メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

岩波少年文庫 3120 フランバーズ屋敷の人びと 5 愛ふたたび 下 K.M.ペイトン/作 岩波書店

2024-10-24 19:25:58 | 
1986年初版 1995年 第6刷 掛川恭子/訳 K.M.ペイトン/絵

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長いフランバーズ屋敷の物語もこれで最終章
目の前で生き生きと動いていたさまざまな人たちは本の中に戻り
私の感動もすぐに記憶のかなたへ行ってしまうと思うと切なくなる
素晴らしい物語を読んだ後はいつもそんな気持ちになる

マークがとんでもない体調にも関わらず馬に乗ったり
酒を飲んで自分の体を労らないことにずっと疑問を感じていたけれども
父から虐待的な体罰を受けていたことを思い出して
自分で自分の体を大切に思わない要因がやっと腑に落ちた

最後、クリスチナをいつまでも見送るディックの立ち姿と
大好きな馬で駆けるヒロインのシーンも胸をしめつけられた


【内容抜粋メモ】

登場人物

フランバーズ屋敷
クリスチナ・パーソンズ
ディック・ライト 以前屋敷で馬丁をしていた 現夫
イザベル ウィルとの間の娘
ティジー(トーマス・マーク) マークとバイオレットの子ども

ラッセル 亡父 亡妻イザベル
マーク 長男
ドロシー・ソーンダーズ ホテル「ブドウのふさ亭」経営者の娘 マークの妻
ウィリアム 元夫 戦死
メアリー 女中頭
ファウラー
ウィルヘルム ドイツ人捕虜 農夫
ロージー・ディーキン 父シメオンはディックの父的存在
クララ・ディーキン 未亡人 乳母
グレイスおば 洋裁で生計を立てている
ジェリーとファーガス マークの戦友




ファウラーは呼び戻される
乳母としてクララが雇われる

戦争の終結とともに夕食会などが復活したが、ディックは頑なに出席しようとしない
保守的なディックはクリスチナに屋敷のきりもりだけをしていてほしいと願う
クリスチナ:ディック、少しは楽しまなくては 人生は仕事だけじゃないのよ

ファーガスはダーモット邸に住んで車の修理をし、マークとともにトラクターなどを売る
2人はカーレースに夢中になり、ファーガスはクリスチナにも車の運転を教える
カーレースは復員してきた男たちの間で流行りはじめていた

ドロシーは経済的にも性格的にも自立していて、結婚してもそれは変わらず
子どもを産まない決断に関してマークとすさまじいケンカをしたが信念は変えない

ダーモット邸に移り、新居祝いパーティーには出席したディック

クリスチナとドロシーは子どもを連れて、男抜きでフランスで休暇を過ごす

ドロシー:
あなたは私の夫を愛していて、彼もあなたを愛している
そして私は自分のことしか愛していない

みんなでウィルの墓参りをする



トムに家庭教師を見つけるためにダーモット邸を訪ねるクリスチナ
帰りに馬車に乗ったクリスチナはマークの車とスピードを競って
自転車に乗った少年が飛び出してきたのをよけて生垣に突っ込んでしまう

ディックとの息子ハリーを身ごもっていて、異常な痛みと戦いながら
クリスチナは「マーク、行かないで!」とわめくのを聞くディックとドロシー

クリスチナの意識が戻り、ハリーが亡くなったと知る
ドロシー:人間は驚くほど回復力のある生き物よ

ディックは自分の後を継いでくれるはずのハリーの誕生にすべてを賭けていたが叶わず
またディーキン家を訪ねて慰めてもらう

ロージーが来て、2人の事故を見ていた少年から目撃情報を聞いたと話す
2人は周囲への配慮から、クリスチナが誤って生垣に突っ込んだとウソをついていたが
そのウソもバレ、ディックはショックのうちにロージーにキスする

後日、マークはドロシーが止めるのも構わず、ディックに謝りに来る
ディックはマークの腹以外を選んで殴る

マーク:
おまえの女房には少なくともお前の子を産む気があるが、こっちは終身刑だ
楽しめばいいだろ! 素晴らしい屋敷もクリスチナも こんな贅沢はないぞ

ディックはマークの意外な告白を聞いて、初めて好意と憐れみを感じる



子どもを失って3か月の間、クリスチナはずっと屋敷に引きこもる
ファーガスがホテルでのお茶に誘い出す
ファーガス:戦争が悪いのです

ファーガスは半分吹き飛んだ顔のために、ホテルのレストランに来るのもためらっていたこと
慕う女性がいることを明かす

ファーガス:
マークはあなたを愛しています
ディックにはよそに女がいると思います
あなたが罪の意識にさいなまれる必要はありません
あなたとディックには共通点がほとんどありません
悪いのがぜんぶ自分だと思うのは酷というものです

ファーガスはクリスチナを狩猟舞踏会とカーレースに誘う



もうクリスチナを愛していないディックは、フランバーズ屋敷から一番離れた場所にある
農場の小屋を再建し、子どもたちの乳母をするクララに母ネルの面影を映して惹かれる
クララは8年の結婚生活を送り、夫が死んで4年になる

狩猟舞踏会に出ると、ウィルがいないほかはすべてが昔のまま
ディックにもう負い目はない 好きなことをしよう
マークと一緒にキツネ狩りを楽しむクリスチナ
マークは農場の小屋に寄った際、ディックとクララが暮らしているのを知る



ヒルクライムのカーレース
女性ドライバーはほぼいない
雨でぬかるんだコースでスピードを上げて、泥をはねあげながらカーブを曲がり
なんとかゴールするクリスチナ

そこでファーガスの恋人で修道院附属の女学校の校長ヘレンを紹介される

レース後、マークはクリスチナを農場の小屋に連れて行く
クララと食事しているディックはこれまで見たことないほど楽しそうに喋っていた
マークはディックに3度目のケンカをしかけ、2人はぼろぼろになるまでやりあう



ドロシー:
ディックとは離婚しなくてはならないわね
私もマークと別れるわ
愛している男性に会うためよ

クリスチナはディックと離婚し、引き続き農場管理人の仕事をしてもらう
フランバーズ屋敷の女主人に戻り、クララをクビにしたことで
子育ても自分でできるし、農場にトラクターを導入することもできる

マークとファーガスの所で秘書も始める

ドロシーは下院議員ジムを紹介する
亡妻の姉妹との結婚条例を修正したのと同様に、亡夫の兄弟との結婚も適用しようとしていると話す
教会は猛反対しているが、戦争で大勢の若い男が死んだため、法律の修正が求められている

ドロシー:
悪い思い出ばかりのフランバーズ屋敷を売ってダーモット邸に住めばいい
ファーガスとヘレンが結婚して住めば、学校にするかもしれない
私は看護の仕事に戻ろうかと思っている

クリスチナはその話をディックにも伝える
クリスチナ:マークは私と結婚する
ディック:昔の思い出のために、もう一度キスしてくれ それで終わりにしよう

クリスチナは馬で駆け、振り向くとディックがこちらを見たまま立っているのが見える
ディックはチャンスは五分五分 性分を変えるわけにはいかない と言った

クリスチナ:夕陽が沈まないうちに厩に到着できたら、私は幸せになれる



訳者あとがき
本作を読んで、手紙をくれた若い方のほとんどが
クリスチナがディックは優しいがマークは横暴だと非難したため
クリスチナがマークと結婚するのが気に入らない人も多いのではないかと想像する

クリスチナとディックの暮らしがぎくしゃくした最大の原因は
人生に対する考え方が離れていたこと

“育ちが違う”ことは、日本とイギリスとでだいぶ捉え方が異なる
イギリスではひと言、ふた言話しただけで、どの階級か分かる
社会的階級が違うと、軍隊内の階級も異なり、暮らしぶりも違ってくる


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岩波少年文庫 3119 フランバーズ屋敷の人びと 4 愛ふたたび 上 K.M.ペイトン/作 岩波書店

2024-10-23 15:22:42 | 
1986年初版 1987年 第2刷 掛川恭子/訳 K.M.ペイトン/絵

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こんなに夢中になって読むのは、大昔からある男女の三角関係
♪けんかをやめて~ って話だからだな、とふと冷静になって思った
私たち読者も下世話な噂話で盛り上がってる農家のおくさんたちと同じかも

ものすごい長い年月が経っているような気がしても
ヒロインはまだ22歳、ディックも25歳って若さなのにビックリ/驚

それにあんなに酷いケンカをしても、まだ惹き付けるほどのマークの魅力ってのが
私には分からないな


【内容抜粋メモ】

登場人物

フランバーズ屋敷
クリスチナ・パーソンズ 22歳
ディック・ライト 以前屋敷で馬丁をしていた現夫 25歳
イザベル ウィルとの間の娘 1歳
ティジー(トーマス・マーク) マークとバイオレットの子ども

ラッセル 亡父 亡妻イザベル
マーク 長男
ドロシー・ソーンダーズ ホテル「ブドウのふさ亭」経営者の娘 マークの妻
ウィリアム 元夫 戦死
メアリー 女中頭
ファウラー
ウィルヘルム ドイツ人捕虜 農夫
ロージー・ディーキン 父シメオンはディックの父的存在
グレイスおば 洋裁で生計を立てている
ジェリーとファーガス マークの戦友



クリスチナはマークの私生児を養子にしたことで保守的な人々の反感を買ったが
元使用人のディックと再婚すると教会で発表されると、さらに噂の的になる

戦争は長引き、ずっと徴兵猶予を受けていたマスターズの長男も出兵した

グレイス叔母に結婚の報告に行くと、クリスチナが百姓の妻になれないだろうと予言する

グレイス叔母:
兄弟が死んでも、その妻とは結婚できない法律
あなたは家を守るタイプじゃない
安定した暮らしに退屈するでしょう

クリスチナは3人を3様に愛していることに気づく

質素な結婚式の3日後、ドロシーからマークの生命が危ういとの電報が届く
クリスチナ:大丈夫、助かるわ! そうでなければ、生きていけない!



