メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

花のみち

2006-04-11 20:06:52 | lyrics
私は花のみちを歩いていた
若葉のみどり、舞い降る薄桃色のあめ
やわらかい幹のあいまを抜けて
昇ってゆく純白の翼
私はその日 花のみちを歩いていた
母の手にひかれて
紺のスカートがまいあがった
私は覚えている


私は花のみちを歩いていた
小刻みに震える両手、黒電話の重い受話器
「きみが好きだ」
躍る心臓、詰まる喉元、遠のく意識
風に吹き飛ぶ麦わら帽子
私はその日 花のみちを歩いていた
「ありがとう。あたしも好きです」
私は今でも夢に見る



私は花のみちを歩いていた
半分無感覚な足先がじっとり濡れてゆく
水たまりに浮かぶ花びら 飛び交うカラス
ああ 生きてくことはた易いものじゃない
重い両肩 首をうなだれ
まぶたの下には不吉な影が落ちている
私はその日 花のみちを歩いていた
行くべき場所も見つからないまま


私は花のみちを歩いていた
緑の切符 小さな時刻表 温もり残る電話ボックス
「いま駅。これからすぐ戻るから」
かえろう 古びた時計の鳴る町へ
レールは運ぶ 軽いバッグと小さな手土産
私はその日たくさんの花に彩られた小道を歩いた
「ただいま」
もうなにも心配することのない安息の砦


私はあの日 花のみちを歩いていた
母の手にひかれて
とかした髪がもつれて泣いた
私はよく知っている
これから先もずっと
花びらが敷きつめられたみちと
水たまりで泥だらけのみちとが
交互にはるか続いているのを

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