メランコリア

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リンドグレーン作品集 10 名探偵カッレとスパイ団 リンドグレーン/作 岩波書店

2023-08-19 10:40:10 | 
1965年初版 1985年 第19刷 尾崎義/訳 チェスティーン・トゥールヴァール・ファルク/挿絵


「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください


名探偵カッレくんシリーズの最後

ラスムスという少年が加わり、誘拐事件に巻き込まれるカッレたち
舞台はとても気持ちのいい海沿いだけれども、今作もなかなかの危険がいっぱい

しかも、幼いラスムスは“子どもらしい正直さ”全開で
白バラ軍に入りたいと熱望するにも関わらず
どんな秘密も犯人グループにべらべらと話してしまうのは
さすがにイライラさせられた/汗

でも、気のいいニッケとの心の交流には涙が出た



【内容抜粋メモ】

登場人物

<白バラ軍>
カッレ・ブルムクヴィスト 名探偵を目指している13歳の少年 食料雑貨店の息子
エーヴァ・ロッタ・リサンデル カッレの隣りに住むパン屋の娘
アンデス 別の町に住む靴屋の息子

<赤バラ軍>
シックステン 郵便局長の息子
ベンカ 医者の息子
ユンテ おんぼろ丘に住む

ラスムス・ラスムソン 5歳の少年
エークルンド 防弾軽金属を完成させた大学教授
ペータース技師、ブルム、ニッケ 誘拐犯グループ

ビョルク巡査




●軍需工業の革命 スウェーデン学者によって防弾軽金属完成
赤バラ軍は聖像を城跡の鳥の巣に隠したと宣戦布告






バラ戦争は今年で3年目
飽きたという者はいなかった
30年戦争といういい手本があるのだ

たいていの場合、戦争にはほんのちょっとした理由だけで十分なんだ
聖像が所有主をときどき変えることこそ、バラ戦争が成り立つ理由だった


(こうして社会批判をさりげなく組み込んでいるところもポイント

アンデスは、人生は短く、できる間に遊んでおくことが肝心だと悟った


●ラスムス
防弾軽金属を完成させたエークルンド氏の息子ラスムスをひと目見て
ロッタの母性本能が刺激され、カッレたちは戸惑う





バラ戦争の話をしてあげると、白バラ軍になることを夢見るラスムス
母が入院している間、夏だけ家を借りて住んでいる


●月夜の一騎打ち
“わが祖先の古城に宴あり”の紙を渡され
みんな家を抜け出して夜の12時に城跡に集まる

アンデスとシックステンは幅20センチの城壁に登り一騎打ちとなる
アンデスは断崖絶壁から落ちて枯れ木にひっかかる

カッレはやっとロープを見つけて、石をつないで垂らし
アンデスを吊り上げる






●3人の誘拐犯人
“3人はやって来る瞬間をそのまま受け入れるという子どもの本性を持っていた
 不安が済んだら怖くなっても仕方ない アンデスはまったくショックを受けてなかった”


夜中に自動車が来て、エークルンド家に停まり、2人の男がはしごで窓から入り
眠っているラスムスと縛った教授を連れ去ろうとするのを見た3人





ロッタはラスムスを1人しないために勇敢にクルマに乗り、一緒に誘拐されて
ヘンゼルとグレーテルのようにパンやチラシをちぎって窓から落としたため
カッレとアンデスは教授のオートバイで追跡する







●スポーツ・ヒュッテ
犯人グループはボートで無人島のような島に渡ったと分かり
2人は遠泳でたどり着く

カッレ:これは本の話かな
アンデス:お前が印刷の間違いだと分かっても僕は違うよ!(ww

誘拐犯グループのリーダー、ペータース技師は
教授に10万クローナ(約700万円)で防弾軽金属の数式が書かれた書類のありかを
教えなければ、ラスムスに二度と会えないと脅す
ラスムスは父が隠した時に見たため言いそうになるのを父は止める

ロッタがラスムスと入れられたのは、居心地の良いヒュッテ
カッレとアンデスの白バラ軍の口笛の合図を聞いて安心し
見張りのニッケに「ここのホテルはサービスが悪い」と文句を言って
3人分の食べ物を運ばせる(ww








