メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

ガラスの街 新潮文庫 オ-9-0 ポール・オースター[著] 新潮社

2025-02-15 17:00:44 | 
2013年初版 柴田元幸/訳 タダジュン/カバー装画

最近知った作家の「ニューヨーク3部作」が気になって借りてみた

ゴーリーで知った柴田元幸さんの翻訳で
タダジュンさんの表紙画

間違い電話って小説の導入部として入りやすいし
読みやすい文量だけれども、いわゆる探偵小説とは全然違った

作中に著者と同名の作家が出てくるのもフシギだし
作家はどこに行ったのか?
そして、ノートを見つけた第三者は誰?

都会に長年暮らしていると、自分がなくなっていく感覚は分かる気がする
美しいものの記憶だけが残ったというのは死後の世界か?


【内容抜粋メモ】

登場人物
ダニエル・クイン 作家ウィリアム・ウィルソン 妻子は亡くなっている 散歩好き
ピーター・スティルマン
ヴァージニア 妻
ピーター 父
ポール・オースター 作家



クインはウィリアム・ウィルソンという名前で
マックス・ワーク探偵が活躍する小説を書いている
出版社とはエージェントを通してやりとりし
そのエージェントとも郵便でのやりとりだけ

真夜中に間違い電話がかかる
相手はポール・オースター探偵事務所にかけたと言う

3度目にかかってきた時、オースターだとウソをつく
「私は殺されようとしている あなたに護ってほしい」



ピーター・スティルマンは幼い頃に母を亡くし
同名の父により9年間も幽閉されていた
火事により発見され、父は裁判にかけられ、病院に入った
妻ヴァージニアはピーターの言語療法士をしていた
父に命を狙われているから見張ってほしいと依頼される

ポール・オースターについては看護師サーヴェドラの夫マイケルが
昔警官をしていて知った

クインは現金化されることのないポール・オースター宛ての小切手をもらう
帰り際、ヴァージニアは情熱的なキスをする

ピーターのような事例はいくつかある
人間の真の「自然言語」を発見しようとした実験や
カスパー・ハウザーなど



クインは安食堂で赤いノートを買い、事件についてメモする
図書館で父親の書いた本を読む

内容はアメリカを第二のエデンの園と信じられていたこと
アダムは言葉に命を吹き込んだ
バベルの塔について これ以降、旧約聖書はヘブライ人の記録
ヘンリー・ダークというボストンの聖職者が書いた『新バベル』について
そこに出てくる1960年は父が息子を閉じ込めた年と一致する



駅でスティルマンが出てくるのを待つ間
隣に座る女が自分の書いた小説を読んでいるのに気づいて話す

もらった写真より年老いたスティルマンを見つけるが
その後ろにうりふたつの顔を見つけて狼狽し
第一のスティルマンを尾行すると安いホテルに入った

その日から、スティルマンを尾行する日々が始まる
彼は毎日街を歩いては、ゴミのようなモノを拾っている

2週間が過ぎて、赤いのートのメモからスティルマンの足取りを線に表すと
“THE TOWER OF BABEL”(バベルの塔)となることに気づく

クインと名乗って話しかけると、大きな発見のためのデータを集めていると話す
スティルマン:私がNYに来たのは、どこよりも浅ましい場所だからです

次に会った時、もう誰か忘れているので、ヘンリー・ダークと名乗ると
本で書いたヘンリー・ダークは架空の人物だと明かす

次に会った時はピーター・スティルマンと名乗ると、息子だと思い込む
スティルマン:覚えておけよ 子どもは大いなる恵みだぞ



急にスティルマンがホテルから出てこなくなり
受付に聞くと、昨夜チェックアウトしたとのこと
ヴァージニアに話し、2時間おきに電話で連絡すると約束する



そもそも間違い電話のもとになったポール・オースターに会うと
探偵ではなく作家だった
『ドン・キホーテ』についての論評を書いている
事件について話し、小切手を現金化して渡すと約束する

美しい妻シリと息子ダニエルを紹介され
自分も妻子を失っていなかったら、こんな家庭が築けたのにと思って沈む



スティルマン家に電話すると、いつでも話し中
父は見失ったけれども、スティルマン家を見張れば護れると思い、家の前で張る

食事も睡眠も最低限にして、預金300ドルが尽きるまで何か月も張っていて
クインはすっかり浮浪者のようになる

とうとう無一文になり、いったん家に帰ろうとして
ポール・オースターから小切手の金を受け取ろうと電話すると
不渡り小切手だったと言われる

ポール・オースター:スティルマンは二月前にブルックリン橋から飛び降りたよ

スティルマン家に電話すると、もう使われていないという録音が流れる



帰宅すると、様変わりしていて、女が住んでいる
作家が住んでいたが、姿を消して、家賃を滞納していたから引っ越してきた

仕方なく、スティルマン家に行くと中に入れる
家具はないが、食事が毎日届けられるため
最低限食べて寝る日々の中、クインは自分に対する興味すらなくす

“世界の無限の優しさ、一人ひとりの優しさを思い出した
今ではもうすべての美しさ以外はどうでもよかった”


赤いノートも書くところがなくなる



アフリカ旅行から帰った“私”は、友人のオースターに電話して
クインと事件について聞き、どうしてもっと積極的に助けてやらなかったのかと責める

2人でスティルマン家に行ってみると、赤いノートだけが転がっている
それを拾って立ち去る

“彼がどこへ消えたにせよ、私は彼の幸運を祈っている”




訳者あとがき
妻シリと出会い、人生が一変した
彼女に出会えなければ、自分がどうなっていたかを思い描こうとして
ポール・オースターは本書を書いた

17の出版社に断られたが、今では世界中で百万単位の読者に読まれている


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