メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

ジュニア世界の文学8 さすらいのジェニー ポール・ギャリコ 学研

2024-10-13 17:59:31 | 
1971年初版 矢川澄子/訳 矢吹申彦/ケース・イラスト

最初、ヒトがネコになるという急なファンタジーに違和感を感じたけれども
猫世界にどっぷり浸かって、自分の腕にも白い毛が生えた気になって没入した

これだけのボリュームでひとつの物語を描き切る作家の力量が凄い

私なら、最後、ピーターの家に着いて、ヒトに戻り
ジェニーと暮らすエンディングを思い描いていたが
さらに二転三転する肉づけに引き込まれた

まるで映画みたいな夢を見ても、目が覚めると
あっという間に現実に戻って忘れてしまう感じ、分かるなあ
きっと魂だけパラレルワールドを体験してるんだろうな

あとがきにファム・ファタールのような記述があり、なるほど
ジェニーが女性性の象徴ということか

舞台がロンドンで、戦後間もない頃というと
先日読んだ『焼けあとの雑草』と同じだが
家も、親もあり、食糧も全然困っていない感じが意外
この違いは何だろう?


【内容抜粋メモ】

登場人物
ピーター 8歳の少年
父 陸軍大佐

ばあや

デンプシー 大きな黄色いオス猫
ジェニー
ビル・グリムズ老人



交通事故に遭ったピーター

猫が好きで、ずっと飼いたいと思っていたが
軍人の父はほとんど家にいないし、若く美しい母もいつも出かけていて
一人息子のピーターをばあやに任せきり
そのばあやは大の猫嫌い

ばあやが郵便屋を喋っている間に、小さな虎猫を追って道路を横切り、クルマに轢かれた

気づくと、ピーターは猫になっていて、ばあやに家からつまみ出されてしまう



自動車や馬車の車輪、人の足、大きな音、どしゃぶりの雨に怯えて
気づくと倉庫にたどり着き、大きな黄色いオス猫デンプシーのテリトリーに入って
猛烈なパンチを喰らって意識を失う
オス猫:今度こそきっと殺してやるからな!



意識が戻ると、ナポレオンのベッドの上で、メスの虎猫ジェニーに体中なめられると
母の腕に抱きしめられた時のような心地になる

すっかり元気になり、ジェニーが持ってきたネズミに戸惑いながら
ひと口食べてみると美味しいと思う

ここは公共の家具置き場で、ジェニーに事情を話すと
最初は信じないが、猫らしくない態度に納得する
ジェニー:ほんとに猫になる気なら、猫になるお稽古から始めなければ

「こまったらなめろ」
まずは体中のなめ方から丁寧に教えてくれるジェニー
背中の後ろも、しっぽも、体をよじればどこでも届くことが分かる



ジェニーの先祖はエジプトで神とあがめられていたと話す
小さな女の子バフにとても可愛がられていたが
2年前、一家が引っ越す時に置いていかれた身の上を話して涙を流す

ピーターは猫を愛する者はそんなことしない、きっと誤解しているんだと主張するが
ジェニーはもう二度と人間を信じまいと誓ったと話す

「飛び出す前に止まれ 止まらず、知らずに飛び出した子猫で、天国は満員」
ピーターはミルクが飲みたくなり、桟橋そばの掘っ立て小屋に住む
猫好きのビル・グリムズ老人を訪ねると早速ミルクとレバーを分けてくれる

グリムズ老人は2人に一緒に住まないかと誘うが
ドアが開いた隙にすり抜けて逃げるジェニー
ジェニー:私たちを買収しようとしたのよ 分からないの?

ジェニーはピーターが人の言葉を理解し、文字が読めることに驚き
生まれたグラスゴーの町が見たいから、船に乗って行こうと誘う
ジェニー:船に猫を乗せると縁起がいいそうだし、船乗りは縁起をかつぐものなのよ

グラスゴー行きのグリーノック伯爵夫人号に乗り
ジェニーはピーターにネズミの捕り方も教える
船賃代わりにネズミをたくさん捕って見せると感心する船員たち

農家になりたくて海が大嫌いな船長は、機嫌を損ねると皿を割るクセがある
一等航海士ストレイチャンはフェンシングが趣味
コックのミーリーは2人に毎日ごちそうを作ってくれる
二等航海士カールークは物語を書く
水夫長アンガスは大男だが刺繍が上手くて1つ3ポンドの収入にしている



大ネズミに咬まれたら病気が感染るから気をつけねばならない
ピーターは空中にジャンプして背中の急所を噛んで
テリアほど大きいネズミをしとめた

船員が沸いて、欄干で寝ていたジェニーはピーターがヤラれたのかと驚いたため海に落ちてしまう!
それを見たピーターはジェニーを助けるために海に飛び込む

意識を失ったジェニーと波間を漂っていると、船員たちが救命ボートで助けてくれる
サワリーズ船長は猫ごときで船を停めた罰にストレイチャンをクビにする

ジェニーは死んでしまったかに見えたが、ピーターがなめてあげると意識が戻る
珍しい事件に機嫌が直った船長はクビを撤回する



ストレイチャンは船が陸に着くと、2人を居酒屋に連れて行き
世にも珍しい事件を話すと、ウソつき呼ばわりされてケンカになる
警官が来て、ようやくケンカ騒ぎが止まり、2人はドアから逃げだす



ジェニーはふさぎこむことが増える
グラスゴーではゴミ箱を漁ったり、工業都市の煙ですっかり真っ黒になる2人

急に3匹の犬に噛みつかれそうになり、夢中でのぼり続けて
気づいたら、2人とも高い塔の上にいて、降りれなくなる
ジェニー:猫って時々、自分で高い所にのぼって降りられなくなるの

だが、ピーターが思った通り、消防車などが駆けつけて救出してくれる
取材が終わると、群衆はあっという間に散って、2人だけあとに残される

ジェニー:
私、グリムズさんの所で暮らしたい
もう二度とこんな目に遭いたくない

2人は再びグリーノック伯爵夫人号に乗って、ロンドンに帰る
だが、グリムズ老人は1人ベッドで安らかに亡くなっていた



ピーターは後悔や自責の念、悲しみに沈むジェニーの気をそらせるために
ミューズの自宅に戻りたいから助けて欲しいと頼む

ジェニーは犬についての知識や、体をふくらませて威嚇する方法も伝授する

知っている町に着いて、まず顔役の大きな黒いオス猫に挨拶する
彼は爆弾でやられた家が野良猫屋敷になってると教える

ピーターの家に着くと、「この家貸します」と張り紙がしてある
泣いて悲しむピーターをなぐさめていると、バフが出て来て、ジェニーとの再会を喜ぶ

ピーターが思った通り、バフはジェニーを捨てたのではなく
急病になって、回復した時にはもうジェニーがいなかったと話す

ジェニーは家に入れてもらえるが、ピーターは外に出されてしまう
ジェニー:爆撃あとの家に私も行くから待ってて

野良猫屋敷に行くと、ジェニーが家を抜け出している
ジェニー:帰る気はなくてよ ご迷惑でなければ一緒にいてもいい?



翌朝、ジェニーになにか食べ物をとってきてあげようと思ったが
ルルという子猫のワガママな様子に夢中になり、一緒に出かけるピーター

遊園地ではお腹いっぱいアイスクリームを食べさせる
ルル:昨日と今日は違うわ 明日はもっとよくなると思わない?

3日ほど経って、ルルは気まぐれに家へ帰ってしまう



ピーターは我に返って、野良猫屋敷に行くとジェニーはいない
バフの家、グリムズ老人のいた小屋
グリーノック伯爵夫人号も見に行くがいない

呆然として、ふらりと立ち寄った倉庫でようやく2人は再会する
ジェニーはもうすっかりピーターを許していたが心ここにあらずの様子

ジェニー:
デンプシーに命令されたから行かなきゃならない
あなたがあいつを殺すか、あいつがあなたを殺すしか解決の道はない

ピーターは軍人の息子として、デンプシーに挑む決心をすると
ジェニーは体を張ってピーターに猫の戦い方を猛特訓する



ピーターは不意打ちはせず、デンプシーに決闘を申し込むが
百戦錬磨のデンプシーはピーターを壁に追いつめて攻撃する

めちゃくちゃにヤラれたピーターは大ネズミを仕留めた時を思い出し
ジャンプして背中に乗って急所を噛んでデンプシーに勝つ

母の呼ぶ声に目を覚ますと、再び少年に戻って病院に寝ている
ばあやはピーターを喜ばせるため、子猫を飼ってもいいともっている
ピーター:ぼく、ジェニーが欲しい!

少し冷静になると、野良猫の孤独が伝わり、すっかり気に入る
母:なんて名前にする?

