それなりに忙しかった本日。9時に家を出て10時から講座、12時から頭があまりにぼさぼさになったので1000円の調髪、14時から川崎に出向いて友人の見舞い、17時にかかりつけの病院で薬の処方。18時に帰宅して友人にいくつかの電話連絡、そして残りが少なくなってしまった名刺の印刷‥。今晩と明日は少しのんびりとしたいと思っている。
ということで、ガブリエル・フォーレ(1845-1924)のヴァイオリン・ソナタ第1番(作品13)・第2番(作品108)を聞いている。
ヴァイオリンはシュロモ・ミンツ、ピアノはイエフム・ブロンフマン。1986年の録音。
作品番号からも類推できるように初期作品としての第1番と晩年の第2番、なかなか興味深い聴き比べが出来る。第1番は1876年、フォーレが31歳の時の作品。歌曲・ピアノ曲から初めての室内楽曲ということである。第2番よりも演奏される機会が多いという。第2番は第1番から41年後の1917年に作られている。晩年の室内楽曲の一連の作品の始まりと位置づけられている。
とここまで記載してから今年の8月14日にこのCDを取り上げて次のように記載しているのを思い出した。再掲してみると、
フォーレ(1845-1924)のレクイエムのCDを棚から出したときにこのバイオリンソナタ第1番、第2番を購入していたことを思い出した。録音は1986年に行われ、日本では1988年に発売されたCDだから翌年が翌々年あたりに購入しているはずだ。多分2~3回は聴いた記憶があるが、そのままになっていた。
バイオリンはシェロモ・ミンツ、ピアノはイエフィム・ブロンフマン。ミンツは名が通っているが、この録音時は若干28歳。10代初めから演奏活動を始めたという経歴だが、透明で、と低音から高音まで一貫した音質に惹かれる。パガニーニの「24の株リース」が若い頃から評判を取っているらしい。またビオラ奏者としても活躍しているらしい。この2曲、今朝からかけてみて、「こんなに美しい曲をどうして忘れたようにしていたのかな?」と不思議に思った。バイオリンもさることながら、ピアノが美しい。
第1番は1876年31歳の時の作品。ピアノ曲・歌曲を作っていたフォーレが室内楽に初めて取り組んだ作品とのことである。
第1楽章はバイオリンの第2主題が印象的で強調されている。シンコペーションの長い旋律が美しい。第2楽章は甘い歌曲のように歌いだす。静かなピアノの高音部の分散和音風の第一主題と低音でうねるように歌いだすバイオリンが次第に高音にのぼっていく内にピアノからバイオリンに主導権が移っていく書法が美しい。第3楽章は早いパッセージとゆるやかで穏やかな美しい旋律の対比が面白い。第4楽章は何回か繰り返して聞いたがどれが主題か私にはわからないうちにはやいパッセージの内に終わる不思議な曲に聞こえる。つい何度も聴いてしまう曲であった。
第2番は、フォーレが71歳の1917年に作られている。第1番から40年以上たっている。晩年の作品である。1917年というと第一次世界大戦最中の作品であるが、曲想からはその戦争の余波は感じられない。しかし全体的に第1番よりは暗い印象、あるいは重厚な印象がある。3つの楽章からなるが、聴いているだけでは各楽章ごとの第1主題、第2主題などの区別が判然としない。これは聞いている私の所為でもある。フランスの音楽に耳が慣れていないということかもしれない。旋律の透明な明るさだけが耳に残る。
第1楽章は、最後の旋律が執拗に重ね合わさるように高揚していくところが私は気に入った。第3楽章はフォーレ特有のシンコペーションの旋律が執拗に繰り返される。解説では第1楽章の主題も回帰する(循環形式というそうである)とのことであるが、幾度か聴いたがわからなかった。しかしこれは演奏する方も聴く方も緊張感の持続が求められるような曲である。疲れるというのではなく、じっくり聴くことを強制する力があるようだ。
ちなみにドイツのブラームスのバイオリンソナタは2年後の1878年(ブラームス45歳)にできている。ちなみにこの年は36歳のチャイコフスキーがバイオリン協奏曲を完成した年である。ドイツ、ロシア、そしてフランス風の曲の違いにあらためて驚いた。
これ以上付け加えることもない。