6人の兵士の中に爆弾が落ちて、マークだけが奇跡的に助け出されたが
腹部にひどい傷を負って、生きているのがフシギなほど

メアリーとファウラーはディックが主人となってもまだ馬ていのように扱っている
メアリー:まっぴらごめんですよ 馬番の・・・

それでもフランバーズ屋敷の歴史であるメアリーとファウラーを辞めさせることは考えられないクリスチナ
メアリーの負担を軽くするために、エイミーを雇う



親友ドロシーが休暇で訪れる
従軍看護婦でやせ細っていたが、フランバーズ屋敷で徐々に元気を取り戻す
ドロシー:結婚すべきじゃなかった 自分が飽きっぽいのは分かってるから怖いの

ディックはクリスチナのためにスイートブライアを買い戻す
この馬のためにディックがクビになった思い出がよみがえる
スイートブライアは妊娠していて、子馬はサラブレッドの血統を引いてると分かる

ディック:真剣に額に汗する匂いが好きなのがあなたのいいところだ

クリスチナ:
働く人が好き ウィルはオイルの匂い
ドロシーはクレゾールの匂いがした



マークを見舞うと、息が苦しい、食べられない、眠れないと悲惨な様子
病院は傷ついた男であふれていて、少しでも動けるようになれば保養所に行かなければならない

従軍看護婦は常に人手不足で、ドロシーは見舞いにも来れず
マークはフランバーズ屋敷で療養したいと言うが断わり続けるクリスチナ

マーク:もっとよくなったら家に帰りたいよ
クリスチナ:あなたには家はないでしょ

マークはクリスチナに対する気持ちが全然変わっていないことをあけすけに言う



ディックはクリスチナに農場を手伝わせず、家の監督をしてもらいたがるが
裁縫も料理も苦手なクリスチナは何もすることがなく手持ち無沙汰となり
叔母の予言が頭をよぎる
ディック:目が覚めるとなにもかも消えているのではないかと思ってしまう

マスターズ夫妻を夕食に招いて、ディックをなんとか説得して社交界のルールを教える
なんとかその場を取り繕っていると、マークがひどい体調のまま運びこまれてくる

クリスチナはひと晩だけ預かるつもりで元いた部屋に寝かせるが
その日から2時間ごとに粥を飲ませ、体を拭き、下の世話をする看病が始まる

マークは時々、爆弾のショックで幻覚を見て怒鳴る
腹のひどい傷は見るに堪えられず、ディックに泣いて頼む

ドロシーに電報を打つと、チフスに感染したから数か月は隔離状態と分かり絶望する
クリスチナはマークの世話で手一杯で、ディックの食事の用意もままならない
メアリーとファウラーは元主人の命令を聞くことに慣れていて、ディックを無視する

ディックはクリスチナの立場なら乳母がいて当然だと寡婦のクララを雇う
父シメオン・ディーキンはずっと父代わりの存在で
農場を手伝ってくれているロージーは昔からディックが好きだった気持ちを秘めている
ディーキン家に行くといつも心が安らぐのを感じるディック

マーク:ボクの目を見て愛していないと言ってごらん
弱っているマークに同情し、ウィルに似た黒い髪と目に魅了される気持ちをコントロールできないクリスチナ
回復したドロシーが屋敷に来て、マークと同じ寝室に寝ることに嫉妬を感じて動揺する



マークの戦友ジェリーとファーガスがいきなりやってきて、ジャズを演奏し、ダンスする
ファーガスは顔半分に大怪我を負って、目がない状態
ウィルと一時期一緒に飛行機を飛ばしていた

マーク:彼女を愛していないんだ
ドロシー:夫に会うのが不安

ディック:雇われていた時のほうがまだましな待遇を受けていた

ファウラーはクララに夢中になり、ディックに言われた仕事をサボるようになる
ディックはマークへの嫉妬心からフェザントを売り払う
ドロシー:自分がボスだというところを見せようとしているのよ

ディック:マークに嫉妬し、傷つけたかった
クリスチナ:あなたのすべてを愛しているのよ!



マークは保養所に行く代わりに、ダーモット氏の家を買い
ふたたびみんなで狩猟するために、マリゴールドに子犬を産ませる

マークは子どもを欲しがっているが、ドロシーは産まないと決めている
ドロシー:自由にしたいし、楽しみたい 自分の性格を変えるのは手遅れ

ファーガスらがまた屋敷を訪ねて、ファウラーが酒の用意をしているのを見てディックが激怒し
ファウラーをクビにしないのなら、自分が出て行くと言う

ディック:
自分は身を粉にして働いているのに、親から譲られた奴らは浪費するばかりで感謝もしない
人生において大切なのは労働だ
ウィルは働くことを知っていた

マークとドロシーは翌朝、屋敷を出て、ダーモット氏の家に越すまでホテルで泊まる
クリスチナはディックに戻ってほしいと手紙を書き、ディックは帰ってくる






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岩波少年文庫 3118 フランバース屋敷の人びと 3 めぐりくる夏 K.M.ペイトン/作 岩波書店

2024-10-22 17:21:30 | 
1981年初版 1989年 第7刷 掛川恭子/訳 ビクター・G・アンブラス/挿絵

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マークとウィルがいなくなって
周囲に青年がいなくなったとはいえ
トーマスに屋敷を継がせるとなると
マークの正式の息子と認めて、屋敷も畑も全部譲ることになるのを
クリスチナは分かってたのかな?と疑問に思った

戦争はそうしたあらゆる矛盾やカオスもありにして
因襲をも壊す効果があるのかもしれないな

今でもこうした地主が小作人を支配する階級で
遊んで暮らしている人々っているのかな?
ピラミッド型の考えも古い

クリスチナは叔母らの世代の考えが古臭いと言うけれども
彼女の言動も家や階級、女性蔑視な考えに縛られていて時にイライラした



【内容抜粋メモ】


登場人物

フランバーズ屋敷
クリスチナ・パーソンズ 21歳
イザベル ウィルとの間の娘
ティジー(トーマス・マーク) マークとバイオレットの子ども
ディック 以前屋敷で馬丁をしていた

ラッセル 亡父 亡妻イザベル
マーク 長男
ウィリアム 次男
メアリー 女中頭
ファウラー
スタンレーとハリー 農夫
ウィルヘルム ドイツ人捕虜
グレイスおば 洋裁で生計を立てている
ドロシー・ソーンダーズ ホテル「ブドウのふさ亭」経営者の娘



あわれな飛行士が死んでいく
あるよく晴れた夏の夕べ
バラバラ死体をかたづけようと
仲間がまわりをとりかこむ


ウィリアムはフランスの牧草畑に墜落して戦死した







失意に沈むクリスチナはフランバーズ屋敷に帰る
屋敷に残ったのはメアリーとファウラーだけ
馬はおいぼれのペパーのみ残して軍に持っていかれた
ルーカスの猟犬もぜんぶ手放した

クリスチナは21歳になり、ようやく父の財産を手に入れたが
屋敷の周囲はジャングルと化し、窓にはツタがびっしりはびこる

村に残ったのは老人、子ども、召集されなかった者だけ
女たちは軍需工場で働いている

クリスチナ:馬は買える でも人間を買うことはできないのね

ウィルはいつも幸せだった記憶しかないのが幸いだった
体調が悪いと思っていたら妊娠していると分かる
ポーター医師:時が癒すことのできないものはない







クリスチナ:フランバーズ屋敷を生き返らせなくてはならないわ
クリスチナは農場を採算のとれるものにすると心に誓う

なんとか見つけてきた2人の少年
スタンレーは監視してないとすぐにサボるし
ハリーは精神薄弱で仕事が遅い







クリスチナはファウラーとともに競売で作業馬を買い
そこで見つけた荒れ馬フェザントを高値で買う
医者に売ったウッドピジョンを買い戻す

以前、ラッセル家の猟犬だったマリゴールドを飼いはじめる







マスターズ家は3人の息子がいるが
農場の仕事に就いているからという理由で
召集を不正に延ばしてもらっている

クリスチナはバイオレットの家を訪ねて、マークとの子どもを養子にする
バイオレットは2度結婚して、女児2人と赤ん坊を抱えて、変わらず貧しかったため
クリスチナの500ポンド小切手を受け取り、息子ティジーを差し出す











ラッセルの血を引いたティジーはフランバーズ屋敷の馬に夢中になり
フェザントに乗りたがる

ティジーの話からディックが戦争で負傷して帰ってきていると知り
農場の管理人としてまた働いてもらいたいと頼む

ディックはイェペルで肺を撃ち抜かれ、結核を患っているため
以前のような力仕事はムリだといったんは断るが半年後に引き受ける







戦時農業協会に頼んだドイツ人捕虜から1人しか連れて来れないと言われる
ウィルヘルムはドイツ語しか話せないが、元農家で使えると分かる
ディックは病院で学んだドイツ語でウィルヘルムと意思疎通を図る








クリスチナは女児を産み、ウィルとマークの母の名をとってイザベルと名付ける

飛行機の揺籃期をともに過ごしたドロシーはフランスで従軍看護婦となり
過酷な日々を過ごしながら、行方不明のマークからの連絡を待っている

スタンレーにも召集がかかり、刈り入れのため延長するが、その後戦地に赴く

ある日、ドイツの戦闘機が畑に落ちて、1人は助かるが、もう1人は即死
ウィリアムはこうして死んだのだと改めて目の当たりにしたクリスチナは
ずっと死から目を背けていたが、ウィルからの手紙を読み直す








爆撃による破壊跡の写真を撮りに行って射撃され墜落したため、遺言もなかった
戦争は奴隷も支配者も平等に殺した

ウィルは国のために戦うことを誇りに思っていたが、それが愚かだと悟る
ウィルに会いたい! クリスチナは号泣する







グレイス叔母が屋敷に来ると手紙をよこした後に駅に着くという電報をもらい
叔母を迎えに行ったクリスチナの前に現れたのはマーク!
ずっと捕虜になっていたため手紙も書けずに行方不明扱いされていた







