虫の生命を助くるは
神の心を持った人
みんな仕えよ神様に
御礼申せよ神様に
こんな歌がどこからともなく晴れやかに聞こえて来ましたので、勘太郎は不思議に思って眼を開きますと、自分はいつの間にか見事な寝台の上に寝かされて、傍には大勢の美しい天女が寄ってたかって介抱しています。勘太郎は又夢を見ているなと思って眼を閉じようとしますと、不図自分の枕元にこの間夢で見たお姫様がニッコリ笑って立っているのに気が付きました。
勘太郎は驚いてはね起きますと、どうでしょう。自分はいつの間にか髪から髯まで真白になって、神様のような白い大きな着物を着ています。それと一所に気持ちまでも神々しく清らかになって、今までの苦しかった事も悲しかった事もすっかり忘れてしまいました。
「そら、神様のお眼ざめだ」
と大勢の天女たちは皆一時にひれ伏しました。
――夢野久作「虫の生命」
NHKで、宗教二世のドラマがやってたので、後半をみた。明らかにバッドエンドである。ここからが地獄なのだ。神を信じるには、我々は媒介が多すぎる。家族とか教祖とかがいるから信じられない。そして、自分が神様になればよい、というわけにはなかなかいかない。