実に素晴らしい!発売時にうかつにも聴き逃してしまい、今、感動し、感激しているところです。2002年の春に録音されたサイモン・ラトルとウィーンフィルのベートーベン「第9」です。
艶やかで華のあるウィーンフィルのよき伝統=「自然」の上に立って、ラトルは大胆で革新的な精神による新しいスタイルの「第9」を生みました。鮮烈な感動を呼びます。過去の名演の多くを「過去の」にしてしまうような21世紀の見事なベートーベンです。(クレンペラー盤の存在の強さ・大きさには届きませんが,終楽章のエロースには痺れます)
神秘性や超越性に逃げることなく、コンセプトの豊かさと明晰さによって健康な音楽をつくり、それが深い感動をもたらすのです。
輝かしく、
明るく、
強く、
自信に満ち、
断固としています。
その姿勢がとても自然で気持ちがよい。
歌うところは十分に歌い、突出させるところは強く突出させます。
ラトルは私と同世代です。ブレルことのない自分を持ち、エネルギッシュで積極的、開かれた信念の持ち主。おおいに共鳴します。音楽と人生に対して「不屈」の闘志をもつ21世紀の洗練されたカリスマに拍手!!
時間のない方は、第四楽章だけでもぜひお聴き下さい。できるだけ大きな音で。全身が痺れること請け合いです。 (東芝EMI-初出盤は2000円)
2005.5.9 武田康弘