たしか名前があったはずだ、と思うが浮かばない
ピーター:スマッジー(汚れた顔)て呼んでやろう




あとがき

ポール・ギャリコ
名作『白い鴈』などで知られる世界的大作家の1人 NY生まれ
本書は53歳の時の傑作




コメント

サティン入江のなぞ フィリパ・ピアス/作 岩波書店

2024-10-11 13:23:53 | 
1986年初版 1987年 第3刷 高杉一郎/訳 シャーロット・ヴォーク/挿絵


家族の複雑に絡み合ったゴタゴタを幼い子どもにいつ、どう話すかって難しい
秘密にするほどトラウマになったり
きょうだいがいれば、理解度が違うから、話すタイミングにズレが起こるということもあるだろう



【内容抜粋メモ】

登場人物
フレデリック・ジェイムズ フレッド 父
キャサリン 母
ランダル 兄 ラン
レニー 次男 友ブライアン
キャサリン ケート 10歳
ランダル 母方の祖母
シロップ 愛猫
アンナ ケートの友

アルフレッド・ロバート ボブ伯父さん
ナニー・トランター 父方の祖母
アーノルド・ウェスト 近隣の農家 アーニー



ランダルおばあちゃんの部屋のドアはいつも隙間が開いてて
誰が通ったか見ている(ヤダな・・・/汗

紫のインクで「ミセス・ランダルへ」と書かれた封筒が
切手なしにポストに入れられる

ケートが祖母に持っていくと、奇声がして、母が呼ばれるが
何があったかは謎のまま



ケートは父が海で溺死した時、母が産気づいて生まれたと聞いている
教会の墓地で偶然墓石を見つけて、祖父のジェイムズとアルフレッドという名前が刻まれていて
それが父だと思う

ある日、母と祖母が墓石の前で話しているのを見る



大雪が降り、レニーとブライアンは自作のそりトボガンで滑りに行く
ケートだけ置いていかれるのに同情した母は
祖母の部屋から大きなお盆を持ち出してくる
母:私も子どもの頃、そのお盆で滑ったのよ

丘に行くと、友だちのアンナ、長兄ランダルとGFヴィッキーも来ていて
楽しい時間を過ごす

そりのシーズンが終わり、ブライアンは屋根裏部屋にトボガンをしまいに行き
いろんなモノがしまってあるのを見て、なにか言いたげにしていた

ケートはアンナに秘密を話そうと思い、墓地に連れてきたが、父の墓石が消えていた!
長兄ランダルに話すが真面目にとりあってくれない

ランダル:
パパは学校で教えていた それにボブ伯父さんがいた
サティン入り江で誰かが溺れ死んだんだ

ケートはレニーにサティン入り江はどこか聞くと
サティン村なら自転車で通ったことがあるという

墓石に刻まれていたのはボブ伯父だと分かる
では、父は今どこにいるのか?



ケートは居ても立っても居られず、自転車でサティン入り江に行くが誰もいない
近くに果樹園があり、せん定をしていた男が犬を連れて入り江に来たため
慌てて逃げるケート








ボロボロになって帰ってきたケートを心配する母
サティン入り江に行ったと話すと、二度と行ってはいけないと叱る

父の墓石が消えていた話をすると、父は外国で死に、海で溺死したのはボブ伯父だった
ランダルおばあちゃん:この子には忘れさせなきゃダメ!
でも、誰かを忘れるためには、まずその人を知ってなきゃならない
パパが死んだことには変わりないんだわ

墓石は新たに父の名前を刻まれて、墓地に帰ってくるが
死亡したのは、今年の1月になっている
祖母の元に来た手紙は父の死をしらせたに違いない

夜中に部屋で起きていると、ドアの隙間から誰かが覗いているのが見える
しばらくして家中を探しても誰もいないし、祖母も誰も見なかったという



市の売店を見に来たケートは犬を連れた果樹園農家の男を見かける

愛猫シロップが突然いなくなり、家族で探すも見つからない
ランダルおばあちゃん:死んだに違いない 諦めたほうがいいね

夜中に猫の声がして、屋根裏部屋からシロップが見つかる
母はレニーが屋根裏部屋に行ったのが原因だと決めつける









兄ランダルはケートをサティン村までサイクリングに誘い
老女のいる家に水を飲みに行くよううながす

彼女は父方の祖母ナンで、ケートに会えたことに感激する
紫のペンで手紙を書いたのはナン
果樹園で働いているのは父の友人アーノルド

ナン:
お前のお母さんは、一時ボブが好きだった
でも、ボブは結婚を望まなかったから、フレッドと結婚した

ケートはもらった父の写真を祖母の家に置いてきたため取りに行くと
父アーノルドがいて、逃げて来る

父はナンの家に会いに来てほしいというメモをランダルに渡すために家に来ていた
ドアから覗いていたのは父だった

ランダルは父とボブ伯父について話す

兄弟はいつもケンカしていた
入り江で泳いでいて、ボブが溺れ
父はボブを潮位線の上まで引きずり上げてから人を呼びに行ったが
満潮になり、ボブはわずか15cmの水で溺死していた

その後、村で父がボブを殺したのではないかと噂になり
父は家を出て、姿を消した

ランダルおばあちゃんは、トランター一家に嫉妬していたため
自分の家に娘家族を引き取った

ランダル:
パパは自分の家族をもう一度集めたいと思ってる
でも適当な時期までママ、レニーには言うんじゃないぞ



帰宅すると、屋根裏部屋のことでまた母とレニーがケンカしていて
祖母は自分がはしごを使ったと告白する
祖母:枕が2つ入っている青いスーツケースを取り出そうと思ったから

ブライアンは屋根裏部屋に行った時、スーツケースの枕の中に
たくさんの紙幣が入っていたのを見て
祖母が家出しようとしてるのでは?と推測する



家族でいちご狩りに行き、疲れたケートが寝ていると知らずに
母は祖母とスーツケースについて話しはじめるのを聞いてしまう







祖母:
私はひどく困った時のためにお金を貯めた
その金を気前よくやれば、フレッドは二度と近寄らないに違いない
あれはそういう男なんだから

ケートは父に撤回して欲しいと思い、サティン村の父に話す
怒った父は家に来て、母と話し合うため、ケートをアーノルドに預ける

2人は喫茶店で食事をする







アーノルド:
ボブはハンサムで頭がいいし、みんなの人気者だった
あいつが死んだことが忘れられない
僕はあいつを潮位線の下までひきずり下ろした
あいつはボクの唯一の親友なのに裏切って、笑ったんだ
誰かに話したいと思って10年もガマンしてきた
君に話して気持ちが軽くなったよ

ケート:私は黙っていないわ

アーノルド:話すって何を? 誰も信じないさ



一家はオーストラリアに引っ越すことに決める
父は祖母も連れて行き、近くに住まわせると約束するが、祖母は断る

母:いろんなことがあったけど、私はやっぱりお母さんを愛するのを止めることはできない

ケートは誕生日プレゼントに祖母からそりに使ったお盆をもらう

ナンが近いうち、アーノルドと暮らすことにすると話したため
アーノルドは嫌いだというと

ナン:
あの子の良心にひっかかってることが私にはよく分かる
アーノルドは私が年をとって必要としていると思っているけど
本当はアーノルドのほうが私を必要としている

ケートはシロップがナンになついていて、ナンも溺愛しているのを見て
オーストラリアに連れて行くより、祖母のそばにいたほうが幸せだと譲る











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ジュニア・ベスト・ノベルズ 2 鐘楼をまもる少年 ポール・ジャック・ボンゾン 岩崎書店

2024-10-10 14:43:59 | 
1972年初版 1975年 第2刷 末松氷海子/訳 小林与志/画

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面白くて一気読みした
こうして観光客に100%頼っている村は少なくないかもしれないな
そうした歴史的建造物や絵画を護るのもヒト、壊すのもヒト

ひとつ気がかりに思ったのは、鐘楼に仕掛けた火薬を残したままで大丈夫なの?
なにかの拍子に爆発しないかな?汗


【内容抜粋メモ】

登場人物

ソルビエルロ村
リビオ 14歳
パオロ

カステルランツァ村
シルビア
ビットリオ 兄









リビオはソルビエルロ村にある観光名所の鐘楼をとても自慢に思っている
ドイツ語、フランス語、英語を独学で勉強して、小舟を渡し、ガイドして小遣いを稼いでいる









500年前に建築家ミケロッツォにより建てられたという物語を語ると喜ぶフランス人観光客
リビオ:僕たちイタリア人はみな、いつも歴史の中に生きているんです

鐘楼の管理人は渡し守たちが高額のチップを受け取るのを僻んでいる

リビオは戦争で父を失くし、数年前に母が亡くなり、祖母と2人暮らし
祖母:お前みたいな孫を与えてくださった神さまに感謝しなけりゃ

フランス人からもらった高額なチップでシルビアにコーヒー挽きを買う
シルビアは幼馴染で、以前は同じ村にいたが、隣りのカステルランツァに引っ越した









カステルランツァにはサンタ・フランチェスカ教会があり、フレスコ画が有名
シルビアの父は駐車場、兄は旅館で働いていたが
去年、教会が火事で焼けてしまい、すっかり貧しくなって
数年前からフランスに出稼ぎにやる話がある
シルビアはたくさんの家族の世話に明け暮れている









リビオは帰り道に旅館の主人に呼び止められ、新婚夫婦を鐘楼の島へ渡してあげた際
人影がよぎるのを見て気になり、鐘楼を爆破させる計画を聞いてしまう
その中に聞き覚えのある声もあると気づく









親友パオロに相談し、一緒にカステルランツァにある憲兵に知らせに行くが
悪い夢だと追い返され、村長に会いに行くと出かけている
リビオ:2人で俺たちの鐘楼を救おう!







