学校教育の現場では、地理は、領土問題を強調するように変わっています。
日本の領土はどこまでか、を問う問題は、2年ほど前から小学校で始まっています。
もちろん、北方領土と竹島と尖閣はみな日本固有の領土として教えられていますが、領土問題が派生した経緯についての記述は政府見解だけで、異論や異説には全く触れられていません。元外務省情報局のトップで、防衛大学教授でもあった孫崎享さんの本『日本の国境問題』(ちくま新書)の記述など完全に無視です。
例えば、中学の副教材では、「北方領土は、違法にロシアに奪われている」という書き方です。
なぜ、そのような事態に至ったのか? 太平洋戦争へと続いた14年間の戦争について(=中国の一部を満州国として日本が支配していたこと)は教えられないまま、領土の問題がテストで出されています。
尖閣についても、日本海軍No2(台湾州のトップを務め、支那方面艦隊司令長官)の福田良三さんの有力な話(娘の光子さんによる)も、無いことに。
また、小中学の各学年とも敗戦を受け入れた「ポツダム宣言」の内容についてはまったく教えられていません。大多数の教師もポツダム宣言(わずか2ページほどの分量ですが)を読んだことはないようです。その点は安倍首相と同じです(国会答弁で明らかに)。教科書の巻末資料にさえ「ポツダム宣言」はありません。
戦後日本がはじまった最大の文書である「ポツダム宣言」も知らずに、現代の政治や領土問題などが語られるとは、信じられないほど愚かですが、歴史的経緯もアメリカの基本方針も教えらえず、領土の範囲を丸暗記させられ小学校から出題されるというのを見ると、政府はこのようにして子どもたちから思考力を奪い、政府見解をそのまま「正しい」と思う人間にしていくのだな~~~と薄気味悪い「感慨」を懐きます。
教育を支配し教科書を変える必要をくどいほど書いている安倍晋三は、確かに有言実行です(笑・呆)。
公平・公正とは無縁、普遍性の追求とも無縁。それを国家権力を用いて行う、なんだか天罰が下りそう。『ポツダム宣言』を読み、『知ってはいけない』(矢部宏著)を知るのが、はじめの一歩です。
武田康弘