●アサマブドウ
2つの岩の間のくぼみに野営の小屋をつくり夜を待つカッレたち
周りに自生するアサマブドウしか食べられなくてすっかり空腹になり
ロッタがためこんだバタつきパンなどを狂ったように食べる

教授は1人で別のヒュッテに監禁されていて、窓の外は崖
カッレは崖を登って、話すと、ラスムスが人質にとられている間は
警察に話すのを止められる






ペータースはラスムスと教授を明日、飛行機で外国に運ぶと言う


●親切な人さらい
ラスムスをおとなしくさせるために、弓や木のボートを作ってやったために
ニッケは親切だと思うラスムスだが、口を滑らせて書類が本棚の後ろにあると話してしまう

ロッタは白バラ軍の危険をしらせる秘密の合図の最大級=大声で叫び
書類のありかを山賊ことばで伝える

カッレらはボートを漕ぎ、オートバイをリルチョーピングまで走らせ
エークルンド家に忍び込み、本棚の後ろの封筒を取る






犯人グループをまいて、カッレの食料品店でたらふく食べて
リュックに食べ物や懐中電灯などを詰め込み、再びかくれ小屋へ戻る


●海水浴
ロッタはラスムスを海水浴に誘い、頼みこむと断れないニッケ
服を着た後、森に逃げ込み、カッレらのつくったかくれ小屋で合流
明日の朝早くラスムスをボートで運ぶ計画を立てて、その夜はぐっすり眠る






●カッレの脱出
懐中電灯を忘れたアンデスが消え、アンデスを追ったラスムスが消え
とうとう4人ともニッケに捕まり、ヒュッテに入れられる

ここでもカッレが書類を隠したことを話してしまうラスムス
1時間待つと言って出ていくペータース

食べ物を持ってきたニッケを襲い、カッレが脱走
ラスムスがカギをかけて、カギを窓の外に投げる






●ラジオ送信機
飛行機が明日朝7時に来ると聞いて、外国と連絡をとるラジオ送信機に向かって
「助けてください こちらカッレ カルヴ島にいます
 リルチョーピングのビョルク巡査に伝えてください!」と助けを呼ぶ






カッレは殴られて失神し、またヒュッテに監禁される

飛行機は2時間も早い5時に到着
ペータースがラスムスをムリに連れて行くと、ニッケが奪い返して森に逃げ込む







ペータースらが彼らを追いかけている間に、パイロットの注意を引いて
カッレは飛行機に忍び寄り、ナイフでフロートを壊す







モーターボートでビョルク巡査らが助けに来て
ペータースは飛行機で逃げようとするが、故障して離陸しないところを逮捕される

カッレが送信した短波放送を、リルチョーピングの教師がたまたま受信して(!)警察に連絡した
ペータース:3人のガキどものほうが、スウェーデンの秘密警察より手ごわいですよ

ペータースに撃たれたニッケは、血を流して森に倒れていたが嬉しかった
これまでバカなことをしてきたが、最後にラスムスを助けたのだ
ラスムス:ニッケがうんと、うんと好き!







父が探しに来て、重傷のニッケは病院に運ばれる

カッレは書類を白バラ軍の司令部に隠したと明かし、後日、無事に教授に返す


●宣誓
アンデスは仰々しい声でラスムスを白バラ軍に加える儀式を行う
夢が叶ったラスムスは天にも昇る心地







そこに赤バラ軍から聖像を気性の荒いセパード犬
アジャクスの小屋に隠したと報告が入る

奪還計画にジャマなラスムスに、犬がいるかどうか偵察に行かせると
「猛犬注意」の文字が読めないため、小屋の前でどうしようか迷い
飼い主でニッケの手術をした医師が来たので、当然のごとく犬をどけてと頼む(ww

ニッケのお見舞いに行き、白バラ軍になった報告をする
退院したら、また元気になると分かり
司令部に戻り、聖像を床に投げ出すと
カッレらは驚いて大笑いする

「白バラ軍に新秘密兵器が手に入った!」



訳者のことば

リンドグレーン
1907年 スウェーデン生まれ
小学校教師の経験を活かして、少年少女の生活体験、空想世界に深い理解がある
作品の魅力は、なんといっても機知とユーモア
そして、文章がとても上手いこと(まったく!






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