思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

ソフィスト=サンデル教授のディベートショーに騙される知的退廃(ハーバード、東大、NHK)

2010-10-01 | 恋知(哲学)

わたしは、4月の「ハーバード白熱教室」の放映と同時に、サンデル教授の思考法を批判してブログを出しておきましたが、
先日の東京大学におけるディベートショーを見るに及んで、とんでもないインチキ哲学だと確信しました。
ソクラテスは、ソフィストたちのディベートを根本的に批判して問答法(ディアレクティケー)による思索を展開し、それをプィロソピィア(philosophia)=フィロソフィー・知を恋するとしたのですが、サンデル教授は、それを弁えず、哲学をディベートにしてしまいますが、この根源的な誤りについて、ハーバードの学生も東京大学の学生も一人も指摘する者がいないのには、ただ呆れるばかりです。
こんなものを「現代最高の知性」!?(笑)と紹介するNHKをはじマスコミ及び「公共哲学」を進める大学人を見ると、【受験知】に支配された現代世界の知的退廃に心底うんざりです。


以下は、内田卓志さんからのメールと、わたしの返信です。


先日の東大でのサンデル教授の授業?を拝見。

内容ですが、この企画は日本の教育環境の中では画期的なもので素晴らしいと思
います。ただ、私は最後まで下記の点でフラストレーションが残りました。サンデル
教授の哲学に関しては今後研究としたいのですが・・・。
まだ感想纏まっていませんが、如何でしょかね。

①最後までサンデル教授は自らの哲学を語らない。(自らの哲学は当然持って
いるでしょう)
②いつの間にか、サンデル教授の関心に誘導されてしまう。授業だからある程
度の誘導はやむを得ない?
③イチローの年収は高いか?また、オバマと比べてどうであるか?
⇒この問いは、いつの間にか、課税の問題や所得分配の公正の問題となり、根本的な
哲学的議論が最初から除外されてしまった不適切な例と思います。そのような問いを
するのなら、イチローの年収は一般人のそれより高いが、同じ税負担が平等か?公正
か?とストレートに質問した方が良いでしょう。
自由主義経済の本質である、価値(商品)や時間の差異性や差別性、そこから生じる
分配の差異性(差別性)は如何なるあり方が公正なのか、また公正さを実現
する方法を問うのであれば、経済哲学的・政治哲学的な正義の問題なのですが。
④気になったのは後半で、サンデル教授自身がこの授業をディベートといって
いる?ことです。私は英語が聞き取れなかったのですが、本当にディベートといって
いるのでしょうか?学生は自分の本心から発言しているのであってディベートとした
ら問題ありですね。
⑤最後の方で、哲学的ディベートは結果を導くのではなく、ディベートそのも
のが大切との意見。⇒これでは哲学的には浅い対話であり、哲学的(ソクラテス的)
な対話ならば、何らかの共通了解(原理)を導いたり、確認することがまずは求めら
れると思えます。つまり、対話から原理を導き、原理から思考するのです。そこを考
えないと、ただ過去の大哲学者の前提条件から議論を始めることになってしまいま
す。もったいないことで、千人からの人は皆違うのですから、皆違う体験を持ってい
る千人の中でのなんらかの共通了解を探求できれば素晴らしいことです。ただ議論や
対話をすることでは、哲学ではないでしょう。ディベートならよいですが。

全体的には、よりサンデル教授の哲学に興味がわきました。かつてロールズをあれほどま
でに批判したコミニタリアンのすぐれた政治哲学者です。
ホッブズやカントやアリストテレスの例を出していましたが、マッキンタイアならア
リストテレスでしょうが、サンデル教授はどう考えるのでしょう。
この感想は、もっと纏まったかたちでまた報告したいのでまとまったら先生のブログ
に出せたらよいと思います。機会を見て先生のご意見も聞いて、サンデル教授の本も
読んでさらに考えたいと思います。  内田卓志

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内田さん


サンデル自身の哲学はまったく評価できません。この点、わたしは、竹田青嗣さんと同意見で、「新共同体主義」なるもは、哲学的に程度の低いものです。金泰昌さんの「間(あわい)の哲学」と同じく、原理に届かないイデオロギー的思考。

彼は、言葉のレベルや範囲を限定せずに(これは哲学=原理的思考とは無縁なやりかた)質問を投げつける「誤魔化しのチャンピョン」です。高等詐欺師=ソフィストとしか言えません。

「本質へ向かって沈思することの苦手な大学の哲学教師」が編みだしだ言語競技の見世物=ディベートショ―なのです。哲学を欺く最悪の哲学教師と言えます。

ほんとうに取り組むべき価値のある問題から目を逸らさせる問題設定で他者を煽り、それを政治哲学だと思わせる。現代の知的退廃が生みだす一象徴です。現代の知とは「技術知」でしかなく「英知」は消えうせた!ということを証明する言論ショー。

このインチキを見抜けず、気持ち悪いとも思わずに、プラスに評価する人は、その人自身が愚かな頭と心の持ち主だとしか言えません。

ハーバードや東大の学生やNHK・・・・・


武田

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武田先生
回答お礼します。

私が、サンデル教授に一番不満なのは、自らの哲学を語らないで
学生にディベートをさせていることです。学生は本心を語っているのに
サンデル教授はそれをデイベートとしているとしたら犯罪的です。
また、自らの価値判断を示さないで広島を持ちだすのはとんでもないことです。
ロールズは、明確に広島の原爆投下は国際法的にも不法であると明言しました。
コミニュタリアンは、どうももの足りないですね。意気地がない哲学と見られたら
サンデル教授も不本意でしょう。
それにしても一定の評価すべきと思いますが、哲学的には困ったことと思います。
詳細は、お会いしたときにでもお話しましょう。 

内田








コメント (4)
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