1986年初版 1995年 第6刷 掛川恭子/訳 K.M.ペイトン/絵
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
長いフランバーズ屋敷の物語もこれで最終章
目の前で生き生きと動いていたさまざまな人たちは本の中に戻り
私の感動もすぐに記憶のかなたへ行ってしまうと思うと切なくなる
素晴らしい物語を読んだ後はいつもそんな気持ちになる
マークがとんでもない体調にも関わらず馬に乗ったり
酒を飲んで自分の体を労らないことにずっと疑問を感じていたけれども
父から虐待的な体罰を受けていたことを思い出して
自分で自分の体を大切に思わない要因がやっと腑に落ちた
最後、クリスチナをいつまでも見送るディックの立ち姿と
大好きな馬で駆けるヒロインのシーンも胸をしめつけられた
【内容抜粋メモ】
登場人物
フランバーズ屋敷
クリスチナ・パーソンズ
ディック・ライト 以前屋敷で馬丁をしていた 現夫
イザベル ウィルとの間の娘
ティジー(トーマス・マーク) マークとバイオレットの子ども
ラッセル 亡父 亡妻イザベル
マーク 長男
ドロシー・ソーンダーズ ホテル「ブドウのふさ亭」経営者の娘 マークの妻
ウィリアム 元夫 戦死
メアリー 女中頭
ファウラー
ウィルヘルム ドイツ人捕虜 農夫
ロージー・ディーキン 父シメオンはディックの父的存在
クララ・ディーキン 未亡人 乳母
グレイスおば 洋裁で生計を立てている
ジェリーとファーガス マークの戦友
ファウラーは呼び戻される
乳母としてクララが雇われる
戦争の終結とともに夕食会などが復活したが、ディックは頑なに出席しようとしない
保守的なディックはクリスチナに屋敷のきりもりだけをしていてほしいと願う
クリスチナ:ディック、少しは楽しまなくては 人生は仕事だけじゃないのよ
ファーガスはダーモット邸に住んで車の修理をし、マークとともにトラクターなどを売る
2人はカーレースに夢中になり、ファーガスはクリスチナにも車の運転を教える
カーレースは復員してきた男たちの間で流行りはじめていた
ドロシーは経済的にも性格的にも自立していて、結婚してもそれは変わらず
子どもを産まない決断に関してマークとすさまじいケンカをしたが信念は変えない
ダーモット邸に移り、新居祝いパーティーには出席したディック
クリスチナとドロシーは子どもを連れて、男抜きでフランスで休暇を過ごす
ドロシー:
あなたは私の夫を愛していて、彼もあなたを愛している
そして私は自分のことしか愛していない
みんなでウィルの墓参りをする
*
トムに家庭教師を見つけるためにダーモット邸を訪ねるクリスチナ
帰りに馬車に乗ったクリスチナはマークの車とスピードを競って
自転車に乗った少年が飛び出してきたのをよけて生垣に突っ込んでしまう
ディックとの息子ハリーを身ごもっていて、異常な痛みと戦いながら
クリスチナは「マーク、行かないで!」とわめくのを聞くディックとドロシー
クリスチナの意識が戻り、ハリーが亡くなったと知る
ドロシー:人間は驚くほど回復力のある生き物よ
ディックは自分の後を継いでくれるはずのハリーの誕生にすべてを賭けていたが叶わず
またディーキン家を訪ねて慰めてもらう
ロージーが来て、2人の事故を見ていた少年から目撃情報を聞いたと話す
2人は周囲への配慮から、クリスチナが誤って生垣に突っ込んだとウソをついていたが
そのウソもバレ、ディックはショックのうちにロージーにキスする
後日、マークはドロシーが止めるのも構わず、ディックに謝りに来る
ディックはマークの腹以外を選んで殴る
マーク:
おまえの女房には少なくともお前の子を産む気があるが、こっちは終身刑だ
楽しめばいいだろ! 素晴らしい屋敷もクリスチナも こんな贅沢はないぞ
ディックはマークの意外な告白を聞いて、初めて好意と憐れみを感じる
*
子どもを失って3か月の間、クリスチナはずっと屋敷に引きこもる
ファーガスがホテルでのお茶に誘い出す
ファーガス:戦争が悪いのです
ファーガスは半分吹き飛んだ顔のために、ホテルのレストランに来るのもためらっていたこと
慕う女性がいることを明かす
ファーガス:
マークはあなたを愛しています
ディックにはよそに女がいると思います
あなたが罪の意識にさいなまれる必要はありません
あなたとディックには共通点がほとんどありません
悪いのがぜんぶ自分だと思うのは酷というものです
ファーガスはクリスチナを狩猟舞踏会とカーレースに誘う
*
もうクリスチナを愛していないディックは、フランバーズ屋敷から一番離れた場所にある
農場の小屋を再建し、子どもたちの乳母をするクララに母ネルの面影を映して惹かれる
クララは8年の結婚生活を送り、夫が死んで4年になる
狩猟舞踏会に出ると、ウィルがいないほかはすべてが昔のまま
ディックにもう負い目はない 好きなことをしよう
