昨年度、連合赤軍事件の小説のいくつかについて講義したので、桐野夏生の『夜の谷を行く』が出た時にはすぐさま買って読んだ。初出でも読んでいたんだが、最後まで読み切れなかったんでね…
いままで桐野夏生をあまり読んでなくて申し訳ありませんでした。なかなかものを考えさせるじゃないか、ありがとうございます。
連合赤軍の小説は、小説家が頑張って説明しようとしてかどうかは分からんが、時間や空間が滞留したような感じになってしまうのだが、これは逆効果だったのである。この小説みたいに、日常生活のテンポが徹底的に描かれたあとで、回想されなければならないのだ。あの事件は、いろんな意味でどんづまりの事件だったのではない。明らかに我々の日常のど真ん中で起きた事件だからである。それをこの小説はみごとにやってのけているように感じられた。