屋敷に戻り、バイオレットとの間の息子ティジーを紹介されてショックを受けるが
持前ののんきさで2人は意気投合する

ディックが農場を管理していることにきつい言葉を吐くマーク
マーク:奴はずっと君に惚れてたんだ

マークの下では働けないと言うディックをなんとか止める

ラッセル家の弁護士パーキンズを呼び、法律上、クリスチナには何の所有権もないと分かる
マークは屋敷が欲しいなら自分と結婚することだと改めて決断を迫るが
クリスチナの気持ちは変わらない







マークはティジーにフェザントに乗ることを許したため
ティジーは落馬して頭を打つ

ポーター医師から安静にするよう言われたのに
マークは明日の朝、またフェザントに乗るよう強要したため
ティジーはマークに恐れを抱く

平和な日々が一気に壊され、ディックの存在がいかに大きいかに気づく
ディック:愛しています 15の時からずっと

クリスチナはディックを愛していることをマークに伝える
クリスチナ:朝になったら農場の小屋へ行くわ







ティジーは屋敷に残りたいばかりに、ディックのいる農場の小屋に火をつける
クリスチナが気づいた時にはもう炎に包まれて、ディックは馬を連れだしている








今年の収穫物に燃え移る前に、小屋ごと壊そうとマークも村人も総出で加わる
クリスチナもバケツレースに加わり、消防隊も来て、ようやく消火する

マークは出火もディックのせいにするが、ティジーが犯人と分かり、尻にムチ打つ
父からムチ打たれた時とまったく同じ



弁護士パーキンズは叔父ラッセルが屋敷を抵当にして多額の借金をしたから
あるのは土地と農場の小屋だけだと明かす

パーキンズ:働いて稼ぐつもりがないなら、屋敷を売るより方法はありません
マーク:くだらん百姓にだけはならんよ
クリスチナ:私が買うわ



ドロシーがフランバーズ屋敷を訪ねる
いろんな経験を積んで、さらに成熟した魅力にあふれ、マークは惹かれる

2人は翌朝一緒にフランスに発ち、その後結婚した
2人とも美しく、衝動的で、横柄で、わがままなのが似ていた

マーク:
戦争が終われば、ドロシーのホテルに住むことができるし
なにより最高の狩猟場なのが気に入った
今でも君と結婚したいが、きっと忘れられると思う

クリスチナ:私たちは考え方も興味も違う

マーク:
君みたいな馬の乗り方をする女を見たことがない
それで君を愛しているのさ

ティジーは君のものだ 僕は叔父さんになろう
ディックがあの子の父親になればいい

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岩波少年文庫 3117 フランバーズ屋敷の人びと 2 雲のはて K.M.ペイトン/作 岩波書店

2024-10-21 17:55:07 | 
1981年初版 1989年 第7刷 掛川恭子/訳 ビクター・G・アンブラス/挿絵

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1を読んで少し間が空いてしまったけれども、読み始めたらすぐに没入して一気読み
飛行機が人々の移動手段として使われ始めた頃の命知らずな感じが伝わる章だった
女性の参政権について議論され、女性の自立、解放が徐々に見られるのも興味深い

そして、突然、物語は第一次世界大戦に入っていく


【内容抜粋メモ】

登場人物
クリスチナ・パーソンズ
グレイスおば 洋裁で生計を立てている

フランバーズ屋敷
ラッセル 父 亡妻イザベル
マーク 長男
ウィリアム 次男
メアリー 女中頭

ダーモット氏
ジョー 整備士

パーシー・アダムズ 銀雲飛行学校の経営者
サンディ 指導員
ドロシー・ソーンダーズ ホテル「ブドウのふさ亭」経営者の娘 飛行学校に通う
カーター夫人 ホテル「ブドウのふさ亭」女中頭



クリスチナはバタシーのグレイス叔母にウィリアムと駆け落ちしてきたと話す

ウィリアムが飛行機に関係した仕事を探すまでの間
クリスチナは叔母の家で洋裁の仕事を手伝うが
ひどいホームシックになる









不自由な足のせいで面接を次々断られたウィリアム
飛行機の設計図も実際に飛ぶことを証明できないことには進まないが
それには資金がいる

銀雲飛行学校の経営者パーシー・アダムズも金を惜しんで
たった1人の指導員サンディと無能な整備士のほかに人を増やそうとしない

エルム・パーク飛行場の喫茶店でお茶1杯を飲みながら
長時間労働で疲れているサンディの代わりに飛行機を飛ばしてみせるウィリアム

サンディ:君が僕の仕事を狙っているのは知ってるよ
アダムズ:君に任せてみよう

サンディのGFで生徒のドロシーの叔父は医者でウィリアムの足について相談すると
スイスに優れた外科医がいると教える

クリスチナは少しでもウィリアムと一緒にいたいために
ドロシーの父が経営する高級ホテル「ブドウのふさ亭」の受付嬢となる







ウィリアムは格納庫を借りて住んでいる






クリスチナはウィリアムに誘われて初めて飛行機に乗る
不安や恐怖を口にしてウィリアムに軽蔑されたくないために平気だとウソをつき続ける

ウィリアムの尊敬するダーモット氏がエマ号で墜落死したしらせが届く
ウィリアムは葬儀にかけつけ、ダーモット氏からエマ号をもらう







葬儀から帰り、朝の6時までに終わらせなきゃならない仕事があり
クリスチナも手伝って、ようやく午前3時に終わる

クリスチナ:
ウィルが私よりおんぼろ飛行機が好きだとしても
私ほどウィルを愛している人はいないわ

カーター夫人はクリスチナが男性と一緒にいて朝帰りしたことに激怒する
ドロシーが証人となって、ソーンダーズ氏は水に流してくれる







ダーモット氏の整備士ジョーはエルム・パークに来て、整備士をしながら
空いた時間はウィリアムとともにエマ号の改造に取り組む

飛行場では階級的な差別はなく、パイロットも生徒も、整備士もみな親しく付き合っていた
エマ号は最高時速65マイル出して、飛行場第二の速度を出した

それに伴い、完璧なパイロットが必要なため、ウィリアムはスイスに行き
300ポンドの借金をして外科手術を受けて、ヒザが曲がるようになる

ウィリアムは指導員に格上げされ、借金を返すために飛行機の競技会に出たり
旋回などの曲芸で儲ける興行に出る



飛行機をフランスに届けるために英仏海峡横断飛行にクリスチナを誘う(!
(今だって急に飛行機に乗るって恐ろしいのに、ロングドレスで舞踏会とか行ってる時代の女性を
 いきなり飛行機に乗せて海峡を越えさせるって拷問だよ/汗×5000

爆音で会話も聞こえず、時々メモをやりとりする2人
ウィリアム:これこそ人生だ、クリスチナ!

クリスチナは心底では「みんなきちがいよ」と思い、ウィリアムに愛憎を感じつつ
軽蔑されたくないがために平気を装う

途中、急に油が漏れて、生きた心地のしないクリスチナに
「君を愛してる」とメモを渡すウィリアム

フランスに着いて、海岸の大地を味わったのも束の間
再び空に舞い上がり、大雨となり、見知らぬ土地に不時着して納屋で眠る

翌朝、牛が群がって、寝起きから早速、飛行機に乗る









ウィリアムは余った時間はダーモット号の製作に夢中になる

飛行機での宙返りに高額を払うもの好きもいてエマ号で試すウィリアム
この時代、安全ベルトもないから、農家からロープを借りて、体を縛ってたって・・・↓↓↓
クリスチナ:群衆は心の中では墜落を見たがっているのよ

当時はまだ珍しい飛行機で無茶をして、墜落したり
空中分解して死ぬ事故が毎日のように新聞に載る

興行師がウィリアムと契約し、曲技飛行の公開が決まる
興行は大成功で、観客を乗せて宙返りを見せる

ドロシー:お祝いをしなくちゃ! 私たちを乗せて宙返りしてよ!

クリスチナ:私、ムリよ・・・
ウィリアム:ナンセンス もちろん君はボクを愛してる

飛行機が飛び立ち、クリスチナは肩のヒモを外して、やっぱりムリだと拒否したため
ウィリアムはかんかんに怒る







ウィリアムは他の男性のように自分を大切なものとして大事に扱ってくれたことは一度もない
でも“同等な人間”として扱ってくれた

翌朝、クリスチナはウィリアムに謝る(なんで?!
ドロシーは怖い思いをした復讐として、ウィリアムを乗馬に誘う

ウィリアムは荒い性格の馬をクリスチナに譲り、自分は女性用の馬に乗る
クリスチナは乗馬の楽しさを思い出し、高い柵も飛び越えて3人を驚かせる



ウィリアムはブレリオ機で事故ってろっ骨を3本折っても仕事を続けた
宙返りの写真が新聞に載り、大勢の崇拝者ができる

居心地の良い下宿にサンディと引っ越し、借金を返して
クリスチナにドレスを買えるほどになる



マークは入隊し、騎兵隊の将校となって、下宿に来る
ドロシーはひと目でマークの魅力に参ってしまう

ウィリアムはクリスチナにサファイアの婚約指輪をプレゼントする
ウィリアム:君が21になるか、父さんが死んだら僕たちは結婚するんだ

ウィリアムはサンディと2機編隊飛行する興行を考えるが
エンジン故障で不時着し、前歯を何本か折って入院する
それでも懲りずに飛行大会出場の招待を受ける








マークから父ラッセルが亡くなったと電報が来る
ウィリアム:しめた、結婚できるぞ



ウィリアムは父の葬儀をエスケープし、クリスチナは叔母と出席する
ラッセル叔父は全財産をマークに譲り、ウィリアムには何も残さなかった









ウィリアムは夢だったダーモット号の処女飛行を成功させる
結婚の日取りが決まり、マークが父の代わりに出席することが決まる

ドロシー:なにか起これば、ウィリアムとサンディは空軍に入るって言ってたわ



飛行大会の当日、記録的な大観衆が集まった
ドロシーはマークに会いに行ったと思われ
クリスチナはフレディとエミリーとともに見学するが途中ではぐれる

1機が金切り声をあげながら墜落
亡くなったのはサンディだった









翌日、ウィリアムは予定通りテスト飛行を成功させて
念願の国立航空機製作所の設計の仕事に受かるが
かねてから考えていたとおり、イギリス空軍に志願すると明かす

サンディが以前「人間は時間をかければ何にでも慣れるものだ」と言ったのを思い出す

サンディの葬儀後、「オーストリア、宣戦布告」のニュースが流れる
クリスチナ:もう何があっても平気!

