先に掲載したゴッホ展を見た後、常設展を見て回った。事前の調査では松本竣介、靉光やパウル・クレーなどの収蔵品がある。また洲之内コレクションが寄贈されたとある。
ゴッホ展を見終わってから1階の展示室に入ろうとすると小企画展ということで、新収蔵のルオー版画集『ミセレーレ』を全作品展示とある。うれしくなって思わずニヤリとしたまま、会場にはいる。
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会場ではいかにもルオーらしい太い線で書かれた人物像が並んでいる。「宮城県美術館のコレクションに、ジョルジュ・ルオーの版画集『ミセレーレ』が加わりました。優れた版画家でもあったルオーは、代表作と言えるこの作品で、人間の苦悩と希望を様々な形で表現しました。多彩な銅版画技法が駆使された、ルオーならではの重厚な絵肌も魅力です。初めての展示となる今回は、全58点を一堂にご覧いただきます」とある。
この版画集もルオーの絵画と共通する太い輪郭線が特徴で、いかにもルオー然としている。同時にモノクロームの陰翳が「祈り」という原初的な行為を人間の存在の深い闇の底で捕らえているというような、不思議な感覚に襲われる。「祈り」という行為が、自然や自分の周囲の環境に対する絶望、自分の存在に対する不信に起因するのだと思うが、そんな祈りの原初的な発端を捉えているように思う。
一枚一枚の絵に長い題が描かれているが、それはいかにも宗教者然としたルオーの言葉だが、それにとらわれずに版画だけから受ける印象がすでに「祈り」なのだ。その実感こそがこの版画集の魅力なのだろう。
我々にはわからない、理解できないものもいくつかある。キリストや救済に対する感覚の違い、文化や伝統の違いなどの要素もあるが、それでも惹かれる多くの作品が、そんな「祈り」の普遍性を示していないだろうか。
さらに絵画と共通する太い線は、あのルオーの不思議な色使いを髣髴とさせ、豊かな色彩を暗示してしまう不思議な感覚に襲われた。
そして、次のコーナーがこの美術館のコレクション展示の今年度第一期の展示、同時に洲之内コレクションのコーナーもある。
これらあわせて75点もある。カンディンスキーの「活気ある安定」など4点、パウルクレーの「Ph博士の診療装置」など6点、日本の画家では高橋由一が3点、藤田嗣治の「横たわる貴婦人」、長谷川潾二郎が「猫」を含む3点、靉光の「鳥」等々ととても豪華である。
そして記憶に新しい松本竣介が「画家の像」「郊外」「人」の3点に洲之内コレクションから「ニコライ堂」「白い建物」の2点、あわせて5点も展示してある。すぐ近くにこの5点があるので、松本竣介特集のような気分すら味わえる。これらが並ぶと「画家の像」がひと際大きく見える。やはり代表作なのだろう。凛々しい顔に見る人もいるし、倣岸不遜な顔に見る人もいるかもしれないが、横のおびえるように後ろを振り向く女性や女の子の顔が印象的だ。
その他三岸光太郎や佐藤哲三(2点)など懐かしくもあり、刺激的な「コレクション展」である。こんなに豊富なコレクションのある県立の美術館もあまりないような気もする。
松本竣介 白い建物(1942年) 洲之内コレクション
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靉光 鳥(1940年)
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そとは冷たい雨が降り続いていたが、ゴッホ展と合わせてとても充実した半日となった。
ゴッホ展を見終わってから1階の展示室に入ろうとすると小企画展ということで、新収蔵のルオー版画集『ミセレーレ』を全作品展示とある。うれしくなって思わずニヤリとしたまま、会場にはいる。
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会場ではいかにもルオーらしい太い線で書かれた人物像が並んでいる。「宮城県美術館のコレクションに、ジョルジュ・ルオーの版画集『ミセレーレ』が加わりました。優れた版画家でもあったルオーは、代表作と言えるこの作品で、人間の苦悩と希望を様々な形で表現しました。多彩な銅版画技法が駆使された、ルオーならではの重厚な絵肌も魅力です。初めての展示となる今回は、全58点を一堂にご覧いただきます」とある。
この版画集もルオーの絵画と共通する太い輪郭線が特徴で、いかにもルオー然としている。同時にモノクロームの陰翳が「祈り」という原初的な行為を人間の存在の深い闇の底で捕らえているというような、不思議な感覚に襲われる。「祈り」という行為が、自然や自分の周囲の環境に対する絶望、自分の存在に対する不信に起因するのだと思うが、そんな祈りの原初的な発端を捉えているように思う。
一枚一枚の絵に長い題が描かれているが、それはいかにも宗教者然としたルオーの言葉だが、それにとらわれずに版画だけから受ける印象がすでに「祈り」なのだ。その実感こそがこの版画集の魅力なのだろう。
我々にはわからない、理解できないものもいくつかある。キリストや救済に対する感覚の違い、文化や伝統の違いなどの要素もあるが、それでも惹かれる多くの作品が、そんな「祈り」の普遍性を示していないだろうか。
さらに絵画と共通する太い線は、あのルオーの不思議な色使いを髣髴とさせ、豊かな色彩を暗示してしまう不思議な感覚に襲われた。
そして、次のコーナーがこの美術館のコレクション展示の今年度第一期の展示、同時に洲之内コレクションのコーナーもある。
これらあわせて75点もある。カンディンスキーの「活気ある安定」など4点、パウルクレーの「Ph博士の診療装置」など6点、日本の画家では高橋由一が3点、藤田嗣治の「横たわる貴婦人」、長谷川潾二郎が「猫」を含む3点、靉光の「鳥」等々ととても豪華である。
そして記憶に新しい松本竣介が「画家の像」「郊外」「人」の3点に洲之内コレクションから「ニコライ堂」「白い建物」の2点、あわせて5点も展示してある。すぐ近くにこの5点があるので、松本竣介特集のような気分すら味わえる。これらが並ぶと「画家の像」がひと際大きく見える。やはり代表作なのだろう。凛々しい顔に見る人もいるし、倣岸不遜な顔に見る人もいるかもしれないが、横のおびえるように後ろを振り向く女性や女の子の顔が印象的だ。
その他三岸光太郎や佐藤哲三(2点)など懐かしくもあり、刺激的な「コレクション展」である。こんなに豊富なコレクションのある県立の美術館もあまりないような気もする。
松本竣介 白い建物(1942年) 洲之内コレクション
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靉光 鳥(1940年)
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そとは冷たい雨が降り続いていたが、ゴッホ展と合わせてとても充実した半日となった。