マークと一緒にキツネ狩りを楽しむクリスチナ
マークは農場の小屋に寄った際、ディックとクララが暮らしているのを知る
*
ヒルクライムのカーレース
女性ドライバーはほぼいない
雨でぬかるんだコースでスピードを上げて、泥をはねあげながらカーブを曲がり
なんとかゴールするクリスチナ
そこでファーガスの恋人で修道院附属の女学校の校長ヘレンを紹介される
レース後、マークはクリスチナを農場の小屋に連れて行く
クララと食事しているディックはこれまで見たことないほど楽しそうに喋っていた
マークはディックに3度目のケンカをしかけ、2人はぼろぼろになるまでやりあう
*
ドロシー:
ディックとは離婚しなくてはならないわね
私もマークと別れるわ
愛している男性に会うためよ
クリスチナはディックと離婚し、引き続き農場管理人の仕事をしてもらう
フランバーズ屋敷の女主人に戻り、クララをクビにしたことで
子育ても自分でできるし、農場にトラクターを導入することもできる
マークとファーガスの所で秘書も始める
ドロシーは下院議員ジムを紹介する
亡妻の姉妹との結婚条例を修正したのと同様に、亡夫の兄弟との結婚も適用しようとしていると話す
教会は猛反対しているが、戦争で大勢の若い男が死んだため、法律の修正が求められている
ドロシー:
悪い思い出ばかりのフランバーズ屋敷を売ってダーモット邸に住めばいい
ファーガスとヘレンが結婚して住めば、学校にするかもしれない
私は看護の仕事に戻ろうかと思っている
クリスチナはその話をディックにも伝える
クリスチナ:マークは私と結婚する
ディック:昔の思い出のために、もう一度キスしてくれ それで終わりにしよう
クリスチナは馬で駆け、振り向くとディックがこちらを見たまま立っているのが見える
ディックはチャンスは五分五分 性分を変えるわけにはいかない と言った
クリスチナ:夕陽が沈まないうちに厩に到着できたら、私は幸せになれる
■訳者あとがき
本作を読んで、手紙をくれた若い方のほとんどが
クリスチナがディックは優しいがマークは横暴だと非難したため
クリスチナがマークと結婚するのが気に入らない人も多いのではないかと想像する
クリスチナとディックの暮らしがぎくしゃくした最大の原因は
人生に対する考え方が離れていたこと
“育ちが違う”ことは、日本とイギリスとでだいぶ捉え方が異なる
イギリスではひと言、ふた言話しただけで、どの階級か分かる
社会的階級が違うと、軍隊内の階級も異なり、暮らしぶりも違ってくる
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
長いフランバーズ屋敷の物語もこれで最終章
目の前で生き生きと動いていたさまざまな人たちは本の中に戻り
私の感動もすぐに記憶のかなたへ行ってしまうと思うと切なくなる
素晴らしい物語を読んだ後はいつもそんな気持ちになる
マークがとんでもない体調にも関わらず馬に乗ったり
酒を飲んで自分の体を労らないことにずっと疑問を感じていたけれども
父から虐待的な体罰を受けていたことを思い出して
自分で自分の体を大切に思わない要因がやっと腑に落ちた
最後、クリスチナをいつまでも見送るディックの立ち姿と
大好きな馬で駆けるヒロインのシーンも胸をしめつけられた
【内容抜粋メモ】
登場人物
フランバーズ屋敷
クリスチナ・パーソンズ
ディック・ライト 以前屋敷で馬丁をしていた 現夫
イザベル ウィルとの間の娘
ティジー(トーマス・マーク) マークとバイオレットの子ども
ラッセル 亡父 亡妻イザベル
マーク 長男
ドロシー・ソーンダーズ ホテル「ブドウのふさ亭」経営者の娘 マークの妻
ウィリアム 元夫 戦死
メアリー 女中頭
ファウラー
ウィルヘルム ドイツ人捕虜 農夫
ロージー・ディーキン 父シメオンはディックの父的存在
クララ・ディーキン 未亡人 乳母
グレイスおば 洋裁で生計を立てている
ジェリーとファーガス マークの戦友
ファウラーは呼び戻される
乳母としてクララが雇われる
戦争の終結とともに夕食会などが復活したが、ディックは頑なに出席しようとしない
保守的なディックはクリスチナに屋敷のきりもりだけをしていてほしいと願う
クリスチナ:ディック、少しは楽しまなくては 人生は仕事だけじゃないのよ
ファーガスはダーモット邸に住んで車の修理をし、マークとともにトラクターなどを売る
2人はカーレースに夢中になり、ファーガスはクリスチナにも車の運転を教える
カーレースは復員してきた男たちの間で流行りはじめていた
ドロシーは経済的にも性格的にも自立していて、結婚してもそれは変わらず
子どもを産まない決断に関してマークとすさまじいケンカをしたが信念は変えない
ダーモット邸に移り、新居祝いパーティーには出席したディック
クリスチナとドロシーは子どもを連れて、男抜きでフランスで休暇を過ごす
ドロシー:
あなたは私の夫を愛していて、彼もあなたを愛している