2日後、大英帝国はドイツに宣戦布告

ウィリアムとクリスチナの結婚式が済み、2人は新婚旅行に出かける












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岩波少年文庫 3116 フランバーズ屋敷の人びと 1 愛の旅だち K.M.ペイトン/作 岩波書店

2024-10-18 17:35:53 | 
1981年初版 1988年 第8刷 掛川恭子/訳 ビクター・G・アンブラス/挿絵

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期待通りの良書で一気読み
全部で三部作あるそう

これだけの長編小説を書く作家さんって、本当にスゴいなって思う
映画を観ているように物語が進んでいく


【内容抜粋メモ】

登場人物
クリスチナ・パーソンズ 12歳

フランバーズ屋敷
ラッセル 父 亡妻イザベル
マーク 長男
ウィリアム 次男 13歳
メアリー 女中頭
バイオレット 通いの召使い ディックの妹 病気の母がいる
ディック 馬の世話をする使用人
グレイスおば
ポーター 医師
ダーモット
ジョー 整備士



■第1章 1908年
ウィリアムはラッセル家恒例の狩猟中に落馬して脚を複雑骨折してしまう







クリスチナ・パーソンズは5歳の時に両親を亡くしてから以後
親戚の家をたらい回しにされてきた

莫大な財産が残されたが、21歳になるまでは手に入れることができない
フランバーズ屋敷のラッセル叔父は亡き母の腹違いの兄で“狩猟きちがい”

妻イザベルが亡くなり、落馬により脚が不自由になってからは
ひどく気難しくなってしまった

クリスチナはグレイスおばの手紙を盗み読み、長男マークと結婚すれば
フランバーズ屋敷は当分やっていけるだろうと書いてあった

屋敷に着くと、ウィリアムが運ばれて来て
ポーター医師が診ているところで出迎えどころではない騒ぎ
ラッセルは息子より馬の心配をしている

お金を全部馬につぎ込んでしまうため、召使いは女中頭のメアリーと通いのバイオレットだけ
メアリーはウィリアムに付き添い、夕食はクリスチナとマークが用意する
ラッセルはウィリアムに対して同情より怒りと軽蔑しかない

クリスチナが馬に乗ったことはないと答えると
明日からディックに教わるよう命令される

ウィリアムを見舞うと、部屋中に模型飛行機が吊るしてある
ラッセル一族はみな狩猟好きだが、ウィリアムだけは違った
ウィリアム:人間は飛べるんだ







翌日から毎朝、ディックから乗馬について教わる
スイートブライアーは穏やかな馬で、クリスチナはすっかり好きになる
ウィリアム:乗馬でディックの右に出る者はいないな

ラッセル:正月までには血を味わわせてやれ

3年前、ラッセルは馬の下敷きになり、九死に一生を得たが脚が不自由になった

ディック:
ラッセルさんは6人分の精力をお持ちでした
馬車に乗ろうとしたが、じゃり道に落ちて、顔を切り
その場で泣きわめきながら松葉づえで自分を打ちまくりました
それから二度とやってみようとしない



ダーモットから本が届き、クリスチナはラッセルに持っていくが
飛行機の本でウィリアム宛てだったため、ラッセルは激怒し
狩猟の本を何冊も読み、その後のテストに答えられなかったらムチ打ちの罰だと言い渡す

夜、ウィリアムがすすり泣く声が聞こえ、クリスチナは自責する



マークは自分の乗る荒れ馬トレジャーに乗るようクリスチナに強制する
銃声に驚いてトレジャーが走り、高い生垣にぶつかる直前にディックが助ける



夜中に大きな音がして、ウィリアムの部屋に見に行くと
二度と狩猟に行かなくても済むように脚をさらに痛めつけている

ウィリアム:
父さんは怖いものなしの人生だったから、怖いというのが分からないんだ
馬に乗れなくなれば、僕に干渉しなくなるだろう

ウィリアムはクリスチナに黙っているよう言い
もし父に話したら、ディックが狩猟林で密猟していることをバラすと脅す







クリスチナは狩猟が好きになる
狩猟後はラッセルに一部始終を報告しなければならない
ラッセルはその時だけは生き生きとしている

ウィリアムのヒザは曲がらなくなるが
ラッセルのテストに全部答える

マークは怠惰で、無礼で、時に魅力的だが、怒るとラッセルにそっくりだった



■第2章 1910年
クリスチナの15歳の誕生日に、体にピッタリな乗馬服を作ってもらった
狩猟でマークはウッドピジョンがびっこだと分かると
クリスチナのスイートブライアーに乗ってしまい
生垣をムリに飛び越えようとして落ちる











マーク:あの馬はもう年だ 手元に置く価値はない

マークを世話するバイオレットの様子を見て、好きなのだと分かるとショックを受け
嫉妬心がわくが、どうしてかは分からず混乱する

ラッセル:犬舎行きだ
ウィリアム:犬に食わせる これが年とった狩猟馬に対するお決まりの感謝方法ってわけさ

クリスチナはディックの胸を借りて泣く
ディック:お願いですから帰ってください

ディックはクリスチナの頬にキスする

なんとかスイートブライアーを助ける方法はないかとウィリアムに相談すると
犬舎に連れていくディックさえ協力してくれれば
ダーモット氏の家で引き取ってくれるだろうと約束する

ウィリアムは散歩に出かけるフリをして、週に何度もダーモット邸を訪ね
飛行機を制作して飛ぶ試験を繰り返していると打ち明ける
あと数年もすれば、1人で働いて、屋敷を出る計画

ディックも協力して、ダーモットはスイートブライアーを快く受け入れる
ウィリアムは生き生きと飛行機の話をするのを見て驚く







エマ号を見て、彼らこそ次の世代を背負うのだと思い
未来を垣間見た気がする

洗練され、優しさに満ちたダーモット家と対照的に
フランバーズ屋敷が闇と暴力と無知の世界に思える

自動車が発明されて15年 ウィリアムも運転できる



ルーカスがスイートブライアーを見ていないことがバレ
怒り絶頂のラッセルはディックをクビにし、クリスチナは松葉づえで
ウィリアムはムチで何度も打たれる







ディックは以前、貧しさからルーカスの馬肉をとったという噂もあり
ラッセルの紹介状もないと次に雇われる先もない

クリスチナは責任を感じて、初めてディックの家を訪ね、あまりの貧しさにショックを受ける
寝たきりのディックの母の状態はフランバーズ屋敷の馬以下
クリスチナが来て喜ぶが、ディックは恥ずかしさで顔をふせる

なんとか助けられないかマークに相談するも

マーク:
ああいう人のために貧民院があるだろう
それが僕とどういう関係があるんだい?

ウィリアム:
ディックは君に恋してる
気づかないなんて、ぼけなすかい?

クリスチナもディックを愛していると気づく
屋敷の食糧から卵をあげようにも、ラッセルはかつかつの食費しかくれないから困るとメアリーに言われる



ある日、バイオレットが激しく泣いている
メアリー:辞めさせました みだらな子はここに置いておくわけにいきません

ウィリアム:子どもが生まれるんだ
クリスチナ:結婚してないのに不可能だわ

おばから金を借りて、家に郵送したがあて先不明で返ってきた
ディックは軍隊に入ったという噂

軍服を着たディックがマークをめちゃくちゃに殴る
ファウラー:男と男の問題です と笑う
ラッセルも大笑いするだけ
クリスチナは世界中に誰も頼る人がいない暗黒の檻にいる気持ちになる








■第3章 1912年
マークがトレジャーに乗ってクロスカントリー・レースに出場する
マークもラッセルも勝利に大金を賭けている

今ではマークが実質フランバーズ屋敷を取り仕切っている
ディックは輸送部隊に入り、馬の世話のためインドに行ってしまった

ディックの母は、バイオレットが辞めて1年後に貧民院で亡くなった
バイオレットは生まれた子とロンドンに行ったまま

熾烈なレースはファイアーダンスとトレジャーだけになり
あとは登りの直線コースでゴール目前という時
ウィリアムが乗ったエマ4世号がコントロール不能で飛んできて大混乱となる










馬は逃げ、飛行機は落ち、ウィリアムはさかさまになって着地する
ラッセルは初めてウィリアムのしていたことに気づき、勘当を言い渡す

ウィリアム:
父さんの弟がブリティッシュコロンビアにいるからそこで森林学を勉強しろだってさ
ダーモットさんが金を貸してくれるから、僕は仕事を探しに行く ここには帰らない

おばから贈られた舞踏会用のドレスがとても見事で驚く
そのドレスを着るはずだった女性が駆け落ちしてしまったため、クリスチナに回って来た

ウィリアムから「土曜8時に迎えに来る」とメモがある
クリスチナはウィリアムに恋していると気づく

ドレスを着たクリスチナはとても美しかった
ウィリアムはダーモットのロールスロイスで迎えに来る
ウィリアム:クリスチナ、きれいだよ

ウィリアムはダンスも上手かった
クリスチナは男性たちに次々とダンスを申し込まれる

マーク:
じきに戦争が起きるだろう
ここにあるすべてのものが、けして変わることがないと分かったらボクは喜んで殺されに行くよ
進歩したい奴はすればいい
機械が粉々になった後でも、善なるもの、真なるものはずっと続くだろう
もし君がフランバーズ屋敷を欲しいなら、僕たち、なるべく早く結婚したほうがいいだろう

クリスチナ:
私たちは考え方が違う
私たちはあなたの召使いじゃない!

