★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

出たとたんに読んだ珍しい本

2017-05-30 21:34:37 | 文学


昨年度、連合赤軍事件の小説のいくつかについて講義したので、桐野夏生の『夜の谷を行く』が出た時にはすぐさま買って読んだ。初出でも読んでいたんだが、最後まで読み切れなかったんでね…

いままで桐野夏生をあまり読んでなくて申し訳ありませんでした。なかなかものを考えさせるじゃないか、ありがとうございます。

連合赤軍の小説は、小説家が頑張って説明しようとしてかどうかは分からんが、時間や空間が滞留したような感じになってしまうのだが、これは逆効果だったのである。この小説みたいに、日常生活のテンポが徹底的に描かれたあとで、回想されなければならないのだ。あの事件は、いろんな意味でどんづまりの事件だったのではない。明らかに我々の日常のど真ん中で起きた事件だからである。それをこの小説はみごとにやってのけているように感じられた。