メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

絵本『あの湖のあの家におきたこと』 トーマス・ハーディング/文 クレヨンハウス

2022-03-05 12:41:35 | 
2020年初版

トーマス・ハーディング
ロンドン生まれ
英米の大手新聞で執筆する作家、ジャーナリスト
英国のテレビ局を設立
数々のドキュメンタリーも制作

ブリッタ・テッケントラップ
ドイツ ハンブルグ生まれ ベルリン在住
ロンドンの芸術大学、王立芸術学院で学び、絵本作家になった
『おなじそらのしたで』 ひさかたチャイルド
『いのちの木』 ポプラ社

落合恵子
作家 1976年よりクレヨンハウスを主宰
オーガニックの視点で文化を明るく拓く提案を続けている

小田まゆみ





まず、曽祖父が一軒の家を建てたってすごい!!
『大きな森の小さな家』のお父さんみたい

一人で建てたわけじゃないのか?
それが戦争時代を超えてずっと残ったのもすごい

いろんな時代を乗り越えてこれたのも
敵味方関係なく、そこに人が住み続けていたからだよね

ボロボロになってもペンキを塗り直したり、修理すれば
家はまた新しく生まれ変わることができるということもわかる

家の歴史を調べたら、それぞれ色んな物語があるんだな

絵はちょっとレトロで、一見、写真のような
これはデジタルだろうか?

色は点描画のように細くて
家が設計図みたいにまっすぐな線の組み合わせで描かれている



どれもその時代、時代を一枚に切り取っていて
文章がなくても十分に物語性を感じることができる

戦時中ということもあるだろうけど
他人の家に住むってなんだか不思議な感じがする

一軒の家に何家族も住んで
子どもたちが成長して
それぞれの思い出が詰まっている

人は敵味方に分かれたり
土地を区分したりするけれども
そこにはいつも変わらず自然や動物があって
家は変わらずそこにあったということだ



【内容抜粋メモ】

ずっと昔
湖のほとりに優しい医者と明るい妻が建てた小さな木の家があった
家はとても幸せでした












子どもたちは大きくなり
ある日、兵隊が家族に家を出るように命じる






1年後、新しい音楽家の家族がやってくる






男の子たちは行進ごっこをし
母親は武器を作る人に雨樋の金属まで渡した






父親に軍隊に入るよう命じる手紙が来て
一家は逃げ、家はまた残される






音楽家の友人夫婦がやってきて
しばらくの間、戦火と厳しい寒さをしのぐが
夫婦は街へ逃げ、家は再び空っぽになる










暖かい帽子をかぶった男が家族とともにやってくる
家にはふたたび笑い声が響く






ある朝、家と湖の間に兵隊が高い壁をたてる
子どもたちは畑で働かされ
男は近所の人たちを密かに見張る仕事をする







25年が経ち
子どもたちは大人になって家を出て
灰色の暮らしは終わりがないように思えた


突然、兵隊も番犬も消え
壁を叩き壊すと、また湖から心地よい風が吹き込む






男が亡くなると家はまた一人きりになり
床板や扉が剥がされ、焚き木にされ
木々が生い茂る



15年後 一人の若者がやってくる
村の人たちの助けを借りて修繕する
家はまた幸せを取り戻す











【解説】






1927年
著者の曽祖父アレクサンダーは、妻と子どものために家を建てた
子どもの一人が著者の祖母エルシー
エルシーはあの家を「ソウルプレイス(魂の居場所)」と呼んでいた
家族はユダヤ人で1936年ロンドンに逃げた
その後、家はナチスのゲシュタポに取り上げられた

1937年
家は音楽出版社の経営者マイゼルに
実際の1/4の価格で売られた
妻は映画スター
2人の男の子はナチスのプログラムであるヒトラーユーゲントに加わった

1944年
家族はオーストリアに逃げた

1944年
マイゼルの仕事仲間ハンス夫婦に避難するよう勧めた

1945年
ソビエト軍が占領する少し前
夫婦は家を後にした

戦争後、ウォルフガングと妻、2人の子どもが住む
彼は近所の住人を見張るスパイのような仕事をする

1961年 ベルリンの壁
30年近くに渡り西ベルリンと東ドイツとに分断

1999年
ウォルフガングがなくなり空き家となる

2013年
トーマス・ハーディングが家を訪れて元通りに修繕

「アレクサンダーハウス」と名付け
教育、レクリエーションを行うセンターとして生まれ変わる

ホームページもある







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