メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

絵本『かべ 鉄のカーテンのむこうに育って』 ピーター・シス/作 BL出版

2021-11-23 13:33:18 | 
「作家別」カテゴリー内に追加します


ピーター・シス その他の著書:
『生命の樹』ボローニャ国際児童図書展ノンフィクション大賞

福本友美子/訳
シスが挿絵を描いた『どうしてかわかる?』ほか


“第二次世界大戦後、冷戦時代のチェコスロバキア
「鉄のカーテン」に閉ざされた厳しい支配のもとで、
 悩み、成長し、夢を追いかけたシスの自伝的絵本”



サラっと読むのは難しい1冊
激動の時代を当事国で過ごした日々を
その頃を知らない子どもたちに分かりやすく伝えるために描いた

本書を読むと、自由に生きて、表現できる権利を持っているということが
どれほど幸せか、しみじみと分かる




【内容抜粋メモ】






「はじめに」

1917年 ロシア帝国が革命により崩壊 ソビエト連邦設立

1939年 第二次世界大戦
戦後、東欧はソ連、ドイツの西半分はアメリカに組み込まれた

ソ連は集団移住を防ぐため、米・英・仏の連合軍が統治する
ベルリンの西半分が壁で囲んだ

イギリスの政治家チャーチルは演説中に「鉄のカーテン」と呼んだ

1950年 アメリカとソ連が核兵器を持つ
40年間緊迫した対立状態となる「冷戦」

私は冷戦のはじまりに、鉄のカーテンの「赤い」ほう
共産主義陣営の国に生まれた

ものごころついてから絵を描くのが好きだった






(シスの人生と国内のことが体験から描かれていく
 人々の洗脳方法が手にとるように分かるが
 当時、そこで暮らす人々にとっては無意識だったことも多いだろう


共産主義のシンボルやモニュメントがいたるところにできる
国民の祝日には赤い旗を掲げる やらないと罰せられる



(線画のシンボル、旗などだけが赤く塗られていて象徴的
 色や形も立派に脳を操作することができるということ


「強制」
と太字で強調されたさまざまな日常生活の出来事が
細かいことまで多岐にわたっていて驚く

今はどこまで緩和されたのか
今でも変わらず行われているのか?


ロシア語の授業
(文化を変えるには、まず言葉から アイヌ、沖縄もそう

共産主義の少年少女弾ピオネールに入団すること
(子ども時代から始めるのが一番有効だ






家族や友だちについての作文を書かされるから
両親は自分の意見を表に出さないようになる

総合競技大会スパルタキアードに参加し
団体競技で社会主義思想に従う気持ちを高めること

(教育、芸術だけでなく、スポーツにも力を入れるのが興味深い


1961年 鉄のカーテン 市は二分された





1963年6月26日
ケネディ大統領はベルリンの壁で
「私はベルリン市民である」と演説

1963年11月22日 ケネディ大統領暗殺









ベトナム戦争

秘密警察はすべてを監視

ソ連の理念を讃える映画が学校で繰り返し上映





「教わったことに何の疑問も持たなかった」


電話は盗聴される

ある種の本、映画が禁止され、芸術・文化は検閲される

手紙は開けられ検閲される

情報を嗅ぎまわり通報すれば褒められる







「私の日記より」

1956年
父の従弟のラミンが国家の敵として牢に入れられた
彼は20歳だが、一生出られないだろう

1957年11月3日
ライカという名の犬を載せたロケットを打ち上げた
あの犬はどうやって着陸するんだろう?









1959年
親の不正を見つけたら報告しなければならないと教わる

1961年
学校でアメリカ映画『バワリー25時』をみる
貧民街の路上で寝る人々が出て来て
これが資本主義国の暮らしだと教わる

1962年
教科書には、アメリカは資本主義的で最も衰退していると書いてある






1963年
西へ亡命する「国境荒らし」を捕まえるため
秘密警察が米兵に扮して迎え、友人たちの名まで聞いて牢や送りとなる

鉄のカーテンをすり抜けて西側のニュースが届きはじめる

15歳以上の市民はいつも写真付き身分証明書を持たなければならない


ザ・ビートルズ!(どれがだれだ?)
(ビートルズは自由の象徴だったのか









ロックバンドに入り、服もエレキギターも自分たちで作る
みんなビートルズになりたいんだ
(自由に関する絵はカラフル








検閲制度が廃止される


1968年 プラハの春!





1965年
川べりを歩いていたら笑顔の黒人とすれ違い、彼は軽くうなづいた
あとでポスターを見て気づく
あれはルイ・アームストロングじゃないか
プラハにコンサートに来ていたのだ!

