以下は、共産党の機関紙「赤旗」に載った泥さんの書評ですが、いま進める海外派兵を可能とする安保法制(すでに大多数の法の専門家により違憲との審判が下りた)が、人間・日本人をどれほどの不幸に陥れるかがよく分かります。(なお、わたしは恋知者=実存論者であり、共産党の唯物論思想ではありません)
豊かな家庭でのほほんと育った政治家稼業の安倍という男には何も見えません。こんな男(自らの一族が支配者だった戦前の日本に憧れる狂気)のためにわたしたちの国を台無しにされたらたまりません。
デイヴィッド・フィンケル著 古屋美登里訳
『帰還兵はなぜ自殺するのか』(亜紀書房 2300円)
泥憲和 元自衛隊員 心を病む米兵たちの克明な実態
米国社会を悩ませ続ける戦争後遺症。
本書はイラク戦争で心を病んだ兵士たちが、わが家に帰ったその後の姿を追ったルポである。
無残極まりない戦場の出来事、そのことで元兵士がどのように煩悶(はんもん)し苦しみ、家族を傷つけ、人間関係が壊れていくのかが、著者の克明な聞き取りで明らかになってゆく。
軍は命令で動く組織だ。
私が自衛隊に在職していた時の体験では、命令に服従することに慣れてくると、理不尽な命令でさえ、そこに身を委ねて従うことに奇妙な達成感を覚えるようになる。
理想的な兵士とは、命令を受ければちゅうちょなく人を撃って後腐れを覚えない人物であろう。
しかし、命令で完全に恐怖を取り除くことも、人を手にかけた罪の意識を消し去ることもできない。
たった1年か2年を戦場で生きたら、残りの人生丸ごと「終わりのない罪悪感」にさいなまれて生きることになるという。
フラッシュバックに頭をかきむしる本人も辛いが、「壊れてしまった」兵士を受け入れる家族の負担も重い。
「落伍者」扱いだから軍や政治家は元兵士をケアすることに及び腰だと著者は語る。
病院もセラピストもカウンセラーも対策を講じているアメリカだが、帰還兵の4人に1人が何らかの心的後遺症を抱えている(訳者あとがき)状態ではなすすべがない。
日本政府はイラク帰りの自衛官が多数自殺していても何の手も打たず、自衛官が戦闘地域に赴いてもリスクは増えないと無責任な態度に終始している。
安倍政権の思惑通りに戦争法案が実現すればどうなることか。
私は心底恐ろしい。
引き返すなら今である。