そして私は自分のことしか愛していない
みんなでウィルの墓参りをする
*
トムに家庭教師を見つけるためにダーモット邸を訪ねるクリスチナ
帰りに馬車に乗ったクリスチナはマークの車とスピードを競って
自転車に乗った少年が飛び出してきたのをよけて生垣に突っ込んでしまう
ディックとの息子ハリーを身ごもっていて、異常な痛みと戦いながら
クリスチナは「マーク、行かないで!」とわめくのを聞くディックとドロシー
クリスチナの意識が戻り、ハリーが亡くなったと知る
ドロシー:人間は驚くほど回復力のある生き物よ
ディックは自分の後を継いでくれるはずのハリーの誕生にすべてを賭けていたが叶わず
またディーキン家を訪ねて慰めてもらう
ロージーが来て、2人の事故を見ていた少年から目撃情報を聞いたと話す
2人は周囲への配慮から、クリスチナが誤って生垣に突っ込んだとウソをついていたが
そのウソもバレ、ディックはショックのうちにロージーにキスする
後日、マークはドロシーが止めるのも構わず、ディックに謝りに来る
ディックはマークの腹以外を選んで殴る
マーク:
おまえの女房には少なくともお前の子を産む気があるが、こっちは終身刑だ
楽しめばいいだろ! 素晴らしい屋敷もクリスチナも こんな贅沢はないぞ
ディックはマークの意外な告白を聞いて、初めて好意と憐れみを感じる
*
子どもを失って3か月の間、クリスチナはずっと屋敷に引きこもる
ファーガスがホテルでのお茶に誘い出す
ファーガス:戦争が悪いのです
ファーガスは半分吹き飛んだ顔のために、ホテルのレストランに来るのもためらっていたこと
慕う女性がいることを明かす
ファーガス:
マークはあなたを愛しています
ディックにはよそに女がいると思います
あなたが罪の意識にさいなまれる必要はありません
あなたとディックには共通点がほとんどありません
悪いのがぜんぶ自分だと思うのは酷というものです
ファーガスはクリスチナを狩猟舞踏会とカーレースに誘う
*
もうクリスチナを愛していないディックは、フランバーズ屋敷から一番離れた場所にある
農場の小屋を再建し、子どもたちの乳母をするクララに母ネルの面影を映して惹かれる
クララは8年の結婚生活を送り、夫が死んで4年になる
狩猟舞踏会に出ると、ウィルがいないほかはすべてが昔のまま
ディックにもう負い目はない 好きなことをしよう
マークと一緒にキツネ狩りを楽しむクリスチナ
マークは農場の小屋に寄った際、ディックとクララが暮らしているのを知る
*
ヒルクライムのカーレース
女性ドライバーはほぼいない
雨でぬかるんだコースでスピードを上げて、泥をはねあげながらカーブを曲がり
なんとかゴールするクリスチナ
そこでファーガスの恋人で修道院附属の女学校の校長ヘレンを紹介される
レース後、マークはクリスチナを農場の小屋に連れて行く
クララと食事しているディックはこれまで見たことないほど楽しそうに喋っていた
マークはディックに3度目のケンカをしかけ、2人はぼろぼろになるまでやりあう
*
ドロシー:
ディックとは離婚しなくてはならないわね
私もマークと別れるわ
愛している男性に会うためよ
クリスチナはディックと離婚し、引き続き農場管理人の仕事をしてもらう
フランバーズ屋敷の女主人に戻り、クララをクビにしたことで
子育ても自分でできるし、農場にトラクターを導入することもできる
マークとファーガスの所で秘書も始める
ドロシーは下院議員ジムを紹介する
亡妻の姉妹との結婚条例を修正したのと同様に、亡夫の兄弟との結婚も適用しようとしていると話す
教会は猛反対しているが、戦争で大勢の若い男が死んだため、法律の修正が求められている
ドロシー:
悪い思い出ばかりのフランバーズ屋敷を売ってダーモット邸に住めばいい
ファーガスとヘレンが結婚して住めば、学校にするかもしれない
私は看護の仕事に戻ろうかと思っている
クリスチナはその話をディックにも伝える
クリスチナ:マークは私と結婚する
ディック:昔の思い出のために、もう一度キスしてくれ それで終わりにしよう
クリスチナは馬で駆け、振り向くとディックがこちらを見たまま立っているのが見える
ディックはチャンスは五分五分 性分を変えるわけにはいかない と言った
クリスチナ:夕陽が沈まないうちに厩に到着できたら、私は幸せになれる
■訳者あとがき
本作を読んで、手紙をくれた若い方のほとんどが
クリスチナがディックは優しいがマークは横暴だと非難したため
クリスチナがマークと結婚するのが気に入らない人も多いのではないかと想像する
クリスチナとディックの暮らしがぎくしゃくした最大の原因は
人生に対する考え方が離れていたこと
“育ちが違う”ことは、日本とイギリスとでだいぶ捉え方が異なる
イギリスではひと言、ふた言話しただけで、どの階級か分かる
社会的階級が違うと、軍隊内の階級も異なり、暮らしぶりも違ってくる