ウィリアムにマークから乱暴にプロポーズされた話をすると

ウィリアム:
ボクは飛びながら戦うことになると思うよ
君はグレイス叔母の所に行けば、本当に何がしたいか決められるだろう
ボクに職が見つかり、将来の見通しがついたらプロポーズに行くよ
君の財産は関係ない
すぐ出発しよう

ウィリアムの愛情の大部分はエマ4世号や、飛行機にあると知っていても
クリスチナはクルマに乗る

ウィリアム:
君をとても愛している
飛行機がもとで不幸にしてしまうだろう
君に申し込むべきじゃないんだ

クリスチナ:構わない

馬で追ってくるマークを振り切って、2人はクルマで出発する




訳者あとがき
第一部では新しいものと古いものとの対立がドラマの中心になっている
クリスチナは2つの世界に引き裂かれ、選択を迫られ
ついにマークを拒否して、ウィリアムを選び、古い世界と別れる

日本の飛行機の歴史
1785年 浮田幸吉が橋の上から河原に飛ぶのに成功
1910年 日本で初めて飛行機に乗って飛んだのは、徳川大尉と日野大尉
国産第一号機は奈良原男爵がつくった奈良原一号という複葉機

1903年 ライト兄弟がアメリカで初飛行に成功したキティホークは複葉機

第一次世界大戦で世界初の空中戦が行われた
大空を飛ぶという人間の夢は、人殺しの道具になった


K.M.ペイトン
Kはキャスリーン、Mはマイケルで、かつて夫婦合作した時のペンネーム
その他の作品でも馬や漁船、ヨットなどの冒険物語が多い
イギリスの児童文学作家タウンゼンドはペイトンを“行動の人、動きを見事に表現する才能を持つ”と評した

『難破船上の戦い』
『卒業の夏』
『ベートーベンの肖像』
『ペニントンの後継ぎ』
『バラの構図』
『腹心』
『英雄であることの証』
『真夏の夜の死』
『マリオンの天使』


本書はイギリスでテレビの連続ドラマ化された








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ジュニア世界の文学 11 焼けあとの雑草 ジル・P・ウォルシュ 学研

2024-10-15 16:57:26 | 
1971年初版 沢田洋太郎/訳 矢吹申彦/ケース・イラスト

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女性の作家とは思えないほど力強い戦争もの
空襲で崩れていく家々、生活がリアルすぎて息が苦しくなる一方で
子ども同士が結束してその日を暮らす姿に胸打たれる

同じ戦争を描いたロバート・ウェストールは
戦闘機が大好きな少年の視点から描いていて全然違った

有名な戦争映画『火垂るの墓』も子どもだけの暮らしで辛い悲劇だったが
彼らが亡くなったのとはどんな違いがあったろうか?

せっかく大人が助けようとしても、子どもたちは逃れようとした
その感覚は当時を体験しないと分からない

自分の足でも歩いたロンドンの有名な建物の数々を思い出し
大戦を越えて残っているのも感慨深い









【内容抜粋メモ】
ビルはオールドウィッチの地下鉄で少女ジュリーを見かけて声をかけ
イタリア人マルコの店で朝食をとる

母が亡くなり、父とビルは叔母の世話になっていた
学童疎開が始まり、学校が閉鎖になり、ものは配給制になった

アンダーソン・シェルター(防空壕)を庭に据えた
父が召集され、叔母はビルを疎開させた
叔母:あなたは手に余るのよ



汽車には子どもが大勢乗っている
婦人がサンドイッチをくれる
駅名はすべて黒く塗り潰してある(なんで?

ウェールズで降りると、小さい子からもらわれていき、ビルは残ってしまう
ある農家が説得されてビルを預かった

ビルはそこに5週間いた
主人のウィリアムズはウェールズ語しか話せない
ミセス・ウィリアムズと息子も最低限の英語だけ

ミセス・ウィリアムズは疎開者にはシラミがいるからビルを洗うと言う
逃げたビルは消毒剤のプールに落ちてひどい臭いになる

郵便局に父の手紙が着き、3ポンドを送ってくれた
駅の時刻表を見ると、列車は1日おきに1本しかない

丈夫な編み上げ靴を買い、15マイル歩いてロンドンまで汽車に乗り
バスで叔母の家に戻ると「危険。不発弾あり」の板がかけられ誰もいない

男:
爆発物処理班が処理するまでは入れない
恐ろしい大型爆弾があって、いつ爆発するかしれない

空襲警備員が来てビルは逃げる

ぼくは自由なんだ
父が戻るまで1人で生きるんだ



1週間が経ち、ビルは孤独に苦しみ、ジュリーの面倒をみることにする

ジュリーはカナダに疎開される船が大西洋の真ん中で魚雷で沈み
救命ボートに乗り、別の船でサザンプトンに戻った

宿舎に残されたがイヤで逃げだした
父は召集され、どこか分からない
カナダに行く時に渡された50ポンドがある

婦人義勇隊の売店でサンドイッチとお茶を買う
ビル:僕らは目立っちゃいけない

2人はウエストミンスターホールを観に行くと半ば吹き飛ばれている



地下鉄で叔母の家に戻り、ナイフや懐中電灯を持ち出す
ジュリー:いわゆる不発弾もあるし、人が触ると爆発する時限爆弾もある
と聞いて恐ろしくなり、家を出る
しばらくして爆弾は爆発し、叔母の家は吹き飛んだ

ビルは教会にある戦時公営食堂やマルコの店で食いつないでいた
露天商はどこも人手不足で、手伝えばいくらかのお金になる
服は救世軍でもらったため、サイズが大きすぎる

2人はセント・ポールを観に行く

「1日の苦労はその日1日だけで十分である」

老人に声をかけられ、2人は逃げる



オールドウィッチ地下鉄駅のプラットホームに寝る場所がとれた
この辺は全線不通で人々があふれている

ジュリーは腕に迷子札をつけていて、その番号を覚える
空爆が近づいてくる音がする



1、2週間すると疎開先から子どもを連れて帰る親もいて、道で遊ぶ姿もある

空襲は何度も続いた
みんな睡眠不足で疲れ切っている
どの防空壕でも冗談を言って笑わせる人がいた

2人で店番をしていた時、目の前に焼夷弾が落ちてきた
リトル・バートがいきなり拾い上げ、防火用水に投げて無事に済んだ

地下鉄で教師の男に声をかけられ、学校に戻るよう言われて逃げだす
男:どの防空壕にも仲間がいる 逃げても仕方ないぞ 助けてやろうと言うのに!



チャリング・クロス駅まで来て、照明弾が夜空を明るく照らす
空襲警備員の中にジュリーのピアノの先生がいて、また逃げだす

近くに爆弾が落ちて、ビルは耳が聞こえなくなるのを防ぐために
自分とジュリーの口に指を入れる

どこもかしこも燃えて、警備員の誘導で退避場に着く
すべてが変わってしまったのに、人々は日常の生活に盲目的に固執している

トラックが来て、久しぶりにお風呂に入る



なにか見慣れた場所を見たくて、叔母の家に戻ると何もなくなっていた
公園の遊具で遊び、2人に笑顔が戻る

遠くに父が歩いているのを見つけて追おうとする
ジュリー:さようなら、ビル

父を追えば、ビルはまたウェールズ、ジュリーはカナダに送られる
ビルは迷って追うのを諦める
ビル:君と一緒にいたかったんだ

帰るべき家が欲しかった 相談する大人が欲しい

ビル:
君のお金は特別の支出のためにとっておかなきゃ
遊んでる余裕はない 働くには町の中心に戻らなきゃ



ジュリーは叔母の家に案内する
上は吹き飛ばされているが、召使の部屋だった地下室は残っていた

電気はつかないが、水道は通り、貯蔵庫には缶詰もある
ジュリーは掃除をするため残り、ビルは働きに出る

新聞は戦時下ではよく売れる
戻ると部屋は掃除され、配給の通帳を見つけて肉のスープを作ったジュリー
ビルは巡回図書館で本を借りて読んだ

夕刊に「シティ・オブ・ベナレス号沈没 全員絶望」という記事が載る
ジュリーが乗っているはずの船だった
ジュリー:お母さんに家に戻ってるんだって言わなきゃ・・・

ビルが父を諦めたのを思い出し、連絡をとるをやめる



ビルは野菜を売るために手押し車を修理する
通りでディッキーと名乗る男の子がずっと母親を待っているが来ない
ジュリー:捨てられたのよ、あの子

ビル:
孤児院かどこかへ入るだろうよ 僕らには面倒をみる力がない
ディッキーを連れて食堂へは行けない

ジュリーに説得されて、ディッキーを預かることにする
僕は野菜売りになんかなりたくなかった エンジニアになりたかったのだ

ビッグ・バートに聞くと、オールド・ライリーに会えば野菜を分けてくれると教えてくれる

ディッキーが震えているので、体をこすり、粉ミルクを飲ませるが吐いてしまう
ジュリー:新鮮なミルクを手に入れなくちゃ

ビルは牛乳屋に行くが爆撃を受けている
マルコの店も閉店

爆風で服が飛んで半裸で逃げる人々
台所に婦人が座り、テーブルにミルクがあるのを見つけて声をかけると死んでいると分かる
ビル:ディッキーのためなんです 許してくださいね

やっと隠れ家に戻ると、すっかり崩壊していた



これまで避けてきた空襲警備員、福祉委員、誰でもいいから人を呼ぶ
ビル:ああ、神さま 行って掘ってください

R(救助隊)のマークがあるヘルメットをかぶった男たちが来て
数時間も掘って、ようやく立ったまま埋もれていたジュリーが出て来て担架で運び去られた
その後、ディッキーが汚れもケガもなく出される

