思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

ベルリオーズの「トロイ人」(ロンドン交響楽団の自主制作版・デイビス指揮の12枚組ボックスより)

2007-10-05 | 趣味

2000年から03年にかけて収録されたベルリオーズ生誕200年記念演奏会のライブ盤(12枚組)の中から、ベルリオーズ畢生(ひっせい)の大作「トロイアの人々」全曲(演奏時間4時間・CD4枚)について。

この想像力そのもののような音楽は、舞台上演上の難しさから全曲が演奏されたのはベルリオーズ死後100年もたってからであり、録音されたのは、ようやく1969年のことでした(発売は1971年)。上記のCDと同じコリン・デイビス指揮で、フィリップスからLP5枚組・一万円で出ましたが、当時19歳のわたしには、ほんとうに高い買い物だったことを覚えています。この世界初の全曲盤は、その後CD化されて今でも入手可能です。ただし、現在国内盤はなく輸入盤だけです。

その後だいぶ時がたってからジェームス・レヴァインの指揮のLD(現在はDVD)が出ましたが、これを見て、なぜこの作品がほとんど舞台上演されないかが分かりました。ベルリオーズのあまりにも高度な音楽、イマジネーションの桁違いの広がりを視覚的に現すことは到底不可能で、そのために舞台を見ても面白くないのです。この想像力をそのまま音楽化したような作品は、音だけで聴く方がよいのです。

CD時代に入ってからの新録音は、シャルル・デュトワ指揮モントリオール響が最初(国内盤は最初にして最後)のものですが、これは蒸留水のような味の薄い演奏で、ベルリオーズの情熱が全く伝わらず、ガッカリしました。この盤が現在国内盤で購入できる唯一のものです(歌詞の日本語訳が付いています)。

さて2003年に発売されたデイビスにとって二度目となる全曲録音(演奏されたのは2000年)ですが、これは、さすがに素晴らしい演奏で、世界初の全曲録音となった30年前の多少の生硬さを残していた熱気が、洗練された情熱となって燃え上がっています。感覚神経と想像力の刺激において最右翼の音楽・ベルリオーズのロマンがいかに高度に洗練されたものであるかがよく分かります。頭を中心に全身に鳥肌がたつような高密度の時間が続きます。(ただし、最初のデイビスの録音の方が鋭さ・迫真性においては上)。

このCDは、イギリスのロンドン交響楽団による自主制作盤ですが、HMVで廉価で入手できます。12枚組みのボックスでなくても、単独で買えますが、輸入盤のCDは二組買うと25パーセントオフなので、例えば、プレートル指揮の名盤―同じくベルリオーズの「ファウストの劫罰(ごうばつ)・クレオパトラの死」クリックを一緒に購入する方がお得です。

情熱と叙情性と想像力の音楽、ベルリオーズをぜひお聴き下さい。


武田康弘




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