思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

日本の伝統とは子どもを可愛がることー「11の約束」

2005-05-05 | 書評

「11の約束」えほん教育基本法(ほるぷ出版・税込み840円)の対談は、とてもいいです。
いろいろご紹介したいのですが、まずは、伝統について。対談は、この本の著者―伊藤美好さんと池田香代子さんです。

近代化とつくられた『伝統』

江戸時代後期から明治初期に日本を訪れた外国人は、日本人がいかに子どもをかわいがるか、その中で子どもたちがいかによく育っているか、驚きをこめて書いています。大人が子どもと一緒に凧揚げしたり、おもちゃを作ってやったり、子どもの遊びを楽しげに見ているって。(伊藤)。

そういえば、江戸期の名所図会などの群集を見ると、男が子どもの手をひいたり、肩車したりして歩いている。乳離れした子どもの世話は男の役目だった。男は仕事が終わると
子守りをしたのね(池田)。

子育て日記をつけていた武士も(伊藤)。

今、女は家庭で子育てに専念するという伝統にもどれ、勤勉や規律性といったこの国の伝統的美点をとりもどせ、という人がいるけど、そこでいわれている伝統って、明治以降にそれまでの伝統をご破算にしてつくられた、あたらし伝統だと思うの。江戸時代は、男も育児の主体だったし、人々は遊んでいなければ生きた心地がしなかったのだから(池田)。

各地に残っている土地の歌舞伎やお祭り、庶民が見世物で楽しんだかル来方やらくり人形などを見ても、江戸時代の人たちがどんなに遊ぶことを大切にしたか、伝わってきますね。規律性に関しては、日露戦争前後で変わったという人もいます。軍隊にたくさんの人が入るようになって、歩き方や時間の観念などを西洋式に改造されたって(伊藤)。

その人がその人であることをそっくり受け入れ、しあわせを感じるには、生活に根ざし、からだにしみこんだ伝統を誇りに思えることが欠かせない。その意味では、伝統は大事だと思う。でも、そういう伝統はちいさな生活圏に由来するもので、当然、地域によって千差万別なはず。全国一律に伝統ということがいわれたら、それは「近代国家の新しい伝統」だと思って間違いない。


「水の国=日本、よき伝統を破壊したのは誰ですか?」もぜひご覧下さい。


2005.5.5(子どもの日) 武田康弘





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