作家・川上末映子さん:芦屋読売読書サロン
江嵜企画代表・Ken
「よみうり読書・芦屋サロン」、ルナ・ホール、作家、川上末映子、という案内が読売新聞に出ていた。川上さん?、どんな作家?恥しながら知らない。ただなんとなく聞いてみようという単純な動機で出かけた。
川上さんは、1976年生まれ、大阪府出身、2008年に「乳と卵」で芥川賞を受賞した。NHKテレビ「トップランナー」という人気の若者を紹介する番組にも出た。歌、踊りも堪能、アルバムも出している。最近、いじめをテーマに書いた「ヘブン」が大ヒットして、乗りに乗っている作家です、と司会の中村さおりさんが紹介していた。
神戸で村上春樹さんの読書会があり、その時以来、芦屋の山を左手に車の中からみた。神戸といいかけて、芦屋はいいですね、と言った。こんなにたくさんの方に来ていただいて、嬉しいと冒頭、挨拶した。舞台に颯爽と現れたが、まるでファッションモデルである。
川上さんは、実に楽しそうに話す。止まらない。話し出してから、「えーっと、質問はなんでしたか?」と確かめて、一端、軌道修正して、話をまた続ける。聞き手が困る場面をしばしば目にした。雰囲気にまるでとらわれない。ザックバランという言葉が、関西弁にあるが、そのままである。
いつものように会場の様子をスケッチした。あとで520人と知ったが、若い人が一角を占めていたが、失礼を顧みず言えば、普通のおばさんで会場は一杯だった。平日の午後だから仕方がないが、男性の数はいつも通り少なかった。今回の催しのために書き下ろしたという「星星峡」という原稿用紙9枚の小説から話がはじまった。
ひとしきり聞き手の浪川和子さんと川上末映子さんとの対話の後、参加者との質疑応答が面白かった。質問は二回に分けて都合8~9人はいたと思う。川上ファンなのであろう、質問者には、男性が多かった。男と女の生理の違いについてのやり取りが面白かった。
今回の書き下ろし「星星峡」に出てくる舌についてのやり取りでは、人間、死んだら舌を飲み込むという怖い話がさらりと出た。話を聞きながら「舌を巻く」という言葉をふと思い出した。川上さんの体から、言葉があふれ出てくる感じがした。小説は、炸裂、小説は爆発と表現しておられたが、大いに納得した。
全員死ぬのに、なぜ生まれてくるのかと今でも思っている。子供時に読んだサザエさんの漫画で、「なんで人って死ぬの?」と聞いたら、波平さんが「そんな暇あったら、勉強しろ」と言う場面があった。あんなの見ると「もう、答えようがなかった」と話していた。
子供の頃、母親に「なんで、わたしを生んだん?」といった。母親は大ショックだったらしい。「外へ出て、走ってこい!!」と言われた。母親は、「疲れたら、寝るやろ」、と言っていた。子供のころのエピソードの紹介が面白かった。
川上さんは夢をよく見るそうだ。いまでも、夢の途中で、ガバッと飛び起きる時がある。こんな夢を見たいと思って寝ると思い通りの夢を見れるようになった。夢の話を小説に書くのはむつかしいと話していた。始めての恋愛小説を9月に出すそうだ。思いが成就される時と思いが成就されない時との違いを書きたいと話していた。
長く読まれる作品が書けたらいいなといつもと考えながら書いている。5月末までに仕上げるのに、まだ手を付けていないと前置きして、今回の恋愛小説は、長い間読まれる、手ごたえを感じてもらえる作品を書きたいと話していた。
今回の催しのまとめは5月12日の読売新聞に掲載されると司会者が紹介していた。当たり前のことであるが、どんな名人がまとめても、会場に足を運び、生で話を聞くに勝るものはないと常々思っている。午後2時から3時40分までの時間を堪能した。(了)