観光客が鐘楼の中で財布を落としたとウソをついて
管理人からカギを奪って粘土で型をとり、合いかぎを作る









日曜の午後はシルビアの唯一の休みなため、船に乗せて鐘楼に入る
213段の階段を上ると、レオナルド・ダヴィンチのフレスコ画がある

てっぺんから聖母さまの小さな礼拝堂も見える
リビオは鐘楼の途中に削り取られた跡を見つける

シルビアに様子が変だと言われて、鐘楼爆破の話を打ち明ける



月のない晩 リビオは1人で鐘楼を見に行く
パオロには、万一自分が捕まったら、これを知ってるのは
自分1人だと思わせる必要があると言い聞かせる







鐘楼の踊り場にある物置台に隠れていると、深夜に数人が火薬を運んでくる
道具を探してリビオを照らして見つかってしまう

「俺はこいつを知ってる」

聞き覚えのある声は、シルビアの兄ビットリオだと分かる
シルビアが兄に秘密を話してしまったのではないかと疑いショックを受けるリビオ











翌朝、パオロはリビオが帰らなかったことを知り
約束通り、祖母にはリビオはお客の家に泊まっているとウソをついて安心させる

祖母のもとにリビオから手紙が届いた
数週間、お客と一緒に旅をするから心配しないでほしいとある

パオロはシルビアに事情を話す



リビオは目隠しをされて国境近くの小屋に監禁されていたが
16日目に脱出して歩き続けて聖母の礼拝堂まで来る











鐘楼が無事だと分かり、礼拝堂でリビオの無事を祈るシルビアと再会を喜ぶ
悪者の中にビットリオがいたと話すと、にわかには信じない

シルビアが以前見つけた城跡の地下道に隠れるリビオ
夜にシルビアが来て、食べ物とロウソクなどを持って来てくれる

パオロは自転車から落ちて足を骨折して動けないことが分かる
リビオはロウソクで壁を照らし、フレスコ画を見つける







嵐が近づいて、祖母に会いたくなったリビオは家に帰る
シルビアから事情を聞いた祖母と再会を喜び合う
シルビアは来週、フランスへ発つことになった









リビオは祖母の服で変装して見張りの目を盗み鐘楼へ向かう
嵐で荒れて船から落ちて泳ぎはじめるが溺れかけたところにパオロが助ける









パオロも見張られていたため、くじいた足を骨折と偽っていたが
嵐の晩にリビオが鐘楼に行くだろうと思って来たと話す

悪者が話していた導火線を見つけて切っていると
「早く逃げるんだ! 山羊岩で会おう」という声がする









しばらく岩で待つがワナかもしれないと思い帰宅する
リビオは高熱で寝込むが、ビットリオが訪ねて来る

岩に来いと叫んだのはビットリオだった

ビットリオ:
奴らを責めないでほしい 悪意より貧しさのせいなんだ
仲間になったのをすぐ後悔して、悪だくみを失敗させようと決心した
今夜はオレが見張りだが、お前はよそに隠れなきゃならない

リビオは城跡にフレスコ画を見つけた話をする



専門家が調べて、フレスコ画はレオナルド・ダ・ヴィンチが描いたものと分かり
カステルランツァは一気に注目を浴びる
2つの村が一緒に売り込めば、外国の観光客がたくさん集まるだろうと噂になる

シルビアはカステルランツァに残ることになったと知らせに来る
ビットリオが父を説得してくれた
父も兄もまた働けるようになるだろう

リビオ:
鐘楼が危ない目にあわなければ、俺も守ろうとしなかったし
地下室に隠れたりすることもなかった

リビオは改めてシルビアを鐘楼に誘う









あとがき

ポール・ジャック・ボンゾン
1908年 フランス生まれ

『シミトラの孤児』
『ぼくは長崎へ行こう』

本書の原題は『湖の渡し守少年』


コメント

ジュニア世界の文学 12 海の休暇 キャサリン・ストール 学研

2024-10-09 14:37:10 | 
1971年初版 新谷行/訳 矢吹申彦/ケース・イラスト

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作家は心理学も学んでないと登場人物の複雑な心理の変化を描くことはできないな
とくに10代の心理は複雑すぎて、読みにくい部分も多々あった

アメリカの女の子って10代でBFがいるのが当然みたいな文化が今も昔もある感じ
こういう女子トークに乗っかっていけないとはじかれる習慣は私も違和感を感じる

これだけ偶然が重なったらもう必然なのでは?
占いが胡散臭かったとしても、非科学的な事象はあると思う

物わかりのよすぎる大人に対する苛立ちは、このシリーズの『長かった週末』でもあった
子どもを心配する気持ちは自然で、それを抑制するほうが不自然に思える

とにかく、相手が誰であってもお金の貸し借りはトラブルのもとだな/汗


【内容抜粋メモ】

登場人物
マリアンヌ 15歳
パメラ叔母・ステファン叔父(精神分析学者)
アリス
ジョシー
クリスチーヌ ジョシーの妹
ビリー
アラン ビリーのBF
マーク



マリアンヌは休暇を叔父夫婦の家で過ごすために海辺の町ブライトンに来ている
5年前に家族と来た時はいい思い出がたくさんあったはずなのに退屈な日々

友人アリスは病気の話ばかりしている
ウールワースの店で働いているジョシーとの会話も子どもっぽいと思う

マリアンヌがBFに興味がないと言うとホルモンがおかしいと言われ
お小遣いが週に5シリングしかもらってないことに嫌味を言われる

叔父は精神分析学者、叔母は家庭訪問で忙しく
マリアンヌは何度も読んだ『ジェーン・エア』を読み返し、没頭することで現実を忘れる

2人は「自由放任主義」がモットーで、マリアンヌの生活に口出しするのを抑えている
なにか質問しても、質問で返してきて、はっきりしないのがモヤモヤしている



友人ビリーはアトランタ夫人の占いにハマっていて
言われたことが全部当たっていたと興奮して話す
BFのアランとの関係を終わらせて、美容師のキャリアや舞台に立つ夢を伸ばすかどうか迷っている

他の3人も占ってもらおうと、それぞれ相談したい事柄をメモして渡す
マリアンヌはここで友だちができるかどうかを聞いた



マリアンヌが町をぶらついていると古本屋がある
アーサー・ランサムに目が止まる(!

『秘儀研究』という本には、あらゆる占星術や魔術のやり方が書かれていて興味を持つが
お金が足りずにその場を去る

叔母と映画館に行き、ジェームズ・スチュアートの映画『ノー・ハイウエー』を観て感動する
(気になるな 『No Highway in the Sky』





ジョシーの家を訪ねて、妹クリスチーヌと会って好印象を受ける



3人はアトランタ夫人の占いを受ける

マリアンヌは一番安い手相を見てもらい、以前、病気で長く臥せっていたことや
想像力豊かで、時に厄介を巻き起こすことなどを当てられて驚く
いかさまっぽい感じがないことも意外だと思う

さらに知りたければ水晶占いがあるが1ポンド持っていないのを知り
ジョシーはいつ返してもいいからと貸してくれる



また古本屋に行き、借りたお金で『秘儀研究』を買ってしまう
そう話すと、ジョシーはさらに1ポンド快く貸してくれる
誘惑を退けるほどの強い意志があればいいのにと後悔する

アトランタ夫人は水晶を覗き、近いうちにBFができると話す
アトランタ夫人:あなたも習練次第で別の世界に入って見ることができるのよ

帰り道、アランに声をかけられ、ダンスに誘われてOKしたことで
アランを好きなアリスが不機嫌になる

水族館で耳をつんざく大音量の音楽がかかり、マリアンヌはアランと夢中で踊る
アラン:君はかわいいね

酒を飲むのも断り、家まで送ってもらい、キスを迫られても断るが
アランはまた会いたいと言って別れる



翌日、アランと連絡しようがないことに気づき
本当にまた誘ってくれるか心配になる

『秘儀研究』を見て、会いたい人から便りが来る方法に羊皮紙が必要で
なけなしのお金で文房具屋でニセモノを買い、骨董品屋で本物を買う

針で指を刺して血で名前を書いて、かまど代わりのボイラーにくべると
アランがもう玄関で待っていて、今夜また会おうと約束する/驚

化粧品の講習にふらっと入るとアリスがいる
ジョシーから借りたお金を早く返したほうがいいとプレッシャーをかけて
ビリーからアランを奪ったと皮肉る

ジョシー:
2度目に借りたお金は、アリスから借りたもので
マリアンヌに貸したと話したら、すぐ返して欲しいと言われた
私たちは、あなたがアランと出かけたことをよく思ってない
彼はビリーのBFなのを知ってるでしょ?