救助隊:おれたちは助けたんだ



宿泊施設で寝るよう言われ、翌日、病院に行き、ジュリーに会いたいと頼む
看護師:ジュリア・ヴァーン・グリーンならいるけど、この人じゃないわね

ビルは9つの病院を周ったがジュリーはいない
マルコの店で食べた時、ジュリアさんと呼んでいたのを聞いて思い当たり
最初の病院に戻ると、面会謝絶

看護師:母親が付き添っています ショック症で休息が必要なの

ジュリーがビルに会いたいと言い、2人は再会する
そばに母親と兄がいる

ジュリー:ディッキーもこの病院にいて、ケガはないけど、お母さんが見つからないの

兄はビルとジュリーの間になにもなかったかと質問する
ビルは傷ついて病室を出ると母親が追いかけてきて
リッチモンドの住所が書かれた名刺を出して訪ねて欲しいという



ビルは死ぬ気で消防署に志願するが、11月23日の夜は57日ぶりにロンドンに空襲がなかった日だった
軍隊に志願して、エンジニアの訓練を受け、数年後、戦争は終わった

セント・ポールを見に行き、雑草が荒れ地を隠している様子を見る
ここにも建物がたつことだろう




あとがき
本書は第二次世界大戦のロンドンが舞台
1940年 イギリスは昼夜の別なくドイツ空軍の空襲にさらされた

東京大空襲では木造建築が燃えて何も残らなかったが
ロンドンはガラスが飛び散り、石くずの山ができた

学童疎開を経験した人に聞くと、疎開地に怨念じみた感情を持つ人が多い
とくに食料の苦しみが、その土地に対する憎しみになっているらしい

心の傷と体の傷を比べて、おそるべきは心の傷である


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ジュニア世界の文学6 北風の町の娘 ジョン・R・タウンゼンド 学習研究社

2024-10-14 21:58:21 | 
1971年初版 亀山龍樹/訳 矢吹申彦/ケース・イラスト

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【内容抜粋メモ】

登場人物
ロバート・テリー 父 教師
アマリリス 通称リル

クラフ家
フレッド 父
フローリー 母
ノーマン 息子 16歳
マーサ大おばさん

ロイ カーディーラー
シルビー ロイのGF
大地主のジョージ・ウィゼンス卿
シリア
サム・シウェイト 市会議員
ヒルダ 学校の友だち



ノーマンはオートバイを買うためにロイの店で週6ポンドでバイトしている
母フローリーは勉強ができるノーマンに学校を続けて欲しいと思っているが
ノーマンはすぐ働きたい

リルは10年前に母を亡くして、父と2人暮らしをしていたが
教師の父の転勤でヨークシャーに越してきた

以前住んでいた海辺の町ベルハンプトンと対照的に
煙突が林立するハラスエージに驚く

カラドック・クラフ
大地主のジョージ・ウィゼンス卿がハラスエージの公有地に囲いをして私有地にしてしまった
カラドックはフランク・シウェイトとともに一揆をおこして7年間の流刑となった
土地はまだウィゼンス家のもので、学生は電車に乗って運動場に行かなければならない

今、屋敷にいるのは美人のシリア
南仏のリビエラで過ごして、ハラスエージにはほぼいない
広大な所有地に銘文「わが財を手放すことなかれ」とある



翌日、ノーマンは母に言われて、遠いいとこのリルに町を案内するが
南から来たリルとは馬が合わないと感じる

ロバートとリルはこれから通う学校に慣れるため、終業式に出席すると
シリアが役員として出席してみんなの注目を集める

リルがシリアのジャガーに見惚れていて、会話を交わす
市会議員のシウェイト氏がロールスロイスで送ってくれ
何度もウィゼンス家の土地を市に譲って欲しいと掛け合ったが
シリアは1ミリたりとも渡さなかったと話す



上の階に住むジェームズは新ハラスエージ建設協会というグループを作り
建築家が模型を作って“汚いゴミ捨て場”と言われている場所を美しく変えようと計画しているが
費用5、600万ポンドのめどは立たない



ノーマンはリルをダンスに誘う
ロイとクリフはGFシルビーとエバを連れて来ている

隣りのテーブルに柄の悪いグループが来て、リルに絡み
ノーマンはリルを守ってケンカになる
ロイはリルをクルマで家に送ったことでノーマンが怒る

リルは生前のカラドック・クラフを知るマーサ大おばさんに会う
リルが10代で亡くなった妹マーガレットに瓜二つだと驚いて
刑期後のカラドック・クラフはジョージ・ウィゼンスと飲み友だちになったと話す

遺言で土地は市に返すと言ったが、孫のウィリアムはその覚書を捨ててしまった
マーサ大おばさんは祖父からその文言を聞いて覚えていたが誰もその謎が解けないまま

「『夜の思想』の、背後に、あらず」

カラドック・クラフと土地の問題に興味を持ったリルはノーマンに相談する
2人で3mもの塀を越えて、川で泳いでいるとシリアに見つかる

これまで彼女に近づいた者はお金目的で、何度も傷ついたことが分かって同情するリル
シリア:世間は私をバカにしてる 本当に腹が立つ
シリアは2人をお茶に招く



父は同僚と食事をするから、リルも友だちを連れて来てと言われ
終業式で案内してくれたヒルダを誘おうと家に行き、姉シルビー、ジャネットと会う

化粧や服に構わず勉強ばかりしているヒルダをバカにしている姉たち
ヒルダ:デートとおしゃれにうつつを抜かしてるうすばかのきょうだいよ!

みんなが揃ったところで例の謎を話すと、『夜の思想』はエドワード・ヤングの著書だと分かる
ウィゼンス家の図書室にその本があり、後ろに何かが隠されていると思われるが
「あらず(ノット)」の意味が分からない

ノーマンは断ったため、リルだけで行くつもりが
話を聞いたロイがクルマで屋敷まで送り
シリアはロイもお茶に誘う

ジョージが建てた監視塔の部屋に蔵書リストがあり
『夜の思想』に印がついているのを見つけて興奮する
フレッドはこれ以上カラドック・クラフと土地のことに関わるのは止めてくれとリルに言う

父に言われて、シリアに図書室を見せてほしいと手紙を書くが返事がない
電話をしたら切られてしまう
町中で会った時に聞くと、リルも土地を奪おうとしてると思って断られる

頭にきたノーマンはリルとともに深夜に図書室に忍び込む
『夜の思想』の後ろには節(ノット)があり、裏に古い封筒を見つける

ロイと出かけていたシリアが帰宅し、見つかって塔に逃げ
鐘にロープを縛っておりた際、古い鐘が落ちてきて大騒ぎになる

リルは封筒をジェームズに見せる
中には公有地のすべてをハラスエージに譲渡する、とあるが
証人の署名がないと無効

ノーマンは証書の写真を撮って、シウェイトに送った
新聞には、鐘が強風で倒れたと載る

シウェイトはシリアに不都合な事柄を並べて証書にサインするよう圧をかける
シウェイト:あとはわしに任せたらいい



父はリルのために1週間ベルハンプトンで過ごすよう言い、大喜びしているところに
シリアが来て、おかかえ弁護士のカッセルに言われたがサインはしないと言って去る

シリア:
あなたは近いうちに立ち退き請求を受ける
学校に報告すれば在学できなくなるでしょう

ノーマンは再びシウェイトに言って、飛行場に着く前にジャガーを停める
興奮したシリアは崖からクルマごと落ちて入院
奇跡的にかすり傷で済む



リルはベルハンプトンに来たが、期待したほど素晴らしくないことに気づく
BFマーチンにはGFがいて、彼を買いかぶっていたことが分かる
自分はもうこの町の人間ではなかった

早めに帰宅すると、またシウェイトが来ている
シリアがサインして土地は市に戻るし
家も立ち退かずに、学校も続けられるとのこと

リルはジェームズの新ハラスエージの模型を見せると興味を持つ

マーサ大おばさんは元気になり、ロイはシリアから金をもらえずシルビーと寄りを戻した
ヒルダはクリフと付き合い、ノーマンは学校を続ける決心をする
リルはシリアを見舞い、また会おうと約束する

新聞にハラスエージに土地が返還された記事が載る

リル:私はこの町の少女よ

世の中がうまくいくのは、北と南の2つが象徴するものがなければならなかった
荒々しさと優しさ、実際的な面とロマンティックな面、男らしさと女らしさ



ジョン・ロウ・タウンゼンド
ヨークシャーの工業都市リーズで生まれた
ハラスエージはリーズの分身
新聞社で編集の仕事をしながら、大学で児童文学の講義をした

『ぼくらのジャングル街』
『さよならジャングル街』
『海賊の島』
『闖入者』
『おやすみなさい、教授、愛をこめて』

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ジュニア世界の文学8 さすらいのジェニー ポール・ギャリコ 学研

2024-10-13 17:59:31 | 
1971年初版 矢川澄子/訳 矢吹申彦/ケース・イラスト

最初、ヒトがネコになるという急なファンタジーに違和感を感じたけれども
猫世界にどっぷり浸かって、自分の腕にも白い毛が生えた気になって没入した

これだけのボリュームでひとつの物語を描き切る作家の力量が凄い

私なら、最後、ピーターの家に着いて、ヒトに戻り
ジェニーと暮らすエンディングを思い描いていたが
さらに二転三転する肉づけに引き込まれた

まるで映画みたいな夢を見ても、目が覚めると
あっという間に現実に戻って忘れてしまう感じ、分かるなあ
きっと魂だけパラレルワールドを体験してるんだろうな

あとがきにファム・ファタールのような記述があり、なるほど
ジェニーが女性性の象徴ということか

舞台がロンドンで、戦後間もない頃というと
先日読んだ『焼けあとの雑草』と同じだが
家も、親もあり、食糧も全然困っていない感じが意外
この違いは何だろう?


【内容抜粋メモ】

登場人物
ピーター 8歳の少年
父 陸軍大佐

ばあや

デンプシー 大きな黄色いオス猫
ジェニー
ビル・グリムズ老人



交通事故に遭ったピーター

猫が好きで、ずっと飼いたいと思っていたが
軍人の父はほとんど家にいないし、若く美しい母もいつも出かけていて
一人息子のピーターをばあやに任せきり
そのばあやは大の猫嫌い

ばあやが郵便屋を喋っている間に、小さな虎猫を追って道路を横切り、クルマに轢かれた

気づくと、ピーターは猫になっていて、ばあやに家からつまみ出されてしまう



自動車や馬車の車輪、人の足、大きな音、どしゃぶりの雨に怯えて
気づくと倉庫にたどり着き、大きな黄色いオス猫デンプシーのテリトリーに入って
猛烈なパンチを喰らって意識を失う
オス猫:今度こそきっと殺してやるからな!



