★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

◎●×スと恋愛の経済学―― Dollars and Sex

2017-02-17 18:54:24 | 思想


ときどきヤクザな本を買いたくなるのであるが――、上の本はカナダの名門大学の学部生向けの講義録だそうである。すごく人気のある授業だったそうだ。どこの学生もだめですなあ……。

だいたい読んだが、交渉とエビデンスという言葉が恐ろしい頻度で出てきて、なんとなく読者の精気を吸い取っている気がする。これでカナダの学生も勉強に集中したに違いない。とはいえ、ある意味、イメージ通りの結果が語られているところは面白い。レズビアンカップルは経済的には堅実だとか、リスク回避の人間はセックスを忌避するようになるのでリスクを大して気にしない人間同士がより夜ってしまうようになって性病が増えるとか…、どうもこういうエビデンス人間科学が、「ああやっぱりそうなんだ、エスタブリッシュ死ね」「ああそうなんだ同性愛者は迫害されろ」とかいう意見を生み出すところがあるのではと思うのである。こんな科学的?なあれを知らなければ、目の前の相手や、ネット上の相手への妄想で楽しんだり苦しんだりしながら陳腐な自分流の物語で自分を慰めることが出来るのに、それを科学は、本来政治があつかうような材料だけを与えてしまうのではなかろうか。まるで社会や政治が変わらなければ自分がどうにかならないような……。