メランコリア

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『狂瀾怒濤 あるいは、ブラックドール騒動』 エドワード・ゴーリー/著 河出書房新社

2021-05-05 13:23:53 | 
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ブラックドール騒動
最も優れた「早く続きを読みたくなる面白い本」に挑戦した一冊

カブはカブ、プルーンはプルーン
フォークで食べようが、スプーンで食べようが
アデ・ゴルウィ「絵はがき女詩人」より


何かと思ったら急に質問が出てきて
答えによって物語が変わっていく
これまでにない手法
ちなみに私の場合下記のように進んだ

1
6
10
12
16
24
22
28
29

結局死んじゃうんだ笑

あれ、ブラックドール出てきた?

1回ゲームとして楽しんでから
最初から順番通りに読み直した

結末は最後の2ページで
どのみち悲惨な結果となることが分かったw

いろんな組み合わせが考えられるのか?
どっちにせよゴーリーの物語を組み立てる秀逸さが伝わった





















































訳者あとがき
ゴーリーをずっと訳している柴田さんの
痛烈なユーモアと愛情溢れるあとがきも毎回楽しみ♪



2000年に『ギャシュリークラム のちびっこたち』を刊行して以来
河出書房新社から出すゴーリーの著作もこれで30冊目になる!

ほぼ毎年、編集部の田中優子さんと相談して
日本の読者にとってベストなものを考えて出している

1987年にボーフォート・ブックスから刊行された本書は
19世紀ヴィクトリア朝イギリス思わせる大半の作品とは異なり

ルネ・マグリットやマックス・エンストと言った
20世紀のシュルレアリストたちとの親近性を強く感じさせる画風


4人?の情けないキャラクター達が
濡れたスポンジなどで互いを攻撃し合う絵柄が次々と繰り出される


構図としてもどれも見事であり
背景の描き込みもいつにも増して冴えている

いわゆるインタラクティブな本になっているが
多種多様な物語が複雑展開されるというよりは

どう選んだところで展開はひたすら情けなく
浅ましく、不可解で、黒いユーモアが漂っている


とはいえ、それぞれ微妙に違う味がある気がして楽しい


タイトルについても
荒れ狂う潮が見られるのは表紙のみであり
ブラックドールについても同様である

ブラックドールはゴーリー本にしばしば登場するキャラクター
(大好き!

これが一番本格的に活躍するのは『The Black DOLL』という無声映画のシナリオと
『ハヤカワミステリマガジン』2014年12月号の『黒い人形』の中においてである

「カブはカブ…」で始まるアデ・ゴルウィは
エドワード・ゴーリーのアナグラムの一つ!


本書はバレリーナのアレグラ・ケントに捧げられている
ゴーリーはニューヨーク・シティ・バレエ団の大ファンで
中でもケントは贔屓のバレリーナの一人だった

『くるみ割り人形』でケントが踊るのを見ている最中
ゴーリーは突然わっと泣き出したという

2人は友人となり
1970年代末、ゴーリーがシナリオを書き
セットとコスチュームもデザインしたバレエ
『多様な宴 またはマダム H の舞踏会』にケントが主演している


フィグバッシュはゴーリーの作中にしばしば登場するキャラクターで
最重要アイコンの一つ

ゴーリー自身の発言によれば
マックス・エルンストがしばしば描いた
怪鳥ロプロプに霊感を受けている

何とも無様に効率悪く攻撃した末に赦し合い
幸福ならざる結末に向かっていくキャラクターは

行動的には皆見苦しいだけで、なんら差異はないのに
独自の悲哀も見えてくるような気がして
いつしか感情移入してしまう(笑笑




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