意識が戻ると、ナポレオンのベッドの上で、メスの虎猫ジェニーに体中なめられると
母の腕に抱きしめられた時のような心地になる

すっかり元気になり、ジェニーが持ってきたネズミに戸惑いながら
ひと口食べてみると美味しいと思う

ここは公共の家具置き場で、ジェニーに事情を話すと
最初は信じないが、猫らしくない態度に納得する
ジェニー:ほんとに猫になる気なら、猫になるお稽古から始めなければ

「こまったらなめろ」
まずは体中のなめ方から丁寧に教えてくれるジェニー
背中の後ろも、しっぽも、体をよじればどこでも届くことが分かる



ジェニーの先祖はエジプトで神とあがめられていたと話す
小さな女の子バフにとても可愛がられていたが
2年前、一家が引っ越す時に置いていかれた身の上を話して涙を流す

ピーターは猫を愛する者はそんなことしない、きっと誤解しているんだと主張するが
ジェニーはもう二度と人間を信じまいと誓ったと話す

「飛び出す前に止まれ 止まらず、知らずに飛び出した子猫で、天国は満員」
ピーターはミルクが飲みたくなり、桟橋そばの掘っ立て小屋に住む
猫好きのビル・グリムズ老人を訪ねると早速ミルクとレバーを分けてくれる

グリムズ老人は2人に一緒に住まないかと誘うが
ドアが開いた隙にすり抜けて逃げるジェニー
ジェニー:私たちを買収しようとしたのよ 分からないの?

ジェニーはピーターが人の言葉を理解し、文字が読めることに驚き
生まれたグラスゴーの町が見たいから、船に乗って行こうと誘う
ジェニー:船に猫を乗せると縁起がいいそうだし、船乗りは縁起をかつぐものなのよ

グラスゴー行きのグリーノック伯爵夫人号に乗り
ジェニーはピーターにネズミの捕り方も教える
船賃代わりにネズミをたくさん捕って見せると感心する船員たち

農家になりたくて海が大嫌いな船長は、機嫌を損ねると皿を割るクセがある
一等航海士ストレイチャンはフェンシングが趣味
コックのミーリーは2人に毎日ごちそうを作ってくれる
二等航海士カールークは物語を書く
水夫長アンガスは大男だが刺繍が上手くて1つ3ポンドの収入にしている



大ネズミに咬まれたら病気が感染るから気をつけねばならない
ピーターは空中にジャンプして背中の急所を噛んで
テリアほど大きいネズミをしとめた

船員が沸いて、欄干で寝ていたジェニーはピーターがヤラれたのかと驚いたため海に落ちてしまう!
それを見たピーターはジェニーを助けるために海に飛び込む

意識を失ったジェニーと波間を漂っていると、船員たちが救命ボートで助けてくれる
サワリーズ船長は猫ごときで船を停めた罰にストレイチャンをクビにする

ジェニーは死んでしまったかに見えたが、ピーターがなめてあげると意識が戻る
珍しい事件に機嫌が直った船長はクビを撤回する



ストレイチャンは船が陸に着くと、2人を居酒屋に連れて行き
世にも珍しい事件を話すと、ウソつき呼ばわりされてケンカになる
警官が来て、ようやくケンカ騒ぎが止まり、2人はドアから逃げだす



ジェニーはふさぎこむことが増える
グラスゴーではゴミ箱を漁ったり、工業都市の煙ですっかり真っ黒になる2人

急に3匹の犬に噛みつかれそうになり、夢中でのぼり続けて
気づいたら、2人とも高い塔の上にいて、降りれなくなる
ジェニー:猫って時々、自分で高い所にのぼって降りられなくなるの

だが、ピーターが思った通り、消防車などが駆けつけて救出してくれる
取材が終わると、群衆はあっという間に散って、2人だけあとに残される

ジェニー:
私、グリムズさんの所で暮らしたい
もう二度とこんな目に遭いたくない

2人は再びグリーノック伯爵夫人号に乗って、ロンドンに帰る
だが、グリムズ老人は1人ベッドで安らかに亡くなっていた



ピーターは後悔や自責の念、悲しみに沈むジェニーの気をそらせるために
ミューズの自宅に戻りたいから助けて欲しいと頼む

ジェニーは犬についての知識や、体をふくらませて威嚇する方法も伝授する

知っている町に着いて、まず顔役の大きな黒いオス猫に挨拶する
彼は爆弾でやられた家が野良猫屋敷になってると教える

ピーターの家に着くと、「この家貸します」と張り紙がしてある
泣いて悲しむピーターをなぐさめていると、バフが出て来て、ジェニーとの再会を喜ぶ

ピーターが思った通り、バフはジェニーを捨てたのではなく
急病になって、回復した時にはもうジェニーがいなかったと話す

ジェニーは家に入れてもらえるが、ピーターは外に出されてしまう
ジェニー:爆撃あとの家に私も行くから待ってて

野良猫屋敷に行くと、ジェニーが家を抜け出している
ジェニー:帰る気はなくてよ ご迷惑でなければ一緒にいてもいい?



翌朝、ジェニーになにか食べ物をとってきてあげようと思ったが
ルルという子猫のワガママな様子に夢中になり、一緒に出かけるピーター

遊園地ではお腹いっぱいアイスクリームを食べさせる
ルル:昨日と今日は違うわ 明日はもっとよくなると思わない?

3日ほど経って、ルルは気まぐれに家へ帰ってしまう



ピーターは我に返って、野良猫屋敷に行くとジェニーはいない
バフの家、グリムズ老人のいた小屋
グリーノック伯爵夫人号も見に行くがいない

呆然として、ふらりと立ち寄った倉庫でようやく2人は再会する
ジェニーはもうすっかりピーターを許していたが心ここにあらずの様子

ジェニー:
デンプシーに命令されたから行かなきゃならない
あなたがあいつを殺すか、あいつがあなたを殺すしか解決の道はない

ピーターは軍人の息子として、デンプシーに挑む決心をすると
ジェニーは体を張ってピーターに猫の戦い方を猛特訓する



ピーターは不意打ちはせず、デンプシーに決闘を申し込むが
百戦錬磨のデンプシーはピーターを壁に追いつめて攻撃する

めちゃくちゃにヤラれたピーターは大ネズミを仕留めた時を思い出し
ジャンプして背中に乗って急所を噛んでデンプシーに勝つ

母の呼ぶ声に目を覚ますと、再び少年に戻って病院に寝ている
ばあやはピーターを喜ばせるため、子猫を飼ってもいいともっている
ピーター:ぼく、ジェニーが欲しい!

少し冷静になると、野良猫の孤独が伝わり、すっかり気に入る
母:なんて名前にする?

たしか名前があったはずだ、と思うが浮かばない
ピーター:スマッジー(汚れた顔)て呼んでやろう




あとがき

ポール・ギャリコ
名作『白い鴈』などで知られる世界的大作家の1人 NY生まれ
本書は53歳の時の傑作




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サティン入江のなぞ フィリパ・ピアス/作 岩波書店

2024-10-11 13:23:53 | 
1986年初版 1987年 第3刷 高杉一郎/訳 シャーロット・ヴォーク/挿絵


家族の複雑に絡み合ったゴタゴタを幼い子どもにいつ、どう話すかって難しい
秘密にするほどトラウマになったり
きょうだいがいれば、理解度が違うから、話すタイミングにズレが起こるということもあるだろう



【内容抜粋メモ】

登場人物
フレデリック・ジェイムズ フレッド 父
キャサリン 母
ランダル 兄 ラン
レニー 次男 友ブライアン
キャサリン ケート 10歳
ランダル 母方の祖母
シロップ 愛猫
アンナ ケートの友

アルフレッド・ロバート ボブ伯父さん
ナニー・トランター 父方の祖母
アーノルド・ウェスト 近隣の農家 アーニー



ランダルおばあちゃんの部屋のドアはいつも隙間が開いてて
誰が通ったか見ている(ヤダな・・・/汗

紫のインクで「ミセス・ランダルへ」と書かれた封筒が
切手なしにポストに入れられる

ケートが祖母に持っていくと、奇声がして、母が呼ばれるが
何があったかは謎のまま



ケートは父が海で溺死した時、母が産気づいて生まれたと聞いている
教会の墓地で偶然墓石を見つけて、祖父のジェイムズとアルフレッドという名前が刻まれていて
それが父だと思う

ある日、母と祖母が墓石の前で話しているのを見る



大雪が降り、レニーとブライアンは自作のそりトボガンで滑りに行く
ケートだけ置いていかれるのに同情した母は
祖母の部屋から大きなお盆を持ち出してくる
母:私も子どもの頃、そのお盆で滑ったのよ

丘に行くと、友だちのアンナ、長兄ランダルとGFヴィッキーも来ていて
楽しい時間を過ごす

そりのシーズンが終わり、ブライアンは屋根裏部屋にトボガンをしまいに行き
いろんなモノがしまってあるのを見て、なにか言いたげにしていた

ケートはアンナに秘密を話そうと思い、墓地に連れてきたが、父の墓石が消えていた!
長兄ランダルに話すが真面目にとりあってくれない

ランダル:
パパは学校で教えていた それにボブ伯父さんがいた
サティン入り江で誰かが溺れ死んだんだ

ケートはレニーにサティン入り江はどこか聞くと
サティン村なら自転車で通ったことがあるという

墓石に刻まれていたのはボブ伯父だと分かる
では、父は今どこにいるのか?



