本日発売の『サンデー毎日』に掲載された、ジャーナリストの青木理さんの『ヤンキーかチンピラか』というタイトルの論評を御紹介します。正鵠を得た論評です。
-以下、『サンデー毎日』(サンデー毎日2015年6月14日号)の記事の転載です-
『ヤンキーかチンピラか』
そこそこ真っ当な政治家やメディア関係者なら十分に分かっていて、陰ではぼそぼそと愚痴っているのに、誰もが公然とは口にしない。それが不思議で仕方ないからあらためて書くのだが、現政権の内部や周辺に巣食う連中のレベルは相当に低い。
ネトウヨまがいの言説を垂れ流す者。最低限の知性と見識に欠けた者。名を挙げはじめればきりはないが、たとえば現首相の側近として政権の最中枢に居座る幹部のひとりは、かつて自身のツイッター上で、立憲主義についてこう書き込んだ。
「学生時代の憲法講義では聴いたことがない。昔からある学説なのか」
冗談のような話だが、現在の自民党の改憲草案は、この人物の主導でつくられた。いや、いまも改憲に向けた政権の動きに深く関与し、次のようなことを堂々と触れ回っている。
「改憲を国民に一回味わってもらう。怖いものではない、となったら、二回目以降は難しいことをやっていこうと思う」
リッケンシュギってナンですか?―そう公言する愚者が政権中枢で改憲への動きを担う悲劇。いや、これはもはや喜劇か。
現首相だって似たようなものだ。国会の場で立憲主義は「王権時代の考え方」と言い放ち、大学で憲法を多少なりとも学んだなら誰もが知っている故・芦部信嘉東大名誉教授らの名を「私は憲法学の大家ではないので存じ上げない」と口走ったのは記憶に新しい。最近では、まさに「戦後レジーム」の起点となったポツダム宣言を「つまびらかに読んでいない」と開き直った。
本当の無知なのか、実際は知りたくない、認めたくないものは見ない、読もうともしない、ということなのか。いずれにせよ、こうした無残な言動が反知性主義と揶揄され、 「与党のヤンキー化」とも皮肉られたが、中身が空っぽなのに肩だけいからせるという意味では、安っぽいチンピラの群れに似ていると言い換えてもいい。
そんな政権下の国会で、安保関連法制の審議が本格化した。戦後日本の矜持を覆すばかりか、立憲主義すら腐らせる極悪法には幾度でも批判の石を投げる。しかし、憂鬱の種はこれにとどまらない。
盗聴法=通信傍受法を大幅強化する改正案。国民総背番号=マイナンバー法の利用範囲を拡大する改正案。派遣労働者の受け入れ期限を事実上撤廃する労働者派遣法の改正案。本来なら一つでも総選挙で民意を問うに値する重要法案だが、ずる賢い行政官僚が為政者の無知につけこんでいるのか、いずれも今国会に上程されていて、いずれも成立してしまいかねない。
そういえば、政界や財界にファンの多い某大物作家は、生前にこんな言葉を遺しているという。 「国が滅びる時、あるいは国家を滅ぼす時、必ず“愛国的な愚者”が権力の座に座る」
私は好きな作家ではない。ただ、この言葉には深く頷く。
-以上、『サンデー毎日』の記事の転載おわり-
『ストップ・ザ・アベ!』『ストップ・ザ・極右!』です。
神前 格