あの子は、お城のことをいろいろ話してくれます。けれども、あの子の話からは、あの子が聞かせてくれるこまごまとした事実からは、どうしてこれらのことがあの子をあんなに変えてしまったのかということが、ちっとも理解できないのです。
☆彼は城(本当の死)について多く話してくれます。しかしながら、彼自身の話から彼が伝えようとしている氏族の事実から、どうしてあんなに変わることができたのか、解らないのです。