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さるコンビニの一隅
江嵜企画代表・Ken
さる小さなコンビニ店のレジの一隅に、はがきサイズのスケッチ画が並んでいる。店と幅5メートルと離れていない路地を介して例の更地がある。花の絵が出来るとコピーして届けることがいつの間にか習いとなった。かれこれ5~6年にはなる。
早朝、溝掃除をしていたとき「お早うございま~す」と声をかけてくれた女性の店員さんに、たまたま手に持っていた花の絵のコピーを「これ、よろしければ、ど~ぞ」と渡したときがきっかけだった。
こちら神戸も連日の猛暑、多少陽が陰った夕方、夏の甲子園開会式の様子を描いたスケッチコピーを店に届けた。草取りを済ませた後、店に入り写したのが添付ファイルの写真である。「キキョウ」、「グロリオサ」、「レインリリー」、「紅葉葵」の横に「甲子園」が並んでいた。
スケッチでは、先日、当欄でも触れた愛読者のM.S.さんと認知症の奥様とのほのぼのとした対話に最近特に元気をもらっている。先日の甲子園開会式の絵で、奥様と15分も対話が出来たと嬉しいメールが届いた。奥様とお二人で甲子園でプロ野球観戦されたときの遠い昔の話が昨日の出来事のように奥様の口から出て来たそうだ。
奥様は花の絵がお好きなようだ。「紅葉葵」の絵を見るなり「赤い色がきれいね。今回の赤は前回と違うね。緑がきれいや。」と話されたそうだ。実は「紅葉葵」の絵とその先に描いた「レインリリー」の赤にコチニールという昆虫の殻をつぶしてできた絵の具をたまたま使った。
認知症の奥様が、色目の違いを見抜かれたとしたら脅威的である。M.S.さんは「貴殿の絵は、セラピーとリハビリに間違いなく効果があります。ありがとうございます。」といただいたメールにあった。
甲子園開会式のスケッチを行きつけの蕎麦屋さんの女将さんに昨日届けた。「もうずいぶんたまったわよ。いままでいただいた春夏の甲子園開会式のスケッチをいつも取り出しては見せてもらってるのよ。」とまるで自分の宝物のように話してくれた。
余談ながら、小磯美術館の中の喫茶店に十数年前に店内風景を描いたスケッチが額に収まってお店の一隅に飾られている。しばらく訪問していないので今も置いてあるか定かでない。美術館という場所柄晴がましいが、店のご婦人のマスターがお気に入りだとご本人から大昔、聞いた。
たかがスケッチ、されどスケッチ。手がひとりでに動くまでひたすらスケッチすることの大切さを教えられた。日本画の手ほどきを受けた森田りえ子先生、高島屋日本画教室で、いまもご指導を受けている猪熊佳子先生、日本画家お二人にひたすら感謝である。(了)