アメリカのビート詩人アレン・ギンズバーグがプラハに来るが
秘密警察により破滅のもととして国外追放される

1966年
髪を伸ばしたいが、家、学校でもよく思われない
ストーンズ、ファッツ・ドミノ、チャック・ベリーを覚える

1968年
シャツをしぼり染めにする方法を教わり
手に入るものを手あたり次第にしぼり染めにする

(この頃のフラワーチルドレンのファッションって
 サイケでカラフルで今見ても可愛いよね


西へ旅行するためのパスポートをもらう
ヒッチハイクでリバプールへも行くんだ
ビートルズにも会えるかも!?






ソ連、ブルガリア、東ドイツ、ハンガリー、ポーランドは
50万人の軍隊でチェコスロバキアに侵攻

その10か月後、チェコスロバキアにビーチ・ボーイズが来た
犬を連れた警官が待機











「夢は内緒にしておけばいい」


鉄のカーテンがまたおりる

電話はまた盗聴され、郵便は開けられ、人々は監視される
発禁書はひそかに翻訳され、複製され、地下出版物として出回る

ディスコは大衆文化の新しい情報源となる




(一部の権力で大勢を支配しようとしてもムリ
 そしていつでも音楽やアートは最先端を行く表現の発露だ


「みんな壁いっぱいに自分たちの夢を描いた
 消されても、消されても、また描いた」








1970年
ベーシストの男がビーチ・ボーイズのコンサートの
混乱の中で警官に頭を殴られて死ぬ

1972年
ロングヘアの若者集団(僕のよく知る連中)
が西ドイツ行きの飛行機をハイジャック
赤ん坊のオムツに隠した銃でパイロットを射殺

1974年
美術工芸学校の助教授にならないかと言われて有頂天になるが
条件は共産党になることで断る
小さい絵を描けばいい 仕事場なんかいらない

1975年
プロとしての初仕事は、チェコスロバキアのポップ歌手
カレル・チェルノフのアルバム『空港』のカバー絵

1977年
プロとして初めての映画『6000の目覚まし時計の島』が完成
検閲官が「いやになれば逃げ出せばいい」というメッセージを伝える映画だと言い出す
どこかに隠れたメッセージがないか嗅ぎまわっているのだ

劇場関係者には「小さな白い犬」理論がある
舞台の真ん前に小さな白い犬を横切らせれば
検閲官は裏で何が起きているか気づかない

反体制派はつまらない仕事をさせられる
(医者、教授が穴掘りや掃除をしている絵






「自由を夢みた」
原画を観た時は気づかなかったが
自転車についた翼は自分が描いた自由の絵か



















壁の向こう側
希望、真実、自由、知恵、幸福、愛、芸術、活力、平等、、、

壁の内側
うそ、ねたみ、不安、恐怖、疑い、愚かさ、、、






「時には夢が叶うこともある」

1989年11月9日 ベルリンの壁崩壊
(この時、デヴィッド・ボウイがライヴをしたんだよね



(自分の生きている間にこんな大事件がたくさん起きたのに
 外国での出来事、ニュースの1つとして流して忘れていた


1991年 ソ連崩壊 冷戦終結
(ほんとうに終わったのだろうか?




「あとがき」
子どもを洗脳するのはなんとたやすいことか
私たちはまるでヒツジのようだった

プラハの春
私はヨーロッパ中をヒッチハイクしてまわり
世界は私の思うままだと感じた

ソ連の戦車がプラハに侵攻した時
私はロンドンで、家族はヨーロッパ内で休暇中だった

ドイツで落ち合い、故国を捨てるか話し合い、戻ることにした
なんとなく、そんなに悪いことにはならないだろうと楽観していたが
そうではなかった

私はラジオのDJになり、ビートルズ、レッド・ツェッペリン、フーなどの
有名なバンドにインタビューした(驚
ビーチ・ボーイズがチェコスロバキアをツアーした時は同行した

番組は打ち切りになり、ロックは禁止された

私は絵に打ち込み、外に出るのが怖かった

外国へ行くのは許されたが、帰国日は必ず決められた


1984年
ソ連がオリンピックをボイコットした時
私はロサンゼルスでアニメーション映画を作っていたが
プラハに呼び戻された

何をしろ、何を考えろ、何を描け、と言われるのはもううんざりだったが
生まれてからずっと洗脳された者には、抵抗はたやすい決断ではなかった

ソ連の力は永遠と思っていた

今、私の家族はプラハのカラフルな街並みが
以前は暗い場所とは信じられないという
私の子ども時代を説明するのは言葉では表現できない

この本はそれをできるだけ忠実に描いたものだ



「生きているかぎり、絵をかきつづける」








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