メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『金箔のコウモリ』エドワード・ゴーリー/著 柴田元幸/訳 河出書房新社

2021-05-03 12:29:22 | 
「作家別」カテゴリー内「エドワード・ゴーリー」に追加します


なんだか急に絵本が読みたくなり久々図書館に行った←だいぶ時差あり

去年から色々制限がかかり
「1時間以上の閲覧はご遠慮願います」などと注意書きもあり
DVD の視聴も中止されたまま

(昨日行ったら、臨時休業だった!
 全部の区じゃないみたいだし、意味があるのか???


何気なく本棚を見ていたら
なんと、エドワード・ゴーリーの新作発見!
しかも2020年11月20日初版のできたてほやほや

バレエ好きで有名なゴーリーにとって20作目の本書
初めてバレエを題材に描いた作品

日本語刊行20年
著者没後20年という節目の2020年に
哀悼の意を込めて本書を読者へ送る

(せっかく大きな節目だったのに
 なにもギャラリーで紹介されなかったのも病原菌のせいか?


毎回ストーリーの初めに誰かしらに捧げられた名前が載っている
本書は著者が大好きなプリマ
ダイアナ・アダムズに捧げられている


ゴーリー本の大きな特色の一つでもある韻を踏んだ言葉遊び
アナグラムは本書ではあまり使われていないため
柴田さんの日本語訳の妙もなく
普通に一人の女性の物語として読むことができる


訳者あとがき
ゴーリーのバレエ好きは有名で
取り分けNYCB(ニューヨーク・シティ・バレエ団)
振付師を務めたジョージ・バランシンに心酔し
1956年~1979年にかけてほぼ全公演を見たことはよく知られている
年に100回見るというのだからすごい


ゴーリー:
私の一番のオール・タイム・ベストはダイアナ・アダムズです
彼女はまさに奇跡でした
透き通っていて、全く癖がなかった
最も完璧なプロポーション
魅力的な脚を持っていました


ゴーリーはバレエの本を2冊書いている
もう1冊は1973年刊行の「ラベンダーのレオタード」
(コレはまだ日本語訳されていないよね?

本書は雑誌「バレエ・レビュー」に連載された後
1966年に単行本として刊行された

全編を通して強調されるのは
華やかになるキャリアとは裏腹に
一貫して侘しい日常との対照である


全篇を包む死の雰囲気
冒頭からすでに主人公の少女は鳥の死骸に見入っている
この伏線は後にドラマチックな形で回収される

ゴーリーは友人への手紙で
自分の作品の多くが死に侵されていることを語った一節で
本書について

翼ある生き物たちと
一つの致死的な変身の中を行く旅


と形容している

バレエ用語がたくさん出てきて
その説明もある


ゴーリー著、柴田元幸訳の本の紹介で私がまだ読んでいないもの
「エドワード・ゴーリーの世界 どんどん変に… エドワード・ゴーリー インタビュー集成」
毛皮のコートとテニスシューズ姿でバレエ鑑賞
1日3本映画を観て
源氏物語から名付けた猫たちと暮らし
生涯独身を貫いたゴーリーを紹介する

「エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談」
選りすぐった怪奇小説アンソロジー
全編に描き下ろし挿絵付き

最近、怪談やミステリーが気になるからちょっと読んでみたい
日本語訳された絵本は全部読んだことが分かる


あらすじ




モーディは鳥の死骸に見入っているところを
バレエ団の最高位プリマバレリーナだったマダムに見いだされ
弟子にすると両親に告げる

長い修行が始まり、最初に人前で演じたのはスズメ役




有名なバレリーナのさよなら公演の一つを見て
真のバレエの何たるかを知る

スクールの後援者から
モードに対するマダムの関心について意見が分かれ
マダムは精神病院に収容され
学校は閉鎖されてしまう


2年間、モードはドサ回り
その後、蝶の役で初めてソロを踊り
ソロ役が次々舞い込む





だが生活はずっと退屈なままだった






ある時、有名なバレリーナが舞台袖に飛んで
そのまま消え
その役を受け継いで大好評を得る


ヨーロッパ随一のバレエ団を経営する男爵から
団に入らないかと誘われる
彼はモードの名をよりエキゾチックな名前ミレッラに変えた


エドガー・アラン・ポーに関連した新作で
男爵はセルジオを相方に抜擢
セルジュはモードに夢中になる








男爵:意味あるものは芸術だけだ と諭す

セルジュはスイスのサナトリウムに送られる


彼女のために「金箔のコウモリ」を創作し最高傑作となった

その後ミレッラはどこに行っても男爵と一緒にいるようになる

(周りを取り囲む男性陣の目が
 みんな隈取のようなのが気になるんだけど






モードは時代の象徴となるが
生活はかつてと何も変わらない

王族の前でも踊るよう求められ
飛行機のプロペラに黒い鳥が飛び込んでモードは亡くなる






ここでぷっつり物語が終わってショック!

素顔はとても平凡だが
舞台では異様なまでに変身するモードが妖しい

背景がいつにも増して描き込まれているのも注目



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