ブラームスのチェロソナタ第1番(作品38)、第2番(作品99)はチェロの音を存分に聴かせてくれる曲である。私はとても気に入っている。
この堤剛とサヴァリッシュの組合せのCDは録音が1978年5月というから、CDが普及し始めて間もない頃の発売だと思う。さらに録音場所は東京サントリーホールとなっている。私としてもかなり早い時期に購入したものである。
第1番は1862年から65年にかけて作られている。ブラームス29歳から32歳の頃である。ドイツレクイエムの作曲(1868年)に先駆けた年でもあり、弦楽六重奏局第2番やピアノ五重奏曲、ホルン三重奏曲などが同時期に作られている。
チェロの厚味のある低音が存分に聞くことができる。チェロという楽器の低音の魅力が味わえる。当初は4楽章形式をめざしていたらしいが、緩徐楽章が省かれている。省かれた緩徐楽章が第2番の第2楽章として18年後に復活したという見解もある。緩徐楽章が無い分、第1番の第1楽章は13分40秒と長大である。
第2楽章は旋律に少し高音があり、相対的に明るい感じもするが、基本的にブラームス特有の憂鬱な感情が前面に出ている。
第2番は第1番に比べて多少は音が高く、明るい感じもする。ただし情熱的なという言葉がぴったりな、強さを感じる。
交響曲第4番が作曲された翌年の1886年、ブラームス53歳の時の作品である。この年はバイオリンソナタ第2番、ピアノ三重奏曲第3番、翌年にはバイオリンとチェロのための二重協奏曲も出来ている。
第1番よりさらにチェロの響きが厚みを増しているように思える。そして艶やかである。この艶やかに聴こえるのは堤剛という方のチェロの音の特質だと思っている。
このCDもレコードならばすり切れてしまうほどに聞いている。