ケートは居ても立っても居られず、自転車でサティン入り江に行くが誰もいない
近くに果樹園があり、せん定をしていた男が犬を連れて入り江に来たため
慌てて逃げるケート








ボロボロになって帰ってきたケートを心配する母
サティン入り江に行ったと話すと、二度と行ってはいけないと叱る

父の墓石が消えていた話をすると、父は外国で死に、海で溺死したのはボブ伯父だった
ランダルおばあちゃん:この子には忘れさせなきゃダメ!
でも、誰かを忘れるためには、まずその人を知ってなきゃならない
パパが死んだことには変わりないんだわ

墓石は新たに父の名前を刻まれて、墓地に帰ってくるが
死亡したのは、今年の1月になっている
祖母の元に来た手紙は父の死をしらせたに違いない

夜中に部屋で起きていると、ドアの隙間から誰かが覗いているのが見える
しばらくして家中を探しても誰もいないし、祖母も誰も見なかったという



市の売店を見に来たケートは犬を連れた果樹園農家の男を見かける

愛猫シロップが突然いなくなり、家族で探すも見つからない
ランダルおばあちゃん:死んだに違いない 諦めたほうがいいね

夜中に猫の声がして、屋根裏部屋からシロップが見つかる
母はレニーが屋根裏部屋に行ったのが原因だと決めつける









兄ランダルはケートをサティン村までサイクリングに誘い
老女のいる家に水を飲みに行くよううながす

彼女は父方の祖母ナンで、ケートに会えたことに感激する
紫のペンで手紙を書いたのはナン
果樹園で働いているのは父の友人アーノルド

ナン:
お前のお母さんは、一時ボブが好きだった
でも、ボブは結婚を望まなかったから、フレッドと結婚した

ケートはもらった父の写真を祖母の家に置いてきたため取りに行くと
父アーノルドがいて、逃げて来る

父はナンの家に会いに来てほしいというメモをランダルに渡すために家に来ていた
ドアから覗いていたのは父だった

ランダルは父とボブ伯父について話す

兄弟はいつもケンカしていた
入り江で泳いでいて、ボブが溺れ
父はボブを潮位線の上まで引きずり上げてから人を呼びに行ったが
満潮になり、ボブはわずか15cmの水で溺死していた

その後、村で父がボブを殺したのではないかと噂になり
父は家を出て、姿を消した

ランダルおばあちゃんは、トランター一家に嫉妬していたため
自分の家に娘家族を引き取った

ランダル:
パパは自分の家族をもう一度集めたいと思ってる
でも適当な時期までママ、レニーには言うんじゃないぞ



帰宅すると、屋根裏部屋のことでまた母とレニーがケンカしていて
祖母は自分がはしごを使ったと告白する
祖母:枕が2つ入っている青いスーツケースを取り出そうと思ったから

ブライアンは屋根裏部屋に行った時、スーツケースの枕の中に
たくさんの紙幣が入っていたのを見て
祖母が家出しようとしてるのでは?と推測する



家族でいちご狩りに行き、疲れたケートが寝ていると知らずに
母は祖母とスーツケースについて話しはじめるのを聞いてしまう







祖母:
私はひどく困った時のためにお金を貯めた
その金を気前よくやれば、フレッドは二度と近寄らないに違いない
あれはそういう男なんだから

ケートは父に撤回して欲しいと思い、サティン村の父に話す
怒った父は家に来て、母と話し合うため、ケートをアーノルドに預ける

2人は喫茶店で食事をする







アーノルド:
ボブはハンサムで頭がいいし、みんなの人気者だった
あいつが死んだことが忘れられない
僕はあいつを潮位線の下までひきずり下ろした
あいつはボクの唯一の親友なのに裏切って、笑ったんだ
誰かに話したいと思って10年もガマンしてきた
君に話して気持ちが軽くなったよ

ケート:私は黙っていないわ

アーノルド:話すって何を? 誰も信じないさ



一家はオーストラリアに引っ越すことに決める
父は祖母も連れて行き、近くに住まわせると約束するが、祖母は断る

母:いろんなことがあったけど、私はやっぱりお母さんを愛するのを止めることはできない

ケートは誕生日プレゼントに祖母からそりに使ったお盆をもらう

ナンが近いうち、アーノルドと暮らすことにすると話したため
アーノルドは嫌いだというと

ナン:
あの子の良心にひっかかってることが私にはよく分かる
アーノルドは私が年をとって必要としていると思っているけど
本当はアーノルドのほうが私を必要としている

ケートはシロップがナンになついていて、ナンも溺愛しているのを見て
オーストラリアに連れて行くより、祖母のそばにいたほうが幸せだと譲る











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ジュニア・ベスト・ノベルズ 2 鐘楼をまもる少年 ポール・ジャック・ボンゾン 岩崎書店

2024-10-10 14:43:59 | 
1972年初版 1975年 第2刷 末松氷海子/訳 小林与志/画

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


面白くて一気読みした
こうして観光客に100%頼っている村は少なくないかもしれないな
そうした歴史的建造物や絵画を護るのもヒト、壊すのもヒト

ひとつ気がかりに思ったのは、鐘楼に仕掛けた火薬を残したままで大丈夫なの?
なにかの拍子に爆発しないかな?汗


【内容抜粋メモ】

登場人物

ソルビエルロ村
リビオ 14歳
パオロ

カステルランツァ村
シルビア
ビットリオ 兄









リビオはソルビエルロ村にある観光名所の鐘楼をとても自慢に思っている
ドイツ語、フランス語、英語を独学で勉強して、小舟を渡し、ガイドして小遣いを稼いでいる









500年前に建築家ミケロッツォにより建てられたという物語を語ると喜ぶフランス人観光客
リビオ:僕たちイタリア人はみな、いつも歴史の中に生きているんです

鐘楼の管理人は渡し守たちが高額のチップを受け取るのを僻んでいる

リビオは戦争で父を失くし、数年前に母が亡くなり、祖母と2人暮らし
祖母:お前みたいな孫を与えてくださった神さまに感謝しなけりゃ

フランス人からもらった高額なチップでシルビアにコーヒー挽きを買う
シルビアは幼馴染で、以前は同じ村にいたが、隣りのカステルランツァに引っ越した









カステルランツァにはサンタ・フランチェスカ教会があり、フレスコ画が有名
シルビアの父は駐車場、兄は旅館で働いていたが
去年、教会が火事で焼けてしまい、すっかり貧しくなって
数年前からフランスに出稼ぎにやる話がある
シルビアはたくさんの家族の世話に明け暮れている









リビオは帰り道に旅館の主人に呼び止められ、新婚夫婦を鐘楼の島へ渡してあげた際
人影がよぎるのを見て気になり、鐘楼を爆破させる計画を聞いてしまう
その中に聞き覚えのある声もあると気づく









親友パオロに相談し、一緒にカステルランツァにある憲兵に知らせに行くが
悪い夢だと追い返され、村長に会いに行くと出かけている
リビオ:2人で俺たちの鐘楼を救おう!







観光客が鐘楼の中で財布を落としたとウソをついて
管理人からカギを奪って粘土で型をとり、合いかぎを作る









日曜の午後はシルビアの唯一の休みなため、船に乗せて鐘楼に入る
213段の階段を上ると、レオナルド・ダヴィンチのフレスコ画がある

てっぺんから聖母さまの小さな礼拝堂も見える
リビオは鐘楼の途中に削り取られた跡を見つける

シルビアに様子が変だと言われて、鐘楼爆破の話を打ち明ける



月のない晩 リビオは1人で鐘楼を見に行く
パオロには、万一自分が捕まったら、これを知ってるのは
自分1人だと思わせる必要があると言い聞かせる







鐘楼の踊り場にある物置台に隠れていると、深夜に数人が火薬を運んでくる
道具を探してリビオを照らして見つかってしまう

「俺はこいつを知ってる」

聞き覚えのある声は、シルビアの兄ビットリオだと分かる
シルビアが兄に秘密を話してしまったのではないかと疑いショックを受けるリビオ











翌朝、パオロはリビオが帰らなかったことを知り
約束通り、祖母にはリビオはお客の家に泊まっているとウソをついて安心させる

祖母のもとにリビオから手紙が届いた
数週間、お客と一緒に旅をするから心配しないでほしいとある

パオロはシルビアに事情を話す



リビオは目隠しをされて国境近くの小屋に監禁されていたが
16日目に脱出して歩き続けて聖母の礼拝堂まで来る











鐘楼が無事だと分かり、礼拝堂でリビオの無事を祈るシルビアと再会を喜ぶ
悪者の中にビットリオがいたと話すと、にわかには信じない

シルビアが以前見つけた城跡の地下道に隠れるリビオ
夜にシルビアが来て、食べ物とロウソクなどを持って来てくれる

パオロは自転車から落ちて足を骨折して動けないことが分かる
リビオはロウソクで壁を照らし、フレスコ画を見つける







嵐が近づいて、祖母に会いたくなったリビオは家に帰る
シルビアから事情を聞いた祖母と再会を喜び合う
シルビアは来週、フランスへ発つことになった









リビオは祖母の服で変装して見張りの目を盗み鐘楼へ向かう
嵐で荒れて船から落ちて泳ぎはじめるが溺れかけたところにパオロが助ける









パオロも見張られていたため、くじいた足を骨折と偽っていたが
嵐の晩にリビオが鐘楼に行くだろうと思って来たと話す

悪者が話していた導火線を見つけて切っていると
「早く逃げるんだ! 山羊岩で会おう」という声がする









しばらく岩で待つがワナかもしれないと思い帰宅する
リビオは高熱で寝込むが、ビットリオが訪ねて来る

岩に来いと叫んだのはビットリオだった

ビットリオ:
奴らを責めないでほしい 悪意より貧しさのせいなんだ
仲間になったのをすぐ後悔して、悪だくみを失敗させようと決心した
今夜はオレが見張りだが、お前はよそに隠れなきゃならない

リビオは城跡にフレスコ画を見つけた話をする



専門家が調べて、フレスコ画はレオナルド・ダ・ヴィンチが描いたものと分かり
カステルランツァは一気に注目を浴びる
2つの村が一緒に売り込めば、外国の観光客がたくさん集まるだろうと噂になる

シルビアはカステルランツァに残ることになったと知らせに来る
ビットリオが父を説得してくれた
父も兄もまた働けるようになるだろう

リビオ:
鐘楼が危ない目にあわなければ、俺も守ろうとしなかったし
地下室に隠れたりすることもなかった

リビオは改めてシルビアを鐘楼に誘う









あとがき

ポール・ジャック・ボンゾン
1908年 フランス生まれ

『シミトラの孤児』
『ぼくは長崎へ行こう』

本書の原題は『湖の渡し守少年』


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