ビリーは別れたいと言っていたが、それは本気じゃなかったことなど
マリアンヌは知らなかったと弁明しても誤解は晴れないまま

マリアンヌはアリスを殺したいほど憎み、叔母からろうそくを持ち出して
アリスの人型につくり、針を頭部分に刺す(!



アランは自慢のバイクにマリアンヌを乗せて寒い中スピードを出して
クルマにぶつかりそうになってケンカになる

ショックのマリアンヌを気遣うことなく、クルマを買う話に夢中
映画館で待ち合わせようと約束する

映画館の場所が分からず、通りかかったクリスチーヌに教えてもらう
ジョシーは片頭痛のアリスを見舞いに行ったと聞いて
魔術が効いて殺してしまったではないかと怯える
クリスチーヌ:あの人は病気を楽しんでるのよ あなたとは何の関係もないわ

映画館にアランが来なくて、水族館、海辺などを何度も回るマリアンヌ
フラれたのだと失意のどん底で海辺を泣きながら歩いていて
青年にぶつかり家まで送ってもらう



寂しいから帰宅してもいいか母に訊ねる電報を打つため郵便局に行くと
昨晩の青年と再会する

ロンドンに住んでいて、小児麻痺で寝ていた頃の家庭教師が同じだったことから
2人が近所に住んでいることを知り、偶然と思えないマリアンヌだが
よくあることだと否定するマークで意見が分かれる

マーク:
もし20匹のサルがタイプを長い間打ち続ければ
シェークスピアの作品を書くこともあり得る(そんな途方もない話・・・?
占い師が儲けるのは、君みたいな騙されやすい人がいるからだ

それを証明するために、ちょっとした占いをしてみるが
“お金でトラブルになる”とかまた当たる

マーク:意味が漠然としてるから、誰にでも当てはまるように思えるだけだよ

マークにうながされて、ジョシーにアリスの具合はどうかと聞くと
いつもの片頭痛で大丈夫だと分かる



マークとハイキングに出かけて、以前来た場所を周り、燈台を見て感動する

アリスにお金を返すには、『秘儀研究』を売ればいいとマークが提案
売る前にちょっと見せてほしいと言われ、喫茶店で話してケンカになる

マーク:
君は新聞で読んだことはすべて信じる老婦人みたいだ
アトランタ夫人が君をごたごたに巻き込んだと思えるね

蓋然性の法則
蓋然性(がいぜんせい)とは、特定のことが起こったり真実として認められたりする確実性の度合いを指す言葉

本を売って、ジョシーにお金の一部を返す
アランとビリーはよりを戻し、アリスは嫉妬から意地悪したのだと明かし
新しいBFについて教えてと迫るが、マークをBFだと思われるのがイヤで店を出る

この友情に固執しても、もはや得られるものは何もない
もし会っても、すぐに飽きるか、それぞれの違う人生観でまたケンカになるだろう




マリアンヌはまたアトランタ夫人に手相を見てもらう
3つの石を水に落とす「水紋占い」でもことごとく当たり
少年もマリアンヌが好きで、また出会うだろうと請け合う

ロンドンに帰る土曜まであと2日しかないのに、木曜は町中を歩き回ってもマークには会えず
絶望していると、金曜の朝、電話があり、昨日会いたかったけど捕まらなかったと話す

金曜はマークと出かけ、土曜は駅まで見送りに来てくれる

別れ際に渡した本の中にはツタの葉が入っている
それは『秘儀研究』に書かれていた再会の魔術だった



あとがき

キャサリン・ストール
1913年ロンドン生まれ
本書の原題は『マリアンヌとマーク』
本書の前編にあたる『マリアンヌの夢』もある



コメント

ゆがめられた記憶 マーガレット・マーヒー/作 岩波書店

2024-10-08 16:44:33 | 
1996年初版 清水真砂子/訳 アラン・フード/カバー絵


どこで本書を知ったかもう思い出せないが
タイトルに惹かれた

前半はひどく酔ってボロボロの主人公や
ゴミ屋敷に住む老女のリアルな描写に戸惑ったけれども
姉の謎の死の真相、老女の行く末が気になって一気読み
ヒトの記憶の曖昧さについて考えさせられる

時々、会話や主人公の想像力が飛びすぎて
ついていけない部分もありつつ
社会に順応できないもどかさはホールデン・コールフィールドを思い浮かべた



【内容抜粋メモ】

登場人物
ジョニー 19歳
ジェイニーン 姉

ベネディクタ家
ボニー 養女
サマンサ 養女 妹

ソフィー
エロル・ウエスト 夫
ネブ・ファウラー


ジョニーはひどく酔い、ケンカ沙汰を起こして、父に説教され
ボニーに会いたいと思って家まで来る
最後に会ったのは姉ジェイニーンの葬式
もう5年が経った

ベネディクタ家はマオリに土地を返そうという運動のデモに参加した若者が集っている
ボニーは街中のフラットに住んでいるというが詳しくは教えてくれない
ジョニーは電話帳を覗いて住所や電話番号を手にメモる

マックスがクルマでタクシー乗り場まで送ってくれる
ジョニーとジェイニーンは鶏肉の有名なCMで踊っていたと知って驚く

ジョニーは今でもふと歌ったり、タップダンスで踊ることがある
母は「笑いなさい! 幸せそうな顔をするの」というのが口ぐせだった



ボニーはジェイニーンと親友同士で、ジョニーと3人でよくごっこ遊びをした
「危険」という立て札を無視して崖っぷちを歩き、ジェイニーンは転落死した
ジェイニーン:あんたになんか、つかまりっこないわよ

ボニーはジョニーも崖の上にいたとウソの証言をした
ジョニーは自分が姉を押したのではないかという記憶にさいなまれ続けている
それをボニーに確認したかった

ボニー:私たちはいろんな印で動いていくものよ
ボニーはジョニーにとってピュートーンだった



気づくと、安全地帯の木の茂みで寝ていたジョニー
ふらふら歩いていると、スーパーから出て来た老女がニコニコしながら歩いてくる

ソフィー:あなたよねえ? あなたも来る?

後をついていくと、コルビルというパブの名前を見て
学生の頃、自分をひどくいじめたネブ・ファウラーを思い出す
ネブはジェイニーンが好きだったが、ジェイニーンはコルビルを下に見ていて、ネブを嫌っていた

ソフィーの家は壁から大きな蛇口が出ている
夫エロル・ウエストは配管工だったが亡くなった

ソフィーはアルツハイマーのような症状を持ち
家の中は荒れ放題、たくさんのネコを多頭飼いしている状態

何度もお茶をいれると言って、お湯だけを出し
大好きなビスケットだけを食べている様子

ジョニーは倒れこむように寝室で寝てしまう



ソフィーは鍵を首から下げていることを毎回忘れて
隣人が盗んでいるのではないかと疑っている

ジョニーはそのまま家に帰ろうとして、ソフィーが心配になり
一緒にケーキを食べて、スーパーで買い出しする
ソフィーは郵便局に多額の預金を持っていると分かって驚く

持ち家なのに、毎週のように大家スパイクが家賃をもらいに来るのを不審に思うジョニー
夫婦に子どもはいない ジョニーをいとこのアルバと思い込んでいるソフィー

台所を片付けて、古いトランジスタラジオが出てくる
棚の中には600ドルの紙幣が置いたままになっていて
このまま盗んでも誰も気づかないと誘惑されるがそのままにする

ソフィーがどこからかもらってきた本にボニー・ベネディクタと書かれていて驚く
マネキンが置かれていた隣りの家に住んでいると分かる



ソフィーが半裸で床を這っていて驚くジョニー
そのままお風呂に入れて、寝室も片付けていると
ベッドにおねしょの跡を見つける

再び家に帰ろうとしてパブで食事をしていると
ソフィーのトランジスタラジオを見つける
ネブが来て、彼の友人2人がソフィーのものを盗んでいる様子

ソフィーのような老人の面倒を見てくれる施設を見つけるつもりでまたソフィーの家に戻る
若い頃の写真の中に、ジョニーのとよく似たブレザーを着ている青年アルバを見つける
ソフィーは結婚前、アルバに恋愛感情をもっていた



ジョニーは本を返しにボニーと再会する
ソフィーのことを話すと、牛乳と郵便物を勝手に持って行ってしまう迷惑なおばあさんという以外に
事情を知らなかったことを反省する

この家は会計士たちの会社によって1年以内に取り壊されることになっている
ボニーは近所のシルバー福祉センターに知り合いのデイントンがいると教える

ボニー:
あなたは本物のダンサーだった ジェイニーンも私もあなたに嫉妬していた
妹のサマンサはヒネランギ・ホテネと改名して、活動家として報道されている

ジョニーはボニーを夕食に誘うが、肝心の姉の話はできないまま
ソフィーの荷物から古いテレビが出てきて、2人でアニメ『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』を見る
(!! このアニメずっと観たくてどこにもないんだよな



ソフィーは全裸で立っている
ソフィー:ほかの人を愛するなんて無理よ・・・

シルバー福祉センターのデイントンを訪ねると
先日、クルマで送ってくれたマックスだった
ソフィーについて相談すると

マックス:
この町には施設が3つあるが、どこも順番待ちなんだ
彼女はアルツハイマーだと思う
明日にでも家に寄ってみるよ

ソフィーの家に戻ると、男の声がする
スパイク:金をくれれば領収書は出しますよ

スパイクはネブだと思っていたが、パブで見かけたネブの友人の1人だった
新聞の集金に来た時、ソフィーが家主と思い込んだのがきっかけ
ジョニーは二度と来るなと脅して帰す



ソフィーにネイビーブルーのワンピースを着せ、夕食を作るとボニーがやって来る
テレビでホテネが逮捕されたニュースが流れる
ボニー:私は混血のため、養子としては不適格者だったが、両親はそういう子を欲しがっていた

ジョニー:
昔のことにこだわって、そこから動けないんだ
ジェイニーンが落ちて、あんたが俺を抱きしめてくれて

ジョニーはボニーに無理やり迫って、ブラウスを破り、ボニーは家に帰ってしまう



ネブが友人2人を連れて家に来る
ネブ:奴はここのばあさんと親戚でもなんでもないんだ

ジョニーはバルコニーから3人に向かって飛び、ネブと取っ組み合いになる
ソフィーもほうきでネブを叩き、ボニーの呼んだ警察が駆けつける

ジョニー:おれ、やっぱり姉さんを押した気がするんだよ と泣き崩れる
ボニー:ジェイニーンはつまずいて転んで、海に落ちただけ



6週間後、ジョニーは再びソフィーを訪ねる
何度もかけあって、マックスが手配したお陰で
今では週に1回、看護婦がソフィーを風呂に入れ
もう1人が家の掃除をして、ボニーも時々訪ねて世話をしている

ソフィー:
私、その人に手を貸してあげてるの
必要な時に助けてあげられないなんて、そんなひどいこと、ないでしょう?

(ヒトって他者に必要とされていることに幸せや充足感を感じて生きるものなんだな

ジョニー:
君がウソの証言をしたのは、特別なわけがあったに違いないと思ってた
両親は、俺にただ仕事について楽しくやってくれさえすればいいと方針を変えた

ボニー:
私はピュートーンのフリをしていただけ
あなたは私のタイプじゃないし、もうBFがいるの知ってるでしょ

ジョニーは建設現場で働き始め、タップダンスのレッスンにも通い始めた
ソフィーの家で暮らすことがリスタートのきっかけになったと思い返す
原則として人はひとりで生まれ、ひとりで生き、ひとりで死んでいくということだ

ジョニーはソフィーをバンドのリハに誘うと喜ぶ



訳者あとがき
本書の原題は『Memory』
失せない記憶に苦しむジョニーと、失せゆく記憶にとまどう老女ソフィーの物語
無機質に見える都市の中にもたくさんの有機体が呼吸し、ドラマを生きていることが分かる


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世界文学の玉手箱 21 白いきば ジャック・ロンドン/著 河出書房新社

2024-10-07 10:27:05 | 
1995年初版 阿部知二/訳 山本容子/装画

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オオカミの生活が生き生きと描かれていて夢中で読んだ
あとがきに必ずしも事実とは言えない部分があると書いてあったが
どの部分かは分からないくらいリアル







【内容抜粋メモ】

■第一部 雪のあれ野
ヘンリとビルは男の遺体が入った棺を運ぶために犬ぞりを引いている
ガリガリに飢えたオオカミの群れが追ってくる

イヌは6匹だが、エサをあげた時、7匹いたと話すビル
知らないうちにオオカミが混ざっていたことに気づかなかった

銃の弾は3発だけ
キャンプをするたび、翌朝にはイヌが1匹いなくなる

キャンプの火に慣れためすオオカミに惹かれて
またイヌが1匹群れから離れてしまい
それを追ったビルもイヌもオオカミに食われてしまう(!

ヘンリは棺を木の上に引っ張り上げ、犬ぞりを走らせる
片足を噛まれても眠気がひどくなる一方

気づくと大勢が助けに来ていた



■第二部 わかいオオカミ
ビルを襲っためすオオカミを自分のものにしたい大オオカミ、片目の年寄りオオカミ、若いオオカミ
3匹のオスは殺し合って、片目の年寄りオオカミが勝ち残る

インディアンのキャンプ地に来て、罠にかかったウサギを食べる
洞穴で5匹の子どもを産む

ひと月経って目があき、母乳から肉を食べるようになる
飢餓となり、灰色の子どもだけが生き残った

母親は子どもを置いてエサをとりに行くようになり
灰色子は1人で洞穴から出て、冒険を始める

ライチョウの雛を食べて、親に殺されそうなところをタカが来て救われる
肉の掟は「食うか食われるか」だと学ぶ



■第三部 あれ野の神たち
インディアンのキャンプに出会い、母親をキチーと呼ぶ
キチーの父はオオカミ、母はイヌで、インディアンに飼われていた

グレービーバーは灰色子にホワイトファング(白い牙)と名づける
人間の手でなでられると、なんともいえないいい気持ちになる
いろんな道具を使う人間は神のように見える

リプリプという犬はホワイトファングを敵対視していじめる
火が危険なこと、ほかの犬たちと戦うことなどを学ぶホワイトファング

グレービーバーはキチーをスリーイーグルズに譲る
ホワイトファングは初めて母と別れて暮らす



秋の狩りの季節になる
ホワイトファングは一度はキャンプを離れるが、人間に守ってもらいたいという気持ちがわく
雪が降るとエサを見つけるのも難しくなり、グレービーバーの元に戻る
人間はルールを破ると殴るが、肉をくれる

グレービーバーの息子ミトサーは、リプリプを犬ぞりのリーダーにして
ほかの犬から憎まれるようにして、ホワイトファングの仇をとる

ホワイトファングは主人とその家族や持ち物を守るようになり
グレービーバーはホワイトファングを番犬として訓練する
ホワイトファングは愛されたことも愛したこともなく育つ

ホワイトファングは1歳になる
キチーと再会して喜ぶも、キチーは新たな子どもをはらみ
ホワイトファングをすっかり忘れて威嚇する

ホワイトファングが唯一苦手なのは、人間に笑われること



ホワイトファングは3歳になる
またキャンプに飢餓が襲い、人間はイヌまで食べ始めた(!
ホワイトファングは野生に戻り狩りをする



■第四部 白い人間たち
ホワイトファングは5歳になり、けんかの名人になった

1898年はゴールドラッシュにわき、白人たちが押し寄せる
グレービーバーの売る毛皮などは10倍の値で売れる

白人の連れている犬は戦い方を知らないため
ホワイトファングの牙にあっけなくヤラれた

醜い男ビューティー・スミスはその様子を見て
グレービーバーにホワイトファングを売ってくれと頼むが断わられる

スミスはウイスキーを飲ませて、グレービーバーは酒に金を使い果たし
ウイスキーのためにホワイトファングを売ってしまう

ホワイトファングは3度逃亡するが、そのたびに連れ戻され、鎖でつながれる
マスチフと戦わせて賭けをして儲けるスミス

ホワイトファングは「けんかオオカミ」として有名になり
檻に入れられ、見世物にされた

ティム・キーナンのブルドッグと戦う
ブルドッグは一度食いついたら放さない

犬ぞりで来たスコットが闘犬を止め、スミスを殴り倒し
マットと一緒に2匹をやっとのことで引き離し
150ドルでスミスから買う

スコットは腕利きの鉱山技師
怪我が治ったホワイトファングはマットの足に噛みつく

スコット:殺してやったほうが慈悲というものだ
マット:人間に慣れるチャンスを与えましょう

スコットも手を噛まれるが、忍耐強く愛情をかけると
ホワイトファングは人間を信用することを覚え
心の中の虚ろが満たされる気分になる

ホワイトファングはついにスコットを愛するようになる
スコットが長いこといない間、エサを食べるのを止めて病気になる
スコットが戻ると元気を取り戻す

スミスが夜中にホワイトファングを取り戻しに侵入して襲われる



■第五部 飼いならされて
スコットは仕事が終わり、カリフォルニアの家に帰ることになった
ホワイトファングはまた別れを予感して遠吠えする

スコットが汽船に乗ると、窓を破って傷だらけになったホワイトファングがいて
一緒に連れて帰る

父のスコット判事、母、2人の妹、妻と2人の子どもにも徐々に慣れるが
めすのコリー犬はいつまでもホワイトファングを敵対視する

屋敷で飼っているニワトリを全滅させたり、馬番の腕に噛みついたりするたびに
スコットが言いきかせると、新しいルールに慣れ
ぎこちなく笑うことも覚える

スコットが落馬して足の骨を折った時、ホワイトファングに家に戻るよう命令し
家族を呼んできたお陰で助かる



囚人ジム・ホールが脱獄
彼は無実だったが、警察がニセの証拠をつくったため
スコット判事は知らずに有罪判決を下し、恨みを買った

スコットの妻はホワイトファングを玄関ホールで眠らせていると
夜中にホールが侵入し、ホワイトファングにノドを噛みきられた

ホワイトファングもピストルで3発撃たれて重体
外科手術を受けて、家族同様に看護され、オオカミの力により奇跡的に助かった

屋敷に帰ると、ホワイトファングとコリーの間の子犬が産まれていた




解説 夢枕獏

ジャック・ロンドン
1876年 占星術師の私生児としてアメリカで生まれた
後に母がジョン・ロンドンと結婚した
様々な職業を転々とし、『荒野の呼び声』を書いた
本書はその3年後に出版

動物生態学的に、このようなことはないであろうというか所もいくつかあるが
必要以上の擬人化をせずに描いている

インディアンがかなり乱暴に犬を扱うのを見たことがある
チベットでも棒で思いきり殴るのを見た

ボーキュパイン川、ユーコン川も実在

アラスカやカナダのインディアンの多くはアルコールで酔っぱらいドラッグをやっていた
(星野道夫さんの著書にも書いてあったな・・・


















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ジュニア世界の文学9 早春 ハルディス・M・ヴェーソース 学研

2024-10-05 09:28:10 | 
1971年初版 山内清子/訳

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ジュニア世界の文学シリーズはどれをとっても秀逸
自分を重ねて読み進めて、客観視することができる



【内容抜粋メモ】

登場人物
ブルブラッセン家
父エイリック

インゲル 長女 15歳
トーラ 妹
クヌート 弟 事故で背中を痛めた

スヴェーレ・フグリ 隣家に住むインゲルの幼馴染 17歳 弟オラフ
ランディ 母が神経症を患っている
ヨルディス
エルセ 母子家庭
ロス夫妻



スキー教室の帰り道、父が正体なく酔いつぶれて歩いているのをマネて笑う子どもたち
恥をかいたインゲルは秘密の岩かげに行って泣く



去年の春
父はお気に入りの弟クヌートを連れて飲みに行った
亡くなった男児の代わりに可愛がっている

クヌートは自動車に乳母車ごと跳ね飛ばされて崖に落ちて強く背中を打った
母:酔っぱらって、子どものことを忘れたからこんなことになったんだわ!

クヌートはしばらく入院して、退院後も背中にコルセットをしている
引きずらない母は子どもっぽいと思うインゲル

学校の宗教の時間に「7度を70倍するまで許すべきだ」と教わったが
許すとは、なんと難しいことだろう

下の子たちが生まれる前はお父さん子だったインゲルは
その日から、父への不信が心の傷となって、関係が変わってしまった

真相を知るために事故現場に行き、マグヌス夫人から話を聞く
お酒を出した時にエイリックが通りかかったため夫人が誘った
父は子どもがいたためそれほど飲みはしなかった

マグヌス家の幼い双子は無茶なほどクヌートを乗せた乳母車を何度も押していた
そこに自動車が通りかかり、乳母車をはねて過ぎていった

乳母車が崖に落ち、父は慌てて追いかけて腕をケガした
母に話すと「運転手が悪い」と言う
母:父さんを許してあげて

母は貧しい家庭に育ち、父は酒乱だったため、インゲルよりはるかにツライ思いをした
父はそれほど飲まないし、飲んでも暴力を振るったりしないからいいと言う



1人の見知らぬ男が割れやすい氷の上を滑っているため大声を出して注意する
その際、スキーで転んで足を捻挫したインゲル

ヒュッテを買ったロス氏は、命を救ってくれたお礼に家に連れて行く
都会から来たお金持ちの夫妻とオシャレで居心地の良いインテリアに驚くインゲル

夫人は湿布して、夕食をごちそうしてくれる
食後にラジオでクラシックを聴いて、泊まっていくようすすめる

夫妻には、以前、同じインゲルという名前の女の子がいたが
生後数か月で亡くなっている

夫人は同じ名前のインゲルに偶然とは思えない縁を感じる
インゲルに使ってない部屋を与えようかとまで考える

インゲルは父の件を話す

ロス夫人:
お父さんをあまり厳しく責め過ぎているのでは?
私たちは何度でも許さなければならない
あなたの値打ちは、あなたの人格で決められるものよ


母が迎えに来て、家に戻る
母:インゲルが父に逆らうほど、父は酒に溺れてしまう

あの事故の後、汚名をそそぐために父は謹慎していなければならなかったはずだ
それが出来なかったのは、父の意志の弱さだ



隣家の幼馴染スヴェーレが様子を見に来る
小さい頃はよく遊んだが、学校に行くようになってから
それぞれ別の友だちと付き合うようになった

インゲルは1室で家族みんなと寝るのはイヤだと主張し
屋根裏部屋を自分用にしてもらう

ロス夫人はヒュッテを引き払う際、インゲルのためにいろんな小物をくれた

母はロス夫人と話した時、インゲルに部屋を使ってもらい
そこから学校に通い、ピアノも習えばいいと言っていたと伝える
インゲルは夢のような話を信じる

父はインゲルのために本棚を作ってあげるが
娘が部屋にカギをかけていることにショックを受ける

“自分の部屋にいるということが、どんなに自由なものかということは
それを経験したことのなり母に説明しても分かってもらえないだろう”



成人の儀式である「堅信礼」が近づき、インゲルは友人と着ていくドレスに刺繍をする
ランディとヨルディスが踊りだし、エルセは口笛を吹き
インゲルはロス夫人からもらったハモニカを吹く

気づくと隣家でスヴェーレたちが見ていて、父母に注意される
ランディは美容師、エルセは洋裁師、ヨルディスは結婚する夢を話す

インゲルはロス夫人の話を秘密にする

“仕事は、なにかの罰でさせられるものではない
 生活とは、そんなものではないはずだ
 母のようにはなりたくない”

父はインゲルの堅信礼用に高価な服や靴を揃えてくれた
今日1日くらいうわべだけでも仲良くしようと思ってもなかなかうまくいかない

「われらの負いをも許したまえ われらに負いめあるものを・・・」

晴れ着を着てインゲルは無事に堅信礼を終える



5月17日の憲法記念日
パーティーでイバールからダンスに誘われたランディは断る
意地悪ばかりするからってそれは非礼だと責めたインゲルもまた
スヴェーレの誘いを断ったのに、同情からイバールと踊り
ランディとケンカになる

エルセの母はプロポーズを受けて、再婚することになる



母から生地をもらい、エルセに手伝ってもらってオシャレな夏服を作ってもらう
秋から学校に通うと決めたエルセに驚く

ロス夫妻を訪ねると、13歳のリーブという親戚の少女がいて
「うちの子どもになる」と聞いてショックを受け、インゲルはまた岩かげに来る
ロス夫人:リーブのお友だちになってくださいね

部屋に来てと言ったことを忘れたのか?
ロス夫人も所詮あてにならない大人の一人にすぎないのか
父を許せないのと同じように、ロス夫人を許すのは難しい

雹の嵐になり、近くに落雷する
命の危険を感じて、この世で信頼できるのは父だけだと分かる
その父がインゲルを心配して森まで探しに来てくれる

父:いつかおまえが話していたのを覚えていたんだよ
インゲル:父さんにすまないことをした

父:わしを許せると思うかい?
インゲル:私こそ許してくれる?

雷雨は止み、インゲルはロス夫人の話を父母にする
母:こんなうまい話をお前が真に受けると知っていたら話さなかったのに

ロス夫人が心配して家に来て、父母は事情を話す

ロス夫人:
私を許してくれるかしら?
あの時、深く考えずにいたが、忘れていたわけではなかった

リーブは父親が大好きだったが、戦時中、娘に会おうと捕虜収容所を脱走して射殺された
リーブは自分のせいで父が死んだと思った

その後、母が働いて倒れて亡くなった
リーブは母も自分のために犠牲になったと思い込んだ

インゲルは事情を知らず、僻んでいたことを認める
冷静に考えると夢のような話を信じて子どもっぽかったと振り返る





あとがき

ハルディス・モーレン・ヴェーソース
1907年生まれ 現代ノルウェーのもっとも優れた詩人の1人タリエイ・ヴェーソースと結婚

本書は当時のノルウェーの平均的な農村を舞台にして
他者に対する「許容」の問題を底辺に置き
スヴェーレとの恋愛感情や、少女の心理のうつり変わりを微細に描いている

1940年にナチが全土を占領し、5年間、ノルウェーは自由を奪われ
文芸作品の出版も禁止された



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ぼくは犬や ペク ヒナ/作 ブロンズ新社

2024-10-04 16:34:03 | 
2020年初版 長谷川義史/訳

シンプルなストーリー

粘土と布を合わせて、一瞬の動きと静かな場面の表現がすごい

わんこが散歩してる時って、ほんとに目をひんむいてるよね
瞬間瞬間に生きてるのが分かる


【内容抜粋メモ】
スーパーのパンウリという母犬が生んで、3人と家族になった
パンウリは毎年子どもを産んでいるため、きょうだいがあちこちにいる











父は仕事、息子ドンドンは学校、おばあちゃんも出かけて
1人で留守番してる時間は永遠に思える







さんぽでは猫や鳥に会ったりして大興奮!
6歳のドンドンは転んで泣いてしまう











ドンドンと一緒に昼寝して、ついベッドの上にそそうして怒られる
ベランダに出されてしまうが、ドンドンが来て、一緒に寝てくれる







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アーサー・ランサム全集 1 ツバメ号とアマゾン号 アーサー・ランサム/作 岩波書店

2024-10-03 21:12:00 | 
1967年初版 1986年 第19刷 岩田欣三・神宮輝夫/訳

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船のタイトルとこの厚みだとヴェルヌや『ロビンソン・クルーソー』などの長編冒険を期待して一気読みした
アーサー・ランサムも大好きな作家の1人になったし
その他の全集もぜひ全部読んでみたい

作者自身が描いた挿絵も味わい深い

子どもたちだけでキャンプするって素晴らしい体験だなあ!
全面協力してくれる親や近所の農家さんもステキ

想像力をフルに使っている様子を読んでいたら感動で胸が熱くなった

私もトタン屋根の下で雷雨をしのいだり
秘密基地を持ったりした時期があったのを思い出した
こうした子ども時代って過ぎるのはあっという間なんだ










【内容抜粋メモ】

登場人物
ハリ・ハウ農場のウォーカー一家
ジョン 長男 船長
スーザン 長女 航海士・外科医
ティティ 次女 AB船員
ロジャ 7歳 ボーイ
ヴィッキイ 末女

ジャクソン 百姓
ディクソン夫婦

ルース・ブラケット 海賊名ナンシイ
ペギイ 妹
ジム・ターナー 叔父 フリント船長










父からの電報で「オボレロノロマハノロマデナケレバオボレナイ」と来て
夏休み中、湖の島に子どもたちだけでキャンプする許可がおりる

早速、船員雇用契約書をつくり、ツバメ号に乗せる荷物を整える
母は地面が岩だった場合も考えてテントを作ってくれる
ティティは青いツバメのついた三角旗をつくって掲げる









船を出してすぐ大砲をつけた屋形船を見かける



キャンプ地を探すと、すでに誰かがたき火した跡を見つける
そこにテントを2つ張る
島を一周すると無人島だと分かる

ツバメ号を隠すのに最適の入り江を見つける
近くの木に十字の印を見つける







毎朝、ディクソンさんの農場で牛乳をもらうよう約束する
百姓のジャクソンさんは、屋形船にいるのはターナーでひと財産持ってる噂があると教える



1日目
ハリ・ハウ農場に戻り釣り道具を持って行く
翌日、パーチをたくさん釣って、はらわたを出して調理する










大きな音がして、2人の女の子が操縦する帆船アマゾン号が通る
海賊を意味するドクロの旗を上げている

あとを追いかけてツバメ号を出すと
ターナーが花火を爆発させたのはジョンらだと誤解してげんこつを振っているのが見える

翌朝、ディクソン夫人はターナーが文句を言っていたと話す

2人の少女が島に上陸して休戦交渉する
ナンシイとペギイはここはヤマネコ島で自分たちのものだと主張する








2組は攻守条約を結ぶ
ターナーは叔父で、世界一周して、去年帰り、本を書くために屋形船に住んでいる
船に近寄るなと言われたから花火をつけたと明かす

2組は明日から戦争して、勝ったほうが旗艦になると決める

ナンシイはジョンに聞かれて十字の印の意味を教える
2点が縦に並ぶよう船を進めれば、どこにもぶつからずに入り江に入れる
ジョンは印の所に導灯を置く



翌日はなぎ
海賊は来れないと予測し、炭焼きを見に行く

老人ビリーは息子のビリーと一緒にマムシを見せてくれる
居酒屋で屋形船に財産があるという噂があり
カギをかけるようターナーに伝えてほしいと言われる







ヤマネコ島に戻ると、屋形船に手を出すな、とターナーのメモがある

翌日もなぎのため、ジョンは仕方なくターナーに伝言を言いに行くが
ジョンをうそつき呼ばわりして、取り付く島もない









母がヴィッキイの2歳の誕生日を祝いに来る
たくさんのご馳走と懐中電灯も渡す

母:あと1週間したら、南に帰らなきゃならないのよ

4人は明日こそ決戦しなければならないため、口笛を吹いて風を起こす



翌日は南風
ティティだけを島に残し、3人が船を拿捕して戻ったら、カンテラをつける役目を担う







1人でロビンソン・クルーソー気分に浸っていると
母が来て、ブラケット夫人に手紙を書いたほうがいいか、ジョンに聞くよう約束する

母:ハリ・ハウへ一緒に帰らない? という誘いを断り
1人になると、急に寂しくなる



アマゾン川に行った3人は、海賊の家を見つけるが、船は見つからない
夜もふけて、ティティが心配になって戻ることにする







ティティは見張りをしていて寝落ちし、フクロウの合図を聞いて慌ててカンテラをつけるが
上陸したのは海賊たち

負けたと思ったが、彼らがキャンプ場に行っている間にアマゾン号を操縦してウ島にいかりをおろす
夜中に2人の男の声がして、屋形船から盗んだものを島に隠す会話を聞いてしまう

ジョンらが戻る際、アマゾン号を乗っ取ったティティと再会して喜び合う
海賊は白旗を上げて降参し、朝ごはんまでに家に戻る



翌日、警官が来て、屋形船に強盗が入り、ターナーは犯人がジョンだと言っている
夏中かかって書いた本の原稿とタイプライターが入ったトランクだけが盗まれてしまった

海賊姉妹は、ジョンから事情を聞いて怒り、叔父に黒丸(海賊仲間の脅迫的な呼び出し状)を渡す
そこには、花火を仕掛けたのは姉妹で、うそつき呼ばわりした叔父は追放だと書いてある

ターナーは誤解していたことを謝りに来て、一緒に食事し
明日の15時から第一級の戦争をしよう、と提案する

ティティの証言からみんなでウ島を探すけれども、盗まれたものは見つからなかった



戦争が始まり、ターナーは紙の玉の大砲を撃ってくる
大人数には勝てず、捕虜となり、渡り板を歩いて海(湖)に落とされる
最後は宴会をして、ティティにはオウム、ロジャにはサルをあげると約束する










最後の日はみんなで捕鯨(釣り)に行く
ティティはロジャを連れて、もう一度ウ島に宝探しに出かける

諦めかけた時、木のパイプと、トランクを見事に見つける!
ターナーは、犯人が取りに来た時にギャフンと言わせるために
木で魚を彫り、パイプと一緒に埋めていく







ティティへのお礼に飼っていたオウムをあげる
以前は「かわいいポリー」しか言わなかったのに
「8銀貨(ピース・オブ・エイト)」と言えるようになっている



夜、ものすごい嵐になり、ウォーカーらのテントは風で倒され
6人で海賊のテントで過ごす

難破した水夫になりきり、食べるものも尽きてヤマネコ島にたどり着き
20年間住み、船が通りかかるのを待つ、という気分になる









嵐がおさまると、ディクソン夫妻が熱いおかゆ、母は熱いココアをもってきて
ターナー、ブラケット夫人まで来て、“土人話”に花が咲く

家族の船に乗る誘いを断り、船にたまった水をかい出して出発

屋形船から盗まれたトランクを見つけたニュースはたちまち広まっていて
ジョンらにバンザイの声がかかる

入り江でたき火をしてお茶を飲んでから、岬で艦隊は解散する

♪まもなく船長はいうだろう
おりろよ、ジョニイ
陸にあがって給料もらえ
これがわしらの旅路のおわり
おりろよ、ジョニイ 船乗りらしく
船に未練が残らぬうちに
これがわしらの旅路のおわり










訳者のことば

アーサー・ランサム
1884年 イギリス生まれ 本書を出したのは46歳の時
舞台になっている湖は、イングランド北部のウィンダミア湖









物語の舞台になる場所を読者の目に見えるように描いたり
登場人物を生きた人間として描くのは、よい物語に欠かせないこと

新鮮な興味、行動への意欲、自然の恵みの享受など
時代が変わっても、人間が持ち続ける喜びをとらえている






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ジュニア世界の文学3 マリアンネ ゲルトルート・ホイザーマン 学研

2024-10-02 13:34:51 | 
1970年初版 大島かおり/訳

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


家族の問題は大なり小なりみんな共通してあるよね

母の死で終わるんじゃなくて、そこから家族関係を見直して
1人1人が自立していく過程に見ごたえがある物語


【内容抜粋メモ】

登場人物
マリアンネ・ハルトマン
クリスチアン 長兄 工場勤め
ベアート 次兄 教師になるために勉強している
ヒルデ 女中
ヨーゼフ 下男
祖父 母エルゼの父 元教師

エメネガー ウァルデック農場を乗っ取ろうと画策している
ペーター 息子

ハルダー先生 園芸学校の校長 恩師




マリアンネは16歳で園芸学校に入り、1年間過ごしたが
父から電話があり、母の具合が悪いから
すぐウァルデックに帰って来いと言われる

2年前と同様、手術になるかもしれない
母は慣れない農家の厳しい生活で体を壊して長い

父はストレスからアルコール依存症になっている
マリアンネ:ハルダー先生、私怖いんです 母が死ぬようなことになったら・・・

ハルダー先生
(若い人はぐずぐずしないものだ
心は重くても、一段おきにのぼっていく 絶えず前へ!



ウァルデックに着いて、まず祖父の家に寄る
この魔法のような庭がなかったら園芸家になろうとは思わなかっただろう

祖母はたくさんの喪服の人たちの夢を見たと繰り返してマリアンネをさらに不安にさせる
祖父:エメネガーはキツネだ もっと注意しなくてはいかん

母が惨めにやつれ果てて見えて愕然とする

母:
お父さんとクリスチアンを手伝うのよ
みんなで力を合わせて、仲良くね
ベアートに勉強を続けさせて
お父さんには忍耐が必要なのよ

そう言ってクルマに乗って病院に運ばれる
女中ヒルデ:死んでしまうんだわ! と号泣する

寝室で寝ていると、父や兄が起きて動いているのが聞こえる

ウァルデックには呪いがかかっている、という噂は昔からあった

最初の定住者は元ナポレオン軍兵士のカスパー
人の住めない荒れ地にわざわざ住み
周りは悪魔が手を貸しているに違いないと噂した

カスパーが脳卒中で死んでからは、彼の亡霊が出ると言われた
母はそんな噂は本当じゃないと笑い飛ばした

畜産農家のほかに、酒場兼食堂をやり、町からの行楽客が来るが
その収入ではマリアンネを学校に上げるのが精一杯だった



母は亡くなる
葬列が通ると人々の好機の視線が怖くなるマリアンネ

マリアンネ(人も花も、育ち、咲きほこり、そして散る いつも同じ繰り返し

クリスチアン:おまえにずっと家にいてもらうしかないと思うよ
マリアンネ:できないわ!

ベアート:僕はもう学校へは戻らないさ
クリスチアン:おまえじゃ2日ともたないよ

クリスチアン:
オレは百姓だ 親父が年をとったら、俺が農場を引き受ける
それまでは工場で働いて金を貯めるんだ

父はベアートの学費をびた一文出さなかったため、母が調達していた
母はベアートを立派な教師にするのが悲願だった

マリアンネが自分の学費をベアートに譲ると話すと、それも断るベアート
父とクリスチアンはまったく肌が合わない



マリアンネが荒れたクリスチアンの部屋を掃除していると
ヒルデはふくれる

マリアンネは苦しい事情を手紙に書いて、ハルダー先生に出すと
「苦しみを通して、その中で自分をもう一度見出すのです」と返事が来る

祖父が訪ねて来て、事情を話すと、孫たちが相続するはずのお金の一部を使って
ベアートとマリアンネの学費にあてると言ってくれる

叔母が手伝いに来てくれることになり、5月には園芸学校に戻れると喜ぶマリアンネ
だが、父は「ウァルデックの主人はオレなんだぞ!」と意地を張り
クリスチアンが農場を手伝うのを頑として断る

父は借金の足しに大事な牛を勝手に売ってしまい
クリスチアンと一触即発の状態になる

クリスチアン:
あんたは借金で首が回らなくなった!
あんたの友だちのエメネガーは、息子のペーターを主に据えると村で喋ってる

父が息子に無残に敗北したのを見て大きなショックを受けるマリアンネ
家も土地も抵当に入ってると分かり、安心していたことすべてが崩れはじめた

なにもかも儚いものだ
うつろわぬものは何一つない


追い出されるかもしれない今になって、初めて故郷の真の美しさに気づく

ウァルデックの夏祭りで、ペーターは「君と踊るのでなくては楽しくない」と言った
あれは嘲笑だったのか?
ペーターはかつてクリスチアンと友だちだったが
兄が工場勤めを始めてから会わなくなった

マリアンネ:私はこの家が好きなの、クリスチアン
クリスチアン:自分で農場を譲り受ける 父が承知しなければ非常手段をとる
マリアンネ:忘れないで、私たちのお父さんなのよ!

祖父が間に入り、クリスチアンが農場をしきることに決まる
神よ、父を救いたまえ!



学校に行く日、ヒルデは教会に行くと言って仕事を休んだ
4人分のランチの注文が入り、呼びに行くと家を出た後だった

隣家のエリカが来て、2人で急いで料理を作り急場をしのぐ

クリスチアン:
オレは自分に誓ったんだ 抵当に入った農地を取り返すまでは休まない
お前が協力してくれないとどうにもならないんだ

マリアンネは退学手続きをして荷物を取りに学校に戻る

ハルダー先生:
あなたの家族にはあなたがどうしても必要ですよ
あたながここで勉強したことは、けしてムダになりません
大庭園だろうと、古い農家の軒先だろうと、花の美しさに変わりはありません
夏と冬、雨と太陽、夜と昼、いずれも代わる代わるやってきます
歓びと苦しみも同じですよ


ハルダー先生に言われて、生徒たちは自分の好きな花の苗をマリアンネにプレゼントする



干し草作りのためにクリスチアンは1人で夜明けまで働く

ヒルデは工場勤めをして、あることないことハルトマン家の悪口を言いふらした
父も「子どもたちは親を親とも思わない」と息子の悪口に一役買っていた

雌豚が6匹のばら色の子豚を産んだ
それまで無関心だったが、可愛い姿に感動し、情がわくマリアンネ

だが、農家では常に予測不能なことが起きるのを覚悟している必要がある

豚の耳に斑点を見つけ、慌てて獣医を呼ぶと、すぐと殺して
全部に予防接種を打ち、他の豚を隔離するよう言われる

父はまったく協力せず、息子より下男を優遇する
かつては頼もしい庇護者であり、友だった父
あの頃は幸せだった



役所から手紙が来て、届けた牛乳が不潔だったため罰金をかするとある
細心の注意をはらっているマリアンネは下男ヨーゼフを疑う

仕事をさぼってばかりいるヨーゼフをクリスチアンは解雇する
ヨーゼフ:村にいい口がある

ヨーゼフの仕事はマリアンネに周り、毎朝、村まで牛乳を馬車に運ぶ

ペーター:
君たちの下男がおとといからうちにいるよ
なぜ追い出したんだい?

ヨーゼフが戻ってきて、エメネガーはこれまでよりいい給料を払うと約束したのに守らなかったと話す
牛乳の異物混入も、ブタの病気もエメネガーの指示だったと分かり呆然とする父
クリスチアン:お前に用はない!



ペーターの友人から今年はウァルデックのダンスはないのかと聞かれる
マリアンネはクリスチアンから父に聞いてみるよう促す

最初は断った父だが、次第に態度が和らぐ
父:ダンスをやれば金が入る 夏祭りには賛成だよ

ベアートも帰省し、友人らが楽団員を務める
ペーターの友人たちは舞台の設置を手伝う

席は満席になり、ペーターは父親を連れて来て、マリアンネをダンスに誘う
ペーター:僕は親父の意図は知ってるが、友だちの不幸を利用するような人間じゃない

夏祭りは大成功
クリスチアンとエリカが親密なのを見かけて、自分だけ孤独に感じる

母の言った忍耐とは何だろう?
母は忍耐の連続だった

私はこの世に生まれてこのかた、ただひたすら待っていた
子どもの頃は大きくなるのを待ち、学校を卒業するのを待ち
大人になるのを待ち、職業を身につけるのを待ち、、、

待つということは、何もしなことではない
自分の力のすべてを尽くし、なお希望を捨てないことだ

私はペーターと踊りたい!

ペーターはマリアンネの父が家に来て、エメネガーと口論になったと話す
ペーター:僕が少しも変わっていないと証明したかった
マリアンネは来年はダンスすると約束する

その日から父は農場を手伝うようになる
麦刈りは父と息子、イズラー家も手伝った

ペーター:
トラクターを持ってくる
昨日、親父と話したんだ

ペーターとクリスチアンの友情も戻り、父の笑い声が戻る




あとがき

ゲルトルート・ホイザーマン
スイスの女流作家

『河畔のふるさと』
『イレーネ』
『アンネとルート』ほか、十代の少女たちの作品が多数

無心な子ども時代に決別して、未知の人生に歩み出す精神の葛藤と成長の過程を描く

学業の中断、将来の断念、家族の経済的精神的崩壊、親子の不信や離反など
私たちの多くが経験する問題